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お肌やおなかが弱くても元気いっぱい!シニアになってもかなう健康維持とクオリティ・オブ・ライフとは(前編)

お肌やおなかが弱くても元気いっぱい!シニアになってもかなう健康維持とクオリティ・オブ・ライフとは(前編)

 
中村 篤史
      

オーナーさんのお悩みに獣医師がお答えする企画「ペットのお悩み相談室」。第7回のゲストは、フレンチ・ブルドッグのnicoくん。オーナーの柳さんの質問にお答えいただくのは、「お悩み相談室」おなじみの獣医師、中村篤史先生です。日本の救急医療の現場で多くの動物の命を救い、現在は海外を拠点に活躍中です。8歳を迎えたnicoくんのシニア対策やIBD(炎症性腸疾患)と上手に付き合うポイントを中心にアドバイスをお願いしました。

プロフィール
nicoプロフィール写真

nico

Instagramで4万7000人以上のフォロワーから愛されるフレンチ・ブルドッグのnicoくん。オーナー柳さんが投稿するおしゃれで楽しい日常に、”いいね”はもちろん”コメント”たくさん寄せられる。nicoくんのためにシャンプーを開発したりごはんを手作りしたりと、クオリティ・オブ・ライフを大切にしている。
SNSアカウント: Instagram @yanagi_nico
プロフィール
中村先生のプロフィール写真

中村 篤史 先生

広島県広島市生まれ。北里大学獣医学科卒業。2006年に東京大学附属動物医療センターや2008年に酪農学園大学附属動物病院(北海道)で勤務医を経て、2011年にTRVA夜間救急動物医療センターの開院とともに院長に就任。業務の傍ら講演活動も精力的に行い、2019年には日本獣医救急集中治療学会の設立に参加し、理事長を務めるなど、日本に動物の救命救急分野を根付かせるために尽力。2021年、TBS『情熱大陸』に出演。2022年にTRVAの院長を辞任し、現在はA’alda Japan株式会社のゼネラルマネージャーとして海外を拠点に活動している。

目次

フレンチ・ブルドッグを迎えたいと思っていた私たちにとって、nicoは念願の愛犬なんです。

 
中村先生のプロフィール写真中村先生

前に飼っていた愛犬のちゅべくんがフレンチ・ブルドッグということもあって、僕にとっては思い入れがある犬種なんですよ。しかもnicoくんはおっとりした性格まで似ているから親しみが湧いてきます。

柳さんのプロフィール写真柳さん

うれしいです!私も主人もずーっとフレンチ・ブルドッグを飼いたいと思っていて、nicoは結婚してから迎えた念願の愛犬なんです。ブリーダーさんのところに見学に行ったらnicoだけが私の膝の上でじっとしていて。初めて飼う犬だからおとなしいほうがいいね、と主人と話して決めました。

nicoくんと触れ合う中村先生

中村先生のプロフィール写真中村先生

犬を迎えるといろいろなところに出かけたくなりますよね。僕はちゅべくんを野山に連れて行って思い切り走らせたりしていました。

柳さんのプロフィール写真柳さん

nicoはドッグランでは私たちの足元でくつろいで走りません。近所の散歩に飽きて歩きたがらないから、車で遠くの公園に行くこともあるくらいです。すっかりインドア派になりつつあります(笑)。

犬だって「多病息災」の時代。元気なシニアになる工夫と病気の対処法を教えて!

 

nicoくんのアップ

お悩みテーマ1

後ろ足の筋力トレーニング

 
柳さんのプロフィール写真柳さん

nicoは今8歳で、今年の7月には9歳になります。年とともに歩かなくなってきました。高齢になると後ろ足が弱ってくるのが心配で、もっと筋力をつけたいと思っています。

中村先生

8歳には見えないですね!若々しくてもシニアだから、将来に備えてもうちょっと筋肉をつけてもいいかもしれない。犬は重心が前足と後ろ足のどちらかに偏りやすく、とくに前足に7割前後の負荷がかかっているケースが多いと聞きます。確かにフレンチ・ブルドッグは前のめり感があるかな。後ろ足だけを鍛えるのは難しいかもしれないが、たとえばでこぼこ道を歩いたり坂道を上ったりしてみてはどうでしょう?

対談の様子

柳さんのプロフィール写真柳さん

足をしっかり上げることが筋力トレーニングになると聞いて、公園では木の根っこが多い場所を歩かせています。家ではバランスディスクにのせたり100円ショップの突っ張り棒をまたがせたりしてトレーニングもやっているんです。

中村先生のプロフィール写真中村先生

自宅でのトレーニングのアイデアは素晴らしい!お出かけのときに山中を歩かせてもいいと思います。ただし、標高が高いところは避けてくださいね。フレンチ・ブルドッグのような短頭種(マズルが短い犬種)は、中・長頭種(マズルが長い犬種)に比べて気管が約30%も細いため、高所では酸素も取り込みづらくなってしまいますから。

あとちゅべくんもそうでしたが、フレンチブルドックは、生まれつき脊椎(胸椎や腰椎といった背骨)が奇形のこが多いので、そう言ったことから、腰を痛めやすいです。腰に痛みがありそれををかばって歩いていることが原因で慢性的に後ろ足の筋力低下が起こることがあるので一度レントゲンなどを撮ってもらって確認してみるのもいいですね。

Point

・重心が前足に偏らないように全身をバランスよく鍛えましょう。

・自宅でのトレーニングや低山のトレッキングが筋力トレーニングになります。

・後ろ足の筋力低下は、腰に原因がある可能性もあるので違和感がありそうなら病院で検査してもらいましょう。

 

お悩みテーマ2

IBD(炎症性腸疾患)の対処法について

 

椅子の上野nicoくん

柳さんのプロフィール写真柳さん

nicoは3歳からIBD(炎症性腸疾患)で闘病中です。今は治療のためにステロイドを週4回飲んで体調をコントロールできています。最近の血液検査ではアルブミン(タンパク質の一種)の数値が3.5までアップしていて、ステロイドも5mmの1/4錠という少量を、3日に1回まで減薬できています。

中村先生のプロフィール写真中村先生

フレンチ・ブルドッグにはIBDが多いですよね。でもnicoくんは体調がとてもよさそうに見えます。アルブミンの数値も十分によい状態を維持できているのでは。

柳さんのプロフィール写真柳さん

最初は治療薬のステロイドのことがよくわからなくて怖いイメージしかなかったんですよね。ステロイドを飲ませるのに抵抗があったから漢方を使っていたけど、アルブミンが下がってしまって……。

質問をする柳さん

中村先生のプロフィール写真中村先生

アルブミンの数値が2を切ると雪崩のように一気に落ちていきます。低アルブミン血症を起こせば腹水や胸水が溜まって命の危険もある。IBDに限らないけれど軽度のうちにしっかり体調と数値を戻しにいくなら、ステロイドはいい仕事をする薬なんです。
ただ、個体差はあるけれど長期服用は筋力低下や多飲多尿(心臓や腎臓に負担)のほか、肝臓にも負担がかかる場合もあります。西洋医学はちゃんとした知識をもって、使いどころでちゃんと使うことが大事ですよ。

柳さんのプロフィール写真柳さん

まさにステロイドには助けてもらいました。でも筋肉や免疫が弱くなってしまうのではないかという懸念もあります

中村先生

現在の容量であればそこまで大きな影響はないと思います。症状が安定しているのであれば、かかりつけの獣医師と相談して容量を少しずつ減らしていってもいいかもしれませんね。

Point

・ステロイドは怖くない。適切に使えば愛犬のつらさを取り除けます。

・症状が安定したらかかりつけの獣医師に容量・用法の相談を。

 

お悩みテーマ3

シニアになったら取り入れたい健康診断の検査

 

前足を上げるnicoくん

柳さんのプロフィール写真柳さん

シニアだからこそ健康診断に取り入れたほうがいい検査はありますか?

中村先生

基本的な健康診断は問診、触診、血液検査。その次にレントゲン検査。さらに加えるなら僕は超音波検査かなと思います。無麻酔で負担をかけずに肝臓や腎臓、脾臓などの臓器全体を見ることができて、腫瘍などの早期発見にもつながる検査です。シニアの健康診断には入れておきたいですね。

柳さんのプロフィール写真柳さん

僕は自分では病気が見つかったら怖いから病院に行きたくないタイプ。でも犬はどこか体調に異変を感じていてもものを言えないから、飼い主が検査に連れて行ってあげることは大切ですよね。

柳さんのプロフィール写真柳さん

私は違うベクトルの小心者で、怖いからこそ自分もnicoも病気を早期発見したいタイプです。

中村先生

僕はご主人と同じタイプの小心者ですね(笑)。獣医師としてお手本にはならないけれど、検査と数値にとらわれて一喜一憂するのは僕の考え方に合わなくて。実際に犬が元気だったらよくないですか?数値をよくすることを目標にするのではなく、遊びに行ったりおいしいものを食べたりするほうがいいなと思っています。
とはいえご主人の言うとおり犬はものを言わないので、年に1回は健康診断を受けたほうがいいでしょう。年齢を考えたら半年に1回でもいいと思います。

中村先生とnicoくん

Point

・おすすめは触診、血液検査、レントゲン検査、超音波検査のセット。

・犬はものを言わないからこそ、年1?2回の健康診断を。

 

まとめ

お悩み相談室 前編は、筋力トレーニング、IBDの治療、シニアの健康診断について中村先生にアドバイスをいただきました。後編ではnicoくんのバズり投稿を獣医師の視点からチェック!

【後編】はこちらからチェック
お肌やおなかが弱くても元気いっぱい!シニアになってもかなう健康維持とクオリティ・オブ・ライフとは(後篇)

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