短い毛、利発さや優雅さを感じさせる顔立ち、しなやかな体など、イタリアン・グレーハウンドは1度見たら忘れられないような個性に溢れた犬です。今回は、イタリアン・グレーハウンドの特徴や性格などを詳しく解説。かかりやすい病気や飼育上のポイントも紹介します。
目次
イタリアン・グレーハウンドの歴史
イタリアン・グレーハウンドは、古代エジプトのファラオが住む宮廷で飼育されていた小型の グレーハウンドがルーツではないかと言われています。当時の器や花瓶に描かれていた絵柄から、エジプトからギリシャ、そしてイタリアへ渡ったと考えられます。
その後16世紀のルネッサンス期には、王侯貴族を中心に大きな人気を集めました。当時の品種改良による小型化や、第二次世界大戦の影響などで一時絶滅の危機にも瀕しましたが、アメリカからの逆輸入によって危機を脱し、今日につながっています。なお、「イタグレ」の略称で呼ばれることもあります。
イタリアン・グレーハウンドの特徴
続いて、イタリアン・グレーハウンドの特徴について解説します。狩猟犬をルーツとするイタリアン・グレーハウンドは、美しくしなやかな体や上品な見た目が大きな魅力。また、穏やかで温厚な性格も特徴です。
ほっそりとして四肢が長い
ほっそりと引き締まった体と長い四肢、しなやかな体躯が特徴です。平均的な体格は体高32~38センチ、体重5~8キロですが、5キロ以下でも珍しくはなく、小型犬に分類されます。皮膚が薄く筋肉質で、オスはメスよりさらに筋肉質になりやすい傾向があります。胸元に厚みがあり、心肺機能が発達しています。
穏やかで品が良い
体に対して頭のサイズは小さめです。穏やかな表情や顔のつくりのシャープさから、スタイリッシュな雰囲気も漂います。口周りから鼻先にかけてのマズルが長いのも特徴です。
より速く走るため風の抵抗を極限までなくす身体の構成は”機能美”の代表格であり、気品すら感じられる性格を備えることから「高級家具の美しさを持つ犬」と称されています。
短くなめらかな質感の被毛
イタリアン・グレーハウンドの被毛はとても短く、触り心地はサテンのようになめらかです。被毛のほとんどがオーバーコートであることから、ダブルコートの犬種と比較すると寒さが苦手な傾向にあります。
バラエティ豊かな毛色
イタリアン・グレーハウンドの主な毛色は、ブルー・レッド・ブラック・ホワイト・クリーム・フォーン(黒みを含んだゴールド)・シール(赤茶を帯びたブラック)などです。完全に単色の毛色を「ソリッド」と呼び、例えばレッドなら「レッドソリッド」となります。他には、白い斑紋があるタイプもいます。なお、瞳の色はダークカラーです。
穏やかで繊細ながら親しい人には甘えん坊
基本的に温厚でおっとりした性格です。内気な面があり、初めて会う人・動物には人見知りすることも多いでしょう。家族など親しい相手には甘えん坊な部分をのぞかせます。また遊びが大好きで、猟犬らしく活発な外遊びも好みます。メスよりもオスのほうがアクティブな傾向と言えるでしょう。
イタリアン・グレーハウンドの寿命とかかりやすい病気
イタリアン・グレーハウンドに長生きしてもらうため、気を付けたい病気・ケガも押さえておきましょう。気になる症状が見られたら、速やかに医師の診察を受けてください。
寿命
寿命は13歳前後と言われています。犬全体の平均寿命14歳と比較しても、平均的と考えられます。
膝蓋骨脱臼
後肢の膝蓋骨が正常な位置から外れてしまう病気です。イタリアン・グレーハウンドは先天的に脱臼が起こりやすい膝の構造をしているため、発症しやすい傾向があります。また、肥満や外傷などがきっかけになることもあります。
緑内障
眼圧が高くなり、視野が狭くなるなどの症状が現れます。短期間で失明のリスクもある病気です。ダメージを受け続けると視覚機能が元に戻らなくなるため、早急に眼圧を下げる事が大切です。
歯周病
歯垢がたまって口腔内で起こる炎症です。歯肉が炎症を起こすと赤色になって腫れ、出血や口臭が発生してよだれの量が増えることも。さらに進行すると歯がグラグラして痛みが出て、口を触られるのを嫌がるようになります。歯周病がひどくなると、下顎骨の骨折を引き起こすこともあります。
てんかん
脳の異常に関係なく起こる発作で、けいれんや意識障害を引き起こす病気です。てんかんが脳全体に起こると、意識を失い全身がピクピクしたり、四肢や口がガタガタと震える全般発作が生じます。てんかんが生じた脳の部位が限定的な場合、意識はあるのに体が固まったように動かなくなったり、四肢が小刻みにけいれんしたりする発作が現れます。
脱毛症
ブルーの毛色に見られやすい「カラー・ダイリューション脱毛」や、特定の部分に繰り返し現れる「パターン脱毛」などに気を付けましょう。
骨折
イタリアン・グレーハウンドは四肢が長く骨折しやすい犬種です。ジャンプ力があるため、高い所から飛び降りた際などに骨折する危険性があります。筋肉や皮下脂肪が薄く、骨折すると癒合不全を起こしやすい傾向にあります。
イタリアン・グレーハウンドの飼い方ポイント
最後に、イタリアン・グレーハウンドの飼い方で押さえておきたいポイントを解説します。小ぶりな体格で性格も穏やかなことから、犬を今まで飼った経験の少ない初心者でも比較的飼育しやすい犬種ではあります。
ただし、環境整備やお世話をしっかり意識しなければ、病気やケガを招いてしまいかねません。次のような点は忘れずに覚えておきましょう。
寒さを防げる環境を整える
イタリアン・グレーハウンドは毛が短く皮膚も薄いため、寒さが苦手です。寒い季節は暖房機器を使って室温を調整するなどの対応が必要です。冬場の散歩時は洋服を着せてあげるのも良いでしょう。
段差を少なくする
骨折しやすい犬種なので、足に負担がかかりにくい飼育環境を整えることもマストです。例えば、段差はできる限り少なくすること。ソファにはステップを置いて高さを減らすのもひとつです。階段など段差のある場所には入れないよう、柵を設置するなど対策も取りましょう。
十分な運動量を確保する
狩猟犬をルーツに持ち、活発かつ運動神経が良い特徴があります。そのため、まとまった運動量を確保することも大切です。速く走るのが得意なので、ドッグランのような全力で走れる環境で遊ばせるのがおすすめです。
皮膚被毛が薄いため、運動中に皮膚が何かと接触するとケガにつながることも。周りに物がない環境で運動させましょう。運動時には犬が身に付けているペット用品なども極力外してください。
毛のケアや抜け毛対策を欠かさない
イタリアン・グレーハウンドは、日々の毛のケアも不可欠です。ブラッシングは週に2~3回ほどが目安。皮膚が汚れたままだと臭いの原因にもなるため、タオルなどで定期的に肌を拭いてあげると良いでしょう。散歩の後はしっかりと汚れをふき取りましょう。
なお、乾燥した環境にいると皮膚や被毛のトラブルが増えるため、室内の湿度にも気を配ってください。肌の乾燥が気になる場合は保湿ケア用品などを使うのもおすすめです。
しつけは穏やかに冷静に進める
繊細な性格の犬種なので、厳しいしつけは禁物。乱暴な言葉遣いでしつける・体罰を加えるなどは絶対に避け、穏やかに冷静にしつけを進めてください。基本的にイタリアン・グレーハウンドは賢い犬なので、覚えるのも早いでしょう。
上品で穏やかなイタリアン・グレーハウンドを深く知ろう
イタリアン・グレーハウンドはスタイリッシュで上品な外見や、大人しく愛情深い性格など魅力に溢れた犬。昔から多くの犬好きに愛されてきました。イタリアン・グレーハウンドの飼育に興味を持っている人は、特徴や飼い方についての知識を増やすとともに、一緒に暮らす具体的なイメージを描いてみてはいかがでしょうか。
福山 貴昭 博士