みなとまちアニマルクリニック(清水区動物医療センター)
CKD-MBD~慢性腎臓病における骨ミネラル代謝異常
先日参加させていただいた大阪での学会、動臨研でありますが
学会最後に聞いた講演が
大阪の松原動物病院で勤務されている佐藤先生の講演でした。
テーマは、『骨ミネラル代謝異常』です。
今回の学会に参加した目的の3分の1ぐらいはこの話を聴きに行くためでもあったので
疲れが出てくる最終日の最後のコマではありますが
頑張って聞いてまいりました。
犬さんも猫さんも
慢性腎臓病に罹患した場合
この骨ミネラル代謝異常という病態の管理は非常に大切になってきます。
本気で興味のある方は、こちらの日本腎臓学会の説明→https://www.m.chiba-u.jp/dept/nephrology/files/7316/0817/9665/CKD-MBD.pdf
を読んでいただけると、さらに理解が深まるかもしれません。
で、勉強会やセミナーを聴く時のスタイルとして
少し前から、ボールペンでノートにメモするというスタイルを捨てまして
最近は完全にパソコンを膝の上に置き、聴きながらタイピングしてメモしているんですが
今日は、そのメモをそのままここにコピーしようかと思います。
セミナーの内容全部を網羅できているわけではないですが
一時間の講演でこんな感じのことを聞いてきたんだよ、という感じで参考になればと思います。
以下、ここからメモ書きです↓
めんどくさい方は下の方まで読み飛ばして頂いても結構です。
******************************************
『骨ミネラル代謝異常』佐藤佳苗vet 腎泌尿器学会認定プログラム
骨ミネラル代謝異常の際に、バランスが崩れる物質
P,Ca,Mg,PTH,FGF23,カルシトリオール
Trade-off thoryというのが今提唱されている説。
正常を逸脱する順番(人)
①FGF23上昇
②カルシトリオールの低下
③PTHの上昇
④リンの上昇
PTH
iCaの低下を感知して放出される。
カルシトリオールの活性を高める→カルシウムとリンの上昇へ
PTH上昇は予後と関連するかはわかっていない。
人では、CKDにおけるPTHの上昇は死亡率と関連。
→現状、動物の方ではFGF23の方が予後因子としても使用できそう。
三次性の副甲状腺機能亢進症
二次性が進んでさらに高カルシウムになった状態を指す。
トータルカルシウムしか測定していないと、7割以上の高カルシウムを見逃す!
治療すべきタイミング
腎性二次性副甲状腺機能亢進症の頻度
Stage1 20-36%
Stage2 30-50%
Stage3 70-96%
Stage4. 100%
CKD-MBDは根治ができないので、早めに見つけて早期介入を検討すべき。
FGF23とPTH測定してみる。
リンが高い段階で、今更測ってもあんまり意味はない。。。
FGF23が増加した時点で治療した方が良い。
代償機構が働く程度には、リンが蓄積してきた証拠ではある。
治療保目標は定まっていない。
基本方針
リンが高い場合 → リン制限食、リン吸着剤
低カルシウム → カルシウム、カルシトリオール
カルシウムが高い → PTH分泌阻害薬
健常猫の腎臓色を食べさせても大丈夫か?
カルシウムリン比は気にした方が良さそう。
早期アシスト系やシニア食なら大体は大丈夫そう。
リン吸着剤について
第一選択
・カルシウム製剤 → コウカルシウムの場合や、石灰沈着がある場合はNG
・水酸化アルミニウム → 海外だと第一選択 90mg/kg/day。クエン酸製剤との併用注意。スクラルファート的な投薬の注意点はあり。
第二選択または第三選択
炭酸ランタン(ホスレノール)
セベラマー
クエン酸第二鉄→経口鉄補充したい時にはすごく良い。高い。動物のデータがまだない
リン排泄促進剤
ナイアシンアミド(ビタミンB3)
用量がわからない。副作用はなさそう?皮膚用疾患での容量しかない。
カルシトリオール → 食事とは別に与える!!食事中のリンをめっちゃ吸収されても困るので。
高リン、低カルシウムでは初手からは使わない。まずはリンを下げるとこから
カルシウム受容体作動薬
シナカルセト → PTHの分泌を抑える。低カルシウムの発現に注意。
*********************************************
こんな感じですかね。
一応、講演スライドは後ほど配られるという前提のもと
気になったところだけメモを取っている感じです。
めちゃめちゃ簡単にまとめていくと
慢性腎臓病に罹患した犬さん・猫さんの体の中では
リンの排泄が落ちてしまいます。
そうすると、体にリンが蓄積してしまうわけですが
体の中でリンの蓄積を防ぐために、FGF23が最初に分泌されて
血液中のリン濃度を上げないようにしようという代償機構が働きます。
そこからCKD-MBDはスタートし
最終的に
高リン、高カルシウム状態になったり
高リン、低カルシウム状態になったりしてしまうわけですね。
リンが高い状態というのは慢性腎臓病の予後を悪化させてしまいますし
カルシウムとリンのどちらも高い状態が続くと、体の中で石灰沈着という現象が起こります。
これがまた慢性腎臓病の悪化の原因にも繋がるため
リンやカルシウム濃度を適正に保つための管理というものが
慢性腎臓病の治療においては非常に重要なポジションを占めているわけですね。
なので
本気で慢性腎臓病の管理をやろうとすると
上に出てきたリンやカルシウム、FGF23、PTH(副甲状腺ホルモン)などの濃度も
きっちりとモニタリングする必要性があるわけです。
特にPTHなんかは現時点で慢性腎臓病の子で測っていらっしゃる先生方は
日本にはあまりいらっしゃらないと思います。
(この講演の座長を務めていた先生が、獣医腎泌尿器学会の偉いさんでして
その先生が、測らないといけないんですかあ、みたいなことをおっしゃっていたので
おそらくそうかと思います。)
僕も今モニタリングさせていただいている患者様はごく少数です。
ただ、本気で早期発見・早期治療介入を目指すのであれば
慢性腎臓病のstage1の段階で、これらの項目をチェックするべきなのかなと思います。
そんなわけで、今回は慢性腎臓病の一つの病態である骨ミネラル代謝異常について
簡単に書いてみました。
慢性腎臓病に関して、ご質問やご相談などある方はご気軽に当院までお越しください。
本気で慢性腎臓病の管理を徹底的にやりたい方、お待ちしております。
それでは今日はこのへんで失礼いたします。
はじめまして。院長の大山達也と申します。
『最後まで諦めない動物医療』『院内死亡率ゼロ』を目標に掲げて、循環器・麻酔・救急・集中治療・腎泌尿器・腫瘍など、動物の命に直結する分野に特に力を入れて勉強しております。
いつでも全力投球で犬さん・猫さんとそのご家族と向き合うことで静岡市清水区の動物医療発展に少しでも貢献できればと考えております。
※ブログに投稿される医療などに関する情報は、各動物病院に一任しております。