小さな体にうるうるとした愛らしい瞳が魅力のチワワ。活発に動き人懐っこい性格で人気を集めている犬種です。チワワを家族の一員として迎え入れる上で知っておきたい、かかりやすい病気や飼い方のポイントを解説します。チワワについて理解を深めるための参考にしてみてください。
目次
チワワの歴史
チワワの起源にはさまざまな説がありますが、9世紀頃のメキシコで暮らすトルテック族に飼われていた「テチチ」と呼ばれる小さめのガッシリした体格の犬が、現代のチワワの基盤となったと考えられています。古代の遺跡には、現在のチワワによく似た小型犬を描いた装飾が残されています。チワワという名前は、メキシコのチワワ州からアメリカへ持ち込まれたことが由来です。
チワワの特徴
チワワは世界で最小の純血種であると言われ、小型犬の中でも超小型犬に分類されます。雄・雌ともに体高18cm前後、体重は1.5~3kg、体は引き締まりがっしりとしています。チワワと言えば、うるうるとした大きな瞳、立ち耳、短めのマズル、「アップルヘッド」と呼ばれる額の丸みが特徴です。また、尾先は腰へ向かってカーブまたは半月状に維持されています。
被毛の色はマール(大理石のような同系色の斑模様)以外、すべての色調や組み合わせが見られます。また毛の長さは短く滑らかなスムースコートと、長くやわらかなロングコートの2タイプがあります。
チワワの性格
チワワは人懐っこく表情豊かな性格で、愛情をかけられると素直に喜び、飼い主には甘えん坊な一面を見せます。機敏で活発に動き、小さな体ながらも大変勇敢な性格を持っています。一方で注意深く、わずかなことで怯える臆病な一面も。警戒心が強いため、番犬としても役立つ犬種です。
チワワのかかりやすい病気
世界で最も小さい品種とされるチワワは、その体型的な特徴や遺伝からかかりやすい病気があります。どのような病気かを理解して、気になる症状が現れたら早めに動物病院を受診しましょう。
軟口蓋過長症(なんこうがいかちょうしょう)
軟口蓋過長症は、パグやブルドッグなどの短頭種に多く見られる病気ですが、チワワでもまれに確認されることがあります。軟口蓋とは、上顎の奥にあるやわらかい部分のことです。この部分が長くなることで、息を吸う際に喉頭蓋にかぶさり、気道をふさいでしまう病気です。
【症状】
夜間のいびきが最も特徴的で、鼻を鳴らすような呼吸、開口呼吸、食物を飲み込めなくなる嚥下困難などが見られます。興奮時に上記の症状が悪化する傾向があり、重症になると呼吸困難や、粘膜が紫色になるチアノーゼを起こします。
【診断】
症状と一般身体検査の結果によって診断します。咽頭部を直接確認するために、麻酔をかけて鎮静状態での診察が必要です。
【治療】
急性の呼吸困難を起こしている場合には、早急な酸素吸入や冷却、ステロイド製剤の投与などの治療を行います。完全な治癒のためには、軟口蓋を切除する手術が必要です。手術後の経過はおおむね良好です。
気管虚脱(きかんきょだつ)
気管が本来の強度を失い、つぶれてしまう病気です。気管軟骨が弱くなり、背面の膜性壁が伸びて内側に入り込むという2つの要素によって起こりますが、原因は解明されていません。
重症になると気管が完全につぶれ、息を吸うことも吐くこともできなくなるケースがあります。この病気は一般的に超小型種の中・高齢犬に多く見られますが、若齢でも確認される場合があります。
【症状】
咳、ゼーゼーという呼吸(喘鳴音:ぜいめいおん)、咳の後の吐き気などが見られます。ガーガーという「ガチョウ鳴き様警笛」が最も典型的な症状の1つです。これらの症状は高温多湿、興奮、ストレスなどにより悪化しやすく、多くの場合しだいに悪化していきます。
【診断】
症状とX線検査に基づき診断します。
【治療】
根本的に治療するには、外科的な治療が不可欠です。アクリル製のプロテーゼ(気管を広げるための装着剤)を用いることで、手術時間の短縮と長期的な治癒が実現されつつあります。
発育障害(はついくしょうがい)
先天性の脳障害により、発育不良になるケースがあります。その中でチワワに多く見られるのが、遺伝により発生する水頭症です。
【症状】
痴ほうや歩行異常、旋回運動、性格の狂暴化などが主な症状です。
【診断】
頭蓋骨が完全に閉じていない場合が多く、その際は超音波検査で診断が可能です。 より詳細な診断には、CT検査やMRI検査が推奨されます。
【治療】
内科的治療として脳圧降下薬を使用。重症例では、脳内に溜まった過剰な脳脊髄液をチューブで腹腔に流す手術が行われることもあります。
睫毛乱生(しょうもうらんせい)
睫毛乱生とは、睫毛が角膜に向かって生えている状態を指します。睫毛によって角膜が刺激され、涙眼となったり、角膜が傷ついたり、角膜潰瘍を起こすことがあります。
【治療】
外科的に異常な睫毛を切除したり、毛根を電気で焼いたりする治療法があります。
急性角膜水腫(きゅうせいかくまくすいしゅ)
急性角膜水腫は水疱性角膜症とも呼ばれ、遺伝的な素因によって角膜内皮に異常をきたし、水疱性の角膜混濁を引き起こす病気です。
通常、痛みや結膜への刺激がなく、2~3年かけてゆっくりと進行します。しかし発生はまれではあるものの、分刻みで水疱が融合して角膜潰瘍を引き起こすことがあります。その場合は救急の眼科的対応が必要です。進行すると最終的にはデスメ膜瘤に至る可能性があります。
【症状】
水疱性の角膜混濁と水疱の破裂による角膜潰瘍が見られます。
【治療】
角膜潰瘍に対してはアセチルシステイン溶液を点眼。デスメ膜瘤には、結膜フラップ被覆手術や角膜潰瘍の縮小手術を行います。
虹彩委縮(こうさいいしゅく)
虹彩委縮は高齢の動物に発症する病気で、特にチワワやシュナウザーに多く見られるのが原発性虹彩委縮です。若いうちには症状を示さず、発育すると症状を示すようになります。
【症状】
虹彩に多発性の穴が形成されます。
【治療】
現在、根本的な治療法はありません。
パターン脱毛
パターン脱毛は、左右対称に被毛が少なくなっていき、やがて完全に脱毛する病気です。チワワなどの短毛種によく見られます。
【診断】
症状に基づいて診断されます。
【治療】
現在のところ、有効な治療法はありません。
増殖性血栓性壊死(ぞうしょくせいけっせんせいいえし)
増殖性血栓性壊死は、血管の内皮が肥厚することによって血液の流れが悪くなり、血栓が形成され、結果として組織が壊死を起こす病気です。主に耳介(耳全体のうち外に出ている部分)の先端から内面にかけて病変が広がります。
【診断】
バイオプシー(生体組織採取検査)が必要で、採取した組織を検査して血管炎と鑑別します。
【治療】
内科的治療は効果がなく、外科的に罹患部位を除去する必要があります。
チワワの飼い方
チワワを飼う時に押さえておきたいポイントを紹介します。飼育環境やお世話、フードの与え方について、参考にしてみてください。
骨折や脱臼をしないような環境作りを
チワワは骨が細いため、少しの落下でも骨折することがあります。ソファーは低めのタイプを選び、ステップやスロープを設置し、階段には柵をつけて飛び降りを防ぐ工夫をしましょう。
また滑りやすい床は骨折や脱臼の原因になるため、滑りにくい敷物を敷くことをおすすめします。抱っこ中に落下したり、人間が足を踏んでしまったりして骨折するケースもあるため、注意が必要です。
お留守番の際にはケージに入れて安全な環境で過ごさせることで、事故を未然に防げるでしょう。
過保護になりすぎず、しっかりとしつける
チワワは体が小さいため、飼い主が過保護になりがちですが、甘やかしすぎず、しっかりとしつけをすることが大切です。過剰に甘やかすと、無駄吠えやかみつきといった問題行動が増える可能性があります。 ほめることを基本としつつ、やってはいけないことをした場合は毅然とした態度で伝えましょう。
毎日軽い散歩をする
小型犬は室内で動き回るだけでも運動量が足りると言われますが、チワワは活発なので毎日軽い散歩をするのがおすすめです。外での散歩はストレス軽減にもなります。気分転換や外気浴を兼ねて、毎日15~20分程度の散歩に連れ出してあげましょう。
ブラッシングとシャンプーでお手入れをする
ロングコート、スムースコート共に抜け毛があり、特に春や秋の季節の変わり目は抜け毛が増えます。
毎日のブラッシングを習慣にして、余分な抜け毛を取り除きましょう。定期的にシャンプーをしてあげることで、毛並みを整え清潔に保つことができます。
小粒で食べやすいフードを与える
チワワは顎が小さいので、小粒で飲み込みやすいフードがおすすめです。フードの大きさは犬歯よりも大きくないことが1つの目安になります。粒の大きいフードで食べづらそうにする場合は、小粒のフードに変えてみると食いつきが良くなることがあります。
一方で、噛むのが好きなチワワもいるので、食いつきや食欲を見て選んでみましょう。食欲にムラがある場合は嗜好性のあるものを試して、愛犬が好きなフードを見つけてあげることが大切です。
チワワについて理解を深め、一緒に楽しく暮らそう
小柄で飼い主には甘えん坊のチワワには、つい甘やかしてしまいがちですが、しっかりとしつけをすることで、無駄吠えなども防げます。また体型や遺伝からかかりやすい病気があるので、日頃の健康管理や生活環境に気を使ってあげることも大切です。チワワについて理解を深め、一緒に楽しく暮らしましょう。

福山 貴昭 博士