子犬を迎えたばかりの飼い主さんは、初めて動物病院を受診するにあたってわからないことも多いのではないでしょうか?たとえば動物病院の選び方、受診に必要なもの、待合室でのルールなど……あらかじめ知っておきたいことはたくさんあります。動物と家族に寄り添うホームドクター(かかりつけ医)を目指す渡辺先生が初心者にもわかりやすく解説。これから子犬を迎える方はもちろん、すでに犬と暮らしている方も必見です!
渡辺 英一郎 先生
夕やけの丘動物病院
目次
知っておきたい!信頼できる動物病院の探し方
愛犬の健康を支えてくれるホームドクターを見つけるために、動物病院の役割を知っておきましょう。
犬にとってホームドクターが大切な理由を教えていただけますか。
大切な愛犬の一生を家族と一緒に守っていくのがホームドクター(かかりつけ医)です。動物病院は体調が悪くなってから行くものだと思いがちですが、健康を保つための場所でもあります。
初めて動物を家族として迎え入れるところから最愛の家族との別れのときまで、一生涯において動物とそのご家族に寄り添っていくのが使命です。
いろいろな動物病院があって迷います。信頼できるホームドクターの選び方は?
まずは飼い主さんが希望する条件を挙げて、そこから絞っていくといいと思います。
[飼い主が希望する条件に当てはまる主な動物病院]
- □マンツーマンで丁寧に診察してほしい
→小規模のクリニックや指名制度のある動物病院を探す - □自宅からできるだけ近いところがいい(何かあったときにすぐ駆けつけられる)
→ネットを検索したり周りの飼い主に聞いたりする - □獣医師や愛玩動物看護師が話しやすい
→最初に飼い主のみ出かけて相談しやすい雰囲気・人柄を確認する - □普段の予防から検査や手術まで一つの動物病院で済ませたい
→総合診療に加えて各専門医の存在や安全のための設備を持つ動物病院を探す - □規模が大きい動物病院がいい
→ネット検索でスタッフの人数や設備を確認する
動物病院を上手に使い分ける飼い主さんもいます。たとえば日常の予防や相談ができるホームドクターには近所の動物病院、年1回の健康診断や大がかりな手術には遠くても規模が大きい動物病院、という具合です。二次診療施設と連携し、情報共有できるのが理想ですね。複数の動物病院に通う場合は情報共有できるのが理想ですね。
動物病院に子犬を連れていくタイミングを教えてください。
子犬を迎えて数日経ってから受診したほうがいいでしょう。新しい環境に変わったばかりだと子犬は緊張しがちなので、ごはんを食べているか、ゆっくり休んでいるか、排泄物の状態はどうか……といったことをチェックしながら、環境や家族に慣れさせましょう。ただし食欲がなく元気がない場合はすぐに受診してください。
初めて動物病院を受診するときの準備
子犬を連れて病院を受診することを想像すると心配になるかもしれません。来院の方法や手続きをもとにしっかり準備しておきましょう。
動物病院に初めて行くときは予約したほうがいいのでしょうか。
事前に電話で初診であることを伝えて予約しましょう。免疫機能が十分に働いていない子犬は無症状でも感染症の病原体を保有していることがあるため、周りに感染を広げない対策も兼ねてほかの犬とは隔離することもあります。子犬を迎えたばかりであれば飼い主さんも獣医師にいろいろ聞きたいことがあると思うので、予約しておけば長めに時間をとれると思いますよ。
受診するときには子犬をどのように連れて行くのが安全ですか?
犬を車に乗せる場合は、子どものチャイルドシートのように安全対策が必須です。小型犬や中型犬は成長を見越して子犬より大きめのキャリーを用意するのがオススメ。大型犬はあっという間に成長するので最初は首輪とリードでもいいでしょう。
犬のサイズ別・車の乗せ方
- 小型犬……キャリーバッグに入れて後部座席のシートベルトに固定する。キャリーとフレームが分離するバギータイプやカートタイプなら、キャリーをシートベルトに固定してキャスターを畳んでトランクへ収納できる
- 中型犬……キャリーバッグやクレート(プラスチック製のハウス)に入れて後部座席のシートベルトに固定する。
- 大型犬……クレートに入れて後部座席のシートベルトに固定する。もしくは首輪とリードをつけて後部座席の足元で待機させる。
食後は乗り物酔いで吐いてしまうことがあるので、車で連れて行く場合は朝ごはんを少し少なめにあげてから2~3時間後に出発するといいでしょう。空腹でも嘔吐してしまうため、ごはんを抜くのはやめたほうがいいと思います。子犬時に乗車のたびに毎回吐いていると、車や外出がトラウマになってしまうこともあるので、酔い止め薬も電話で相談してみてください。
問診で伝えたほうがいいことや、必要な持ち物を教えてください。
動物病院が用意している問診票に記入すれば、獣医師がその情報をもとにより詳しくお話をうかがいます。最初の予約の段階で動物病院から持ち物を伝えられると思いますが、基本的には以下の物を用意しておくといいでしょう。
初診の持ち物
- ・ペットショップやブリーダーの情報(健康診断書やマイクロチップ情報など)
- ・混合ワクチンの接種歴
- ・検便用のうんち
- ・いつも与えているフードやおやつを一握り
- ・普段使っているタオル
- ・ペット保険に加入している場合は保険証
動物病院でのマナーと飼い主の役割
動物病院の待合室にはいろいろな動物や飼い主さんがいるので、マナーを守って待つことが大切です。診察にあたって飼い主さんができることもチェック!
動物病院についたらそのまま待合室に入っても問題ありませんか?
待合室では子犬はもちろん他の動物に寄生虫や感染症がうつる危険があるので、動物病院の指示に従って他の動物と接触を避けられるところ(車の中や所定の席など)で待機してください。実は犬が動き回ることで病原体が床に落ちることもあります。基本的に子犬はキャリーに入れておき、キャリーがない場合はリードを持って動き回らないように抱っこをしてあげてください。
初めての診察で犬が緊張しそう。落ち着かせるコツは?
子犬の診察は基本的に診察台の上で行います。落下したら大けがにつながる危険があるため、基本的に保定(動物が動かないように抑えておくこと)は獣医師やスタッフに任せてください(飼い主が保定する場合は獣医師に方法を確認する)。子犬は飼い主さんが寄り添うだけでも落ち着きやすくなります。子犬が診察に苦手意識を持たないように持参したフードやおやつをごほうびとしてあげていいかスタッフに相談してみましょう。
院内で子犬が粗相してしまいました……こっそり掃除すればいい?
遠慮なく周りのスタッフに伝えてください。むしろ飼い主さんが掃除しては排泄物から寄生虫や感染症が広がるリスクがあるので、スタッフが薬剤でしっかり消毒します。場合によってはそのまま検便させていただくこともあります。
渡辺先生から、
動物病院を受診する際のアドバイス
人間の医療ではまだ馴染みの少ないホームドクターですが、動物の健康維持には欠かせない存在です。渡辺先生に来院の際のアドバイスを聞きました。
いつ動物病院に行けばいいのか迷ってしまいます……。
動物病院の大きな役割は健康を支える予防と治療です。それぞれの目的に応じて来院するタイミングが変わります。1歳頃まではホームドクターとの関係構築を兼ねて毎月の来院がオススメ。成長に応じてわかる病気も早期発見できます。
時期に応じた来院のタイミング
- (1)決まった時期に来院する
・混合ワクチン接種:生後2カ月~4カ月まで2~3回、1歳以降は定期的に
・検便:子犬時に複数回、1歳以降は定期的に
・狂犬病予防注射:子犬時に混合ワクチンの接種が終わってから、1歳以降は毎年
・フィラリア駆虫薬、ノミ・ダニなどの寄生虫対策:特に寄生虫の活動が活発になる暖かい時期(地域によって異なる)
・健康診断:子犬を迎えたとき、1歳以降は血液検査も含めて年1回
・不妊・去勢手術:生え替わらず残ってしまった乳歯を抜歯すべきか判断できる生後8カ月頃を目安に(メスは1回目の発情が来る前に) - (2)必要に応じて来院する
・体調不良:食欲や元気がないとき、「いつもと違う」と気づいたとき
・生活習慣の相談:しつけや行動など気になることを相談したいとき - (3)愛犬の状態に応じて来院する(お手入れ)
・爪切り:月1回を目安に(初心者が自宅で行うのは難しい)
・歯磨き:月1回を目安に
・肛門腺:月1回を目安に
散歩コースに動物病院があります。気軽に立ち寄っても大丈夫?
かかりつけのホームドクターがOKであれば、ぜひ散歩のたびに気軽に立ち寄ってください!注射や検査のときだけ動物病院に行っていたら苦手意識を持ってしまうので、スタッフからおやつをもらえたりなでられたりする楽しい経験をたくさん積ませましょう。動物病院が好きな犬は、本当に病気になったときに通院や検査のストレスをかなり減らせます。採血やレントゲン、エコーなどの検査もスムーズにできるのでより適切な治療につなげられます。
渡辺先生が考える理想のホームドクターの役割を教えてください。
動物の病気はもちろん、動物と飼い主さんが抱える困りごとをトータルサポートすることだと考えています。「こんなことを聞いてもいいのかな」と思うことでもどんどん気軽に尋ねてみましょう。動物と飼い主さんのHAPPYを実現するために、常日頃から何度も通ってお互いを理解していくことで、動物とそして家族の方とホームドクターと信頼関係を築いてくださいね。
取材にご協力いただいた病院
夕やけの丘動物病院グループ院長。子どもの頃から動物に囲まれた暮らしを送り、自然と獣医師を志す。日本大学生物資源科学部獣医学科卒業後、東京都や山梨県などの動物病院に勤務する。生活習慣全般のアドバイスができる「HAPPYを支えるホームドクター」を目指して2001年6月に開業。現在は神奈川県横浜市青葉区に夕やけの丘動物病院とあざみ野どうぶつ医療センターを展開している。