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福岡動物メディカルパーク リヴ動物病院

SUBシステムを設置した猫ちゃん

獣医師(院長) 佐藤 誠剛
2024.05.16



尿管の通過障害から急性腎障害を起こした猫ちゃんを
腎臓・膀胱をバイパスする「SUBシステム」という器具の設置により救命できました。


 

術前の写真なのでしかめっ面です。。

以前に尿管結石の通過が原因と思われる急性腎障害を起こした既往がありました。その際は内科治療で改善したので、定期的にチェックをしながら経過観察をしていました。その途中の出来事です。

急に嘔吐があり、その後数日なんだか元気と食欲が落ちていると来院されました。
まさかと思いつつ検査をしてみると、腎臓の数値が少し前のチェック時より上昇しており
エコー検査で、左側の尿管の通過障害のありそうな像が認められました。
 


 

結石が詰まっているような画像所見はレントゲン・エコーでは無く
尿の培養検査を実施し細菌感染の可能性も低いと判断しました。
以前に急性腎障害を起こし、内科治療で改善していたことから
まず入院で内科治療を実施し、数日で元気になり帰って行きました。

なのですが、帰宅後すぐに、また吐いて食べない、と再来院しました。
調べてみると、なんと下がったはずの腎臓の数値がまた上昇し、
反対の右側の尿管の通過障害が起っていました。



再度入院し内科治療を行ないましたが、今度は改善が悪く、
本当に結石が詰まっていないか確認のためにCT検査に行ってもらいました。
CT検査では結石は確認されませんでした。
その為、尿管自体に問題があると考え、通過の悪い部分をパスして
腎臓から尿を膀胱へ通す手術を検討する手筈となりました。

しかし、一旦良くなったはずの左側の尿管が再度通過障害を起こしてきました。
尿の排泄を担っていた左側から尿が出なくなったので、状態が急激に悪化しました。
待てない状況になりました。冒頭に出てきたSUBシステムの適応です。
ですが、当院には、通常片側の発生のため、その分の1セットしか置いていません。
すぐに両側の腎臓には対応できませんでした。
そしてSUBシステムは海外から輸入する必要があり、通常は手元に届くのに時間がかかります。

そのため、時間を稼ぐ一時的な救命処置として、
体外から腎臓に直接カテーテルを挿入して尿を出す、腎瘻カテーテルの設置術を行いました。
リスクの高い状態でしたが、なんとか周術期を乗り越え、腎瘻設置後はどんどん状態が回復してくれました。

ただし、腎瘻には ①ズレやすい ②感染のリスクがある という管理上の問題があります。
何日脱落せずに入っていてくれるか分からないため、急いでもう1セットのSUBシステムをなんとか手配し、左側の腎瘻が抜けてきたその日に、ギリギリ間に合いました!



これは術中の画像です。
レントゲン透視下で腎盂(腎臓の尿を集める部分)を確認しながら腎臓内にカテーテルを設置します。




術後のレントゲンです。
先だって行った腎瘻と違い、カテーテルに脱落防止の工夫がしてあり、抜けにくくなっています。


 

腎臓からでたカテーテルは、一旦皮下に出てチタン製の洗浄ポートに繋がり、
再度腹腔内に戻って膀胱に開口します。


 

SUBシステム設置術は他の術式と比較して、術式が簡易で手術時間が短縮できます。
また、洗浄ポートを介して定期的にカテーテル内の洗浄を行うことで、再閉塞のリスクを軽減することができます。


術後にやや紆余曲折はありましたが、持ち前のタフさで回復して、
今は腎臓の数値が基準値内におさまるほどで、元気にしています。

物凄く頑張ってくれました!!!
定期的にメンテナンスが必要ですので、今後もしっかりとケアしていきます。
 

福岡動物メディカルパーク リヴ動物病院

 

獣医師(院長) 佐藤 誠剛
獣医師(院長) 佐藤 誠剛

※ブログに投稿される医療などに関する情報は、各動物病院に一任しております。

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