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柴犬│歴史・かかりやすい病気・生活で気を付けたい点【専門家監修】

柴犬│歴史・かかりやすい病気・生活で気を付けたい点【専門家監修】

 
福山 貴昭
      

柴犬は縄文時代から続く日本古来の犬種です。そのキリッとした顔立ちや忠誠心の強い性格などから根強い人気があります。またその人気は海を越え、海外にも広がっています。そんな世界が愛する柴犬について、歴史やかかりやすい病気、生活上の注意点などを詳しく解説。柴犬のことをより深く知っていきましょう。

目次

柴犬の歴史

服を着てお座りする2匹の柴犬

柴犬は日本由来の犬種の中でも特に古く、その歴史の始まりは縄文にまでさかのぼります。優れた集中力と俊敏な動きで、昔から小型動物の猟犬として活躍してきました。柴犬という名前の由来には諸説あり、柴と呼ばれる低木をねぐらにしていて体の色も柴に似ていた、長野県の柴村という地域で多く飼育されていた、体が小さいことから「小さい」という意味の古語にちなんでいる、などが有力です。

柴犬は天然記念物に指定された日本犬6品種(柴犬・紀州犬・四国犬・北海道犬・秋田犬・甲斐犬)の中で唯一の小型種。現在いる柴犬の祖先は、1936年に血統登録された石州犬「石号」です。

柴犬の特徴

散歩中の嬉しそうな柴犬

古くから私達の生活に関わってきた柴犬は、小柄ながらたくましい体格。義理堅く忠実な、武士のような面もあります。

体の特徴

柴犬は体高が35~41cm、体重が7~11kgほどで、筋肉質なボディです。体高30cm程度の小さな柴犬は、豆柴と呼ばれます。主に被毛量の差で、「キツネ顔」と「タヌキ顔」に分けられます。やや面長でキリッと引き締まった印象の「キツネ顔」と、各パーツに丸みと厚みがある印象を放つ「タヌキ顔」として2種類に分けられることも。

耳はピンと立ち、尻尾はくるんと丸まっているか、ゆるく孤を描いています。被毛は短めのダブルコートで、毛色は赤・黒・白・胡麻です。

性格の特徴

柴犬は狩猟犬や番犬として用いられることが多いほど、勇敢で警戒心が強く賢い性格です。飼い主や家族などには忠誠心が厚く、よく懐く一方で、他の人にはあまり大きな関心を示さないドライな面もあります。

相対的に頭が良く、飼い主の動きを読んで行動します。性格は個体差があるものの、雄はより積極的に外交し、雌はより自身のペースに忠実な傾向です。

柴犬のかかりやすい病気

病院で診察を受ける柴犬

縄文時代から飼育され、比較的日本の気候に順応しやすい柴犬ですが、かかりやすい病気がいくつかあります。いつもと様子が違ったり、気になる症状が現れたりしたら、早めに動物病院を受診しましょう。

心室中隔欠損症(しんしつちゅうかくけっそんしょう)

先天性の心臓病で、右心室と左心室の間にある心室中隔という壁に穴が開いている病気です。初期は無症状ですが、重症になると、運動するとすぐに疲れる、咳、呼吸困難、吐く、倒れる、元気がない、食欲がない、痩せてきた、大きくならないなどの症状がみられるようになります。

■診断
・心臓に「ズー、ズー、ズー」という雑音が聞き取れます
・さまざまな心臓検査が必要で、心エコー検査などにより確定診断を行います
・初回のワクチン時に動物病院で発見されることが多い病気です

■治療
・投薬治療によりうっ血性心不全の治療を行い、状態が安定した後に心臓手術を行い、穴を閉じる必要があります

■見通し
・ごくまれに心臓の穴が自然に閉じることがありますが、基本的に自然治癒は望めない病気です
・穴が大きい場合は内科療法を行っても徐々に病気が進行するので、できるだけ早く手術を行う必要があります
・早期のうちに手術をした場合、健康な犬と同様の寿命を得られます

乳び胸(にゅうびきょう)

乳び液は、小腸でリンパ管に吸収された脂肪成分や電解質、ビタミンなどを含む液体で、胸腔内の胸管を通り大きな静脈に合流します。乳び胸は、その乳び液が胸管から胸腔内に漏れ出て溜まる病気です。

原因は外傷性(胸壁の損傷による胸管破裂、手術による胸管の損傷など)、非外傷性(胸腔内の腫瘍や心臓病といった別の疾患から二次的に起こるもの)、原因不明の特発性の3つに分類されます。動物では特発性が多くみられます。

■診断
・X線検査や超音波検査
・胸腔穿刺により得た乳び液の生化学検査や細胞検査 などを行います

■治療
・低脂肪の食事を与えて乳び液を減らす食餌療法、胸腔内にチューブを挿入して排液する内科的治療法があります
・外傷性乳び胸では内科的治療法だけで改善することもありますが、非外傷性や特発性の場合は外科的治療の併用が必要です
・乳び胸の確実な治療法はなく、いろいろな方法を組み合わせた治療が行われます

緑内障

眼圧(眼球の内部の圧力)が上昇することにより、視神経と網膜に障害が発生して一時的または永久的な視覚障害が起こる病気です。病期によって急性と慢性に分けられ、急性緑内障では突然の視覚障害や角膜の白濁、白眼の強い充血、瞳孔の散大、羞明などの症状がみられます。眼の痛みにより、頭部を触られるのを嫌がる、元気や食欲も低下するなどの症状が発生。慢性緑内障になると眼球が腫大するなどし、最終的には眼球が委縮します。

■診断
・眼圧測定、眼底検査などを行います

■治療
・治療は困難で、飼い主が眼の異常に気づいて受診した時には、緑内障が慢性化して視神経が著しくダメージを受けていることが多いでしょう
・緑内障のタイプにより、点眼薬や注射、内服などの内科的治療、手術や義眼挿入などの外科的治療がありますが、眼球を摘出しなくてはならない場合もあります

甲状腺機能低下症

甲状腺から必要な量のサイロキシンという物質が分泌できなくなることで起きる病気です。性別差はありませんが、避妊手術や去勢手術を済ませた犬に発症することが多いとされます。甲状腺ホルモンは体のあちこちで働いて体を活発にするホルモンなので、激しい運動をしたがらなくなったり、異常に寒がりになったり、皮膚炎を起こしやすくなったりと、体のいろいろな場所に症状が現れます。

■診断
・症状と血液検査の初見、掘る温の測定値を総合的に判断します

■治療
合成甲状腺ホルモン製剤の投与でほとんどの症状は改善します 基本的に障害飲ませ続ける必要があり、定期的な血液検査をしながら最適な投与量を決定します

アトピー性皮膚病

近年、アトピー性皮膚病と診断される犬が増えています。おなか、顔、手足、脇の下に皮膚病がみられ、かゆみを伴うことが多く、およそ半数の犬は外耳炎を併発しています。1~3歳で発病するケースが多く、1歳未満の発症は少ない傾向です。初期は皮膚の発赤や脱毛程度ですが、慢性化するにしたがって皮膚が厚くなる、色素沈着して黒ずむ、脂っぽくベタベタして臭いが強くなる、紅斑が進むなどの症状が現れます。

■診断
発症年齢と症状から診断します

■治療
・シャンプーをして皮膚の汚れや余分な脂分を洗い流し、皮膚に付着した抗原物質を除去します
・シャンプー後のリンスや保湿剤の使用も効果的です
・抗生物質や抗ヒスタミン剤を投与することもあります

■見通し
・長期の管理が必要です
・悪化した時にだけ慌てて治療していては、治療効果が低くなったり、病気が進行してしまったりすることがあります

柴犬の飼い方ポイント

芝生の上で遊びご機嫌な様子の柴犬

最後に柴犬の飼育において押さえておきたいポイントを紹介します。お世話やフード、飼育環境整備などの面で、次のことを意識してみてください。

警戒心を中心にしつけは幼少期からしっかり行う

柴犬の飼育で意識したいのは、警戒心を中心としたしつけの徹底。警戒心を低めるための社会性が備わっていないと、扱いにくい犬に育ってしまいます。仔犬の時期から頼れる飼い主としての立ち振る舞いを意識し、警戒心を発しなくて良いことを教えましょう。

たくさん運動できる環境をつくる

柴犬は体を動かすことが大好きなので、たくさん運動できる環境づくりも重要です。散歩は1日2回、1回につき20~30分ほどが望ましいでしょう。室内・庭などでもできる限り運動できる工夫をしてください。ルームランナーやアスレチックなど活発に動ける機器・おもちゃを設置するのも良いです。

よく食べるフードを把握する

運動量の多い柴犬にマッチしやすいのは、高たんぱく・低脂肪なフード。フードやおやつの与え過ぎによる肥満には注意しましょう。また、柴犬は食べ物の好き嫌いがはっきりしているとも言われます。嫌いなフードはなかなか食べないなど頑固なところがあるので、好みを把握することもポイントです。

こまめにブラッシングする

ダブルコートの柴犬は毛が抜けやすい犬種なので、定期的なブラッシングが不可欠です。特に春先から初夏、秋から冬にかけての換毛期は大量に毛が抜けるため、念入りにお手入れします。最低でも1~2日に1回はブラッシングしましょう。

柴犬について理解を深めて、家族へのお迎えを検討しよう

柴犬と楽しい時間を過ごす家族

柴犬は日本で古くから愛され、私達の生活によりそってきた親しみ溢れる犬種です。飼い主としっかり絆を結べればずっと忠実に懐いてくれます。かかりやすい病気や飼い方のポイントまでよく理解を深めて、柴犬の飼育を検討してみてください。

監修者プロフィール
福山先生のプロフィール写真

福山 貴昭 博士

ヤマザキ動物看護大学准教授。犬を専門とする両親の下で動物と共に幼少期を過ごす。「日本のペット業界に福祉的成熟をもたらすプロを育成する!」「専門性が求められる学術の世界で“ジェネラリスト”を目指す!」という2つのミッションを胸に教育や研究に携わる。TV出演や執筆などマルチに活躍。
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