#HugQ(ハッシュハグ)がお届けする「プロペットオーナー」になるための講座、ペットオーナー大学。第3回(2025年1月18日開催)は有明動物病院 獣医師 伊藤 優真(いとうゆうま)先生を迎えて「スマホで解決!ペットの様子を正しく獣医師に伝える写真・動画講座」を開催いたしました。
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目次
①写真・動画撮影はやっぱり必要?

今回のテーマである写真・動画を撮って動物病院に持っていくというのは必要なことなのでしょうか?

はい。これは重要だと思ってます。写真や動画は飼い主さんと獣医師とのコミュニケーションを補足してくれるものだからです。

病院で先生はやっぱりお忙しいと思いますし、動画を見てもらうのに時間をとってしまっては申し訳ないって思うんですけど、その辺はどうなんでしょうか。

これに関しては僕は見せていただいてOKだと思ってます。病院に行くとすごく緊張したり、後ろの人が詰まっているから早くしなきゃいけないのかなって思われると思うんですが、だからこそ動画の方が逆に時間を短縮することにもなるので積極的に見せていただけたらと思います。あとはお話ししたいと思っていたことを事前にメモでまとめておいていただくともっとスムーズになると思います。

写真ではなく動画がおすすめなのですか?

動画をおすすめするのは、見せたい表情とか症状を言葉で説明するのは難しいと思うからです。大切なのはその症状を先生と共有することですので、動画はそれが一番簡単にできるのでおすすめです。
②こんな時は写真や動画を撮っておいて!

具体的にこんな症状があったら撮っておいてほしいというものはありますか?

なんでも気になる症状は撮ってもらっていいと思いますが、例えばくしゃみとか咳。くしゃみなのか咳なのか判断つかないことってあるんじゃないですか?

今猫を飼ってますがわからないですね。変な音を出したら、くしゃみでも咳でもなく、もしかしたらゲップだったのかなとか。

他にも震えていたりとか、けいれん発作も動画を撮っていただくと治療のヒントになります。あとは歩き方が何となく変だなと思ったら歩き方もぜひ撮っておいてください。

写真の方が有効なものもありますか?

よくあるのが皮膚のイボ。病院に来て「あれ、どこだっけ。この前ここら辺にあったんですけど…」みたいなことがよくありますので、そういう時は事前に写真を撮っておくと、撮影時との比較もできますし、場所もすぐわかるのでおすすめです。何でもメモみたいな感じで撮っていただくとよいと思います。

例えば具合が悪くて吐いちゃったという時は、そのものを持って行った方がいいのか、写真の方がいいのかでいうとどうでしょうか?

吐いてしまった時は、病院に来るまでの間で色が変わってしまうこともありますので、まずはすぐその場で写真を撮っておいていただくのがよいと思います。同じように、例えば血が出た時など、血も時間が経つと変色しますので、まずは最初に撮っていただくといいですね。獣医師にとって赤い血なのか黒っぽい血なのかは診断する時にすごく重要な情報になりますので。
③撮影ワンポイントレッスン

事前アンケートでもいただいているのですが、撮影する角度、そしてどんなことに気をつけたらいいでしょうか?

撮影の角度で一番重要なのは、まずは全身が入るように撮ってほしい点です。あまり近すぎたりとか、遠すぎず、しっかり全身が入るような感じで正面そしてできたら横から撮ってください。例えば歩き方に異常がある時は最初横から撮っておいて、次に斜めから撮り、最後に真横から撮れば、歩き方の違いや症状が色々な角度から見れるのでよいと思います。

なるほどです。他にもポイントありますか?

あとは例えば気になる音、呼吸の音、鼻が詰まった音も録りたい時は、周りの音が結構ガヤガヤしていると肝心の音が聞こえないことがありますので、少し静かにしていただいて、一番重要なところが聞き取れるように撮ってもらえるといいですね。

日常的な写真も診察の補助になりますか?

もちろんです。普段の写真も僕は撮っておくといいことがあると思っています。なぜなら比較ができるから。普段と見比べて現状がどう違うかを先生に伝えやすくなると思いますので、いっぱい可愛い写真も撮っておいていただくとそれも治療のヒントになります

普段から触っておくと異常があった時にすぐ気づけるのと同じ感覚でしょうか?

おっしゃる通りで、小さな異変に気づくのは飼い主さんが一番最初にできることです。毎日触ってあげるのと同じように写真や動画を撮ってもらえたらと思います。

普段から可愛いな、可愛いなって写真を撮っていれば、「あれ?今日何かおかしい」って気づきやすいということですね。

実際に、神経の異常があって目が半目になっちゃう子がいるんですけれど、その子の3ヶ月前の写真を見ると、実はその頃から症状が少しずつ出始めていたということがわかったりします。そうすると、急に悪くなったのか、ちょっと前から悪かったのか経過を知ることの手がかりになります。

今日は実際の写真を見ながらお話しできたらと思います。まずはこちら。


可愛い!この写真しっかり舌が見えていますね。例えば舌の色は体に酸素がどのぐらい行き渡っているかを調べられたりします。これはすごくピンク色でいい感じの舌なんですけれども、例えば舌が紫色になってきてしまう病気の場合、撮っておくと色の変化の経過が見えます。この写真はとても可愛いですし、資料としてもOKだと思います。

つづいてこちらの写真。


これすごい鼻が潤っているように感じられると思うんですけが、鼻の乾き具合も写真で記録できる変化の一つとして捉えてもいいかもしれないですね。

先生、写真を見る場合、やはり素人とは見るポイントが違うのかなと思ったんですが、やっぱりチェックするのは、そういった鼻とか…。

まず一番最初にチェックするのは可愛いかどうか!

えっ、そうなんですか?

可愛いなーと思ってからスタートです。みんな可愛いですけどね。ホントに。
④写真・動画わかりやすさ診断コーナー

今日は4本の動画を用意していますので、撮影という観点から見て「これはちょっとイマイチだよ」とか、「これはいいじゃん!」を◯×で判定してください。
では1本目の動画です。こちらは震える症状があるわんちゃんです。ご覧ください。

この撮影、判定は!?

すいません!×です!まずは撮影いただいたことはすごくいいことです。でも、震えを見てほしいという動画なのですが、震えてるのが分からないなってところが残念ポイントです。もう少しわんちゃんと同じ高さぐらいにアングルを落として撮っていただいて、本当に震えてるところがわかるようしていただくと、よりよいと思います。

では、2本目参りましょう。こちらは歩行の様子に違和感のあるわんちゃんです。

可愛いですね。まずは可愛い。

先生、判定を!

ブー!というか△ですね。これまず惜しいなっていうポイントが2点あります。一つはちょっと暗いっていうのがもったいないですよね。もう一つ惜しいなっていうのは、せっかく動画を撮るのであればお洋服を脱がしてあげた方がいいかなと思いました。肩の動きがこのお洋服を着てると分かりにくくてもったいないです。寒い日でしたら撮影の時だけ脱がしてあげるのでも全然問題ありません。

では続いて3本目の動画。こちらも歩行の様子を見て欲しいよというわんちゃんです。

これに関しては◯です!おめでとうございます!明るくて、前後両方のアングルが撮れているのでよいですね。さらに高さもいい感じです。撮り方としてはこれが絶対いいよというのがあるわけではなくて、まずは一番飼い主さんが気になる症状が映るようにしてもらうのが重要です。

ありがとうございます。ちなみに、散歩の場合カメラマンがもう一人必要ですよね。一人暮らしの人はどうしたらいいんでしょう?

まずは撮ることが第1歩としては重要なので、誰かといる時に撮ってもらったりとか、散歩仲間とにちょっと撮ってもらったりとか、そういう気軽な感じでよいと思います。

では最後の動画です。咳をする猫です。じつはうちのねこちゃんです。

可愛い!けどごめんなさい。可愛いポイントは花マルなのですが症状を伝えるという点で×にさせてもらいました。まずは気になっているくしゃみの症状がテレビのせいで音が聞こえないですね。あとはもう2点ぐらい実はあるんですけれども。

え、なんですか?

ちょっと距離が近いです。呼吸器、くしゃみの症状だったら、胸がどのぐらい膨らんでいるのかとか、呼吸のスピードも見たいんです。なので顔だけじゃなくて全身が映っていると助かります。部屋が片付いてなくても全然問題ありませんので、気にせずねこちゃんのために全身を撮影お願いします!お部屋の汚さを気にされる飼い主さんもいらっしゃいますが、僕らは治療に必要な情報を得たいので、ぜひ全身を。

もう一つの×ポイントは?

動画が5分は長いですね。症状がある前後も含めて30秒ぐらいとか、長くても1分ぐらいとかにまとめていただくとすごくいいと思います。長い動画を見ながら「結局どこにあるんだっけ?」というのを一緒に探すことがけっこうありますので。

長ければいいわけではないのですね。
⑤写真・動画のおかげでうまくいった事例

ここからは実際の先生の事例のコーナーです。実際先生が動物を診てきた中で、飼い主さんからの写真や動画があったおかげで、命を救えたという事例、良かったという事例があれば教えていただけたらなと思います。

今回は2つご紹介します。まず1つ目。飼い主さんから「発作がありました」というお話しがあった時、喘息の発作みたいな咳のことを言ってるのか、けいれん発作のことを言っているのかわからないことがあります。発作が起きる原因は、脳の問題もあれば心臓の問題もあり様々。動画を見ると発作のあとの様子からも脳が原因のものなのか心臓が原因のものなのか推察できます。脳の問題かもしれない時にはすぐにMRIを紹介できたりもしますし、迅速な診断につながることがあります。

写真や動画のおかげで迅速な診断につながるんですね。

検査を絞れることもありますし、早く治療ができれば本当に命に繋がったりしますからね。もう1つの事例については、ねこちゃんのよくあるお話しです。ねこちゃんの咳って結構判断が難しいんですよね。

わからないですね。

ねこちゃんの相談でよくあるのが、「うちの子、吐きたいけど吐けないみたいなんです」というもの。そういう時は大体咳のことが多いんですよね。ねこちゃんの咳はゴホンゴホンではないのです。動画があると一目瞭然で、動画を確認した上で先生が「これは咳なんです」と言ってくれたら飼い主さんも安心ですしね。
⑥質問コーナー
講義の最後は参加者からの質問コーナー。伊藤先生が丁寧に教えてくれました。

発作の時に動画を撮るのはかわいそうだけれど、撮った方がいいのでしょうか?

なんとなく気持ち的に心苦しいなって思われる方もいるかもしれないのですが、撮ることによって治療がスピーディになり、その子の症状の緩和に繋がりますので、心配せずに撮っていただくのがいいかなと思っています。「撮らなきゃいけない!」ということをプレッシャーに思うことは全然必要ないのでスマホが近くにあればという気持ちで。あと一つ重要なこととしては、動画を撮るよりも先にその子の安全を確保してください。高いところは落下の危険がありますし、周辺にものがあるとぶつかってしまいますので。

全然うまく撮れない!という人はどうしたらいいのでしょう?

そうですね。目的は症状を先生と共有することですので、YOUTUBEなどで似た症状の動画を探して見せたりという形でも僕はいいんじゃないかなと思ってます。

何か変だなと思ったら、とにかく撮ることが重要なのですね。そして病院に行くべきかどうかを事前に診てもらうことってできるのでしょうか?

今は病院によってはLINEで聞けたり、オンライン診療で事前に見せたりできるところもありますので、使えるようなら見てもらってもいいかもしれません。ただ、写真や動画だけ見て「絶対に大丈夫ですよ」と僕は言えないですね。ですので気になるときにはしっかりまず病院に連れてきてほしいです。

少し強めに触ると怒るようになりました。私には大丈夫なのですが、トリマーさんや先生が触ると怒ります。どうしてか分からないです。

心配になりますよね、これには色々な理由があって、どっかしらが本当に痛い可能性も考えられます。あとは、もしかすると年齢とともに性格が変化していって、昔は全然怒らなかったのに、今はすごく怒っちゃう子がいたりとか、食べ物の好みも結構変わってくる子もいますのでそれも含めて可愛がってあげるのがよいですね。

うちの猫は本当に体調が悪い時は隠れたり逃げたりして動画が撮れません。じっとしている動画は役に立ちますか?

じっとしてる時に呼吸がどうなのか、そういうところは分かると思うので、撮っておいていただくとよいと思います。

最近、夜、水をよく飲むようになりました。おしっこもしっかりしています。乾燥していることも関係ありますか?

人間でも乾燥していると水を飲む量は増えますよね。だから関係あると思います。でも病気のせいで飲む量が増えてしまうこともあります。例えば腎臓の病気でも水を飲む量は増えます。1週間くらい継続的にどれくらい飲んでいるのかを測ってもらうとよいと思います。その時目盛りが入っている食器を使うととても便利です。
質問コーナーをフルでご覧になりたい方はこちら!
⑦伊藤先生からのメッセージ

メッセージ
獣医療の専門家は獣医師や看護師(愛玩動物看護師)だと思いますが、その子自身の専門家はそれぞれの飼い主さんたちです。気になる症状がある時は、ぜひおうちで動画を撮っていただいたり、日々の様子を記録してください。そうすることで その子達の体調の管理や治療ににつながると思います。