オーナーさんのお悩みに獣医師がお答えする企画「ペットのお悩み相談室」。第6回のゲストは、SNSで人気の柴犬のうにくんとゴールデン・レトリーバーのおからちゃん。飼い主さんの質問にお答えいただくのは、「お悩み相談室」おなじみの獣医師、中村篤史先生です。日本の救急医療の現場で多くの動物の命を救い、現在は海外を拠点に活躍中です。日常に潜む思いがけない危険をはじめ、飼い主さんにアドバイスをお願いしました。
うにandおから
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中村 篤史 先生
目次
最初に出会った柴犬のうに。仲良くできる2頭目を求めておからを迎え入れました。
獣医師になって18年経ちますが、柴犬とゴールデン・レトリーバーの組み合わせに会うのは初めてかもしれません。
僕が柴犬好きなんです。結婚したら柴犬を迎えるつもりでを探していたときに目を離せなくなってしまった子犬がうにです。
じつは結婚式のウェディングドレスのフィッティングの帰りに出会ってしまったんですよね(笑)。私は子どもの頃からゴールデン・レトリーバーに憧れていたんですが、最初に大型犬は難しいかなと思ったので。
僕はフレンチ・ブルドッグが好きなので、うにくんのずんぐりむっくり感に親しみを感じますね(笑)。足の短さが功を奏してかわいい!僕が今日着ているトレーナーのチャウ・チャウのくり蔵くんにもちょっと似ているかも。2頭目のおからちゃんはママさんの希望ですか?
そうです。うにがほかのワンちゃんと遊べるタイプではなかったので、仲良くできる2頭目がいてくれたらと思って迎え入れました。
小型犬と大型犬のでこぼこコンビ。多頭飼育の注意や散歩の方法を知りたい!
体格差のある多頭飼育について
うにくんとおからちゃんはすごく仲が良いですね。救急医療の現場では多頭飼育の家庭でけがをした犬を診たこともありますが、この2頭は上手に遊んでいると思いました。
2頭目が来ると先住犬が体調を崩すという話を聞いて心配していたけど、最初から仲良しでしたね。
うにはほかの子とはワンプロができなかったのに、おからとは楽しそうにじゃれ合って遊んでいる姿を見られました。今までケンカもけがもしたことはないんです。
犬同士の遊びのことをプロレスにたとえて「ワンプロ」って言うんですね。初めて知りました(笑)。うにくんの体にピンポイントでおからちゃんの体重が乗ると心配ですが、お互いに体格差をわかって上手に遊んでいると思います。
犬には飼い主さんの気持ちを読み取る力があるから、家族が「この子たちは仲良し」と信じていることも大事なんです! 家族が安心して見守っている家庭に比べて、いつも緊張してピリピリしている家庭ではトラブルが起こりやすい印象があります。臨床の現場で多くの飼い主さんと動物に接してきた経験から、飼い主さんの感情や思考がネガティブな状況を招くこともあると感じるんですよ。
確かに夫婦がちょっとピリピリしただけでも犬たちが顔色をうかがっています……。私たちもそれを感じて明るい気持ちで過ごすことが増えて、すごくいい影響を受けています。
犬たちは家族をよく見ていますよね。2頭の関係性を見ていれば、ご夫婦も幸せなんだとわかりますよ(笑)。
・多頭飼育の場合は犬たちの相性や遊び方をチェックしましょう。
・犬は人間の気持ちを読み取ります。お互いに幸せでいられることが大事!
手作り食とドッグフード
基本的にドッグフードしかあげていなくて小さいころから変えていないんですが、手作り食が寿命をのばすという話も聞くからどうなのかなと気になります。
獣医師の視点から答えると、手作り食は動物栄養学の知識がなければ栄養バランスが偏って不調が出てしまうことがあります。たとえばキャベツにはシュウ酸が多く含まれているので、与えすぎれば尿結石の原因になることも。
とはいえ、一概に手作り食を否定できないと思っています。僕が診ていた手作り食を与えている飼い主さんの愛犬たちは、19歳を筆頭にみんな寿命が長かったんですよ。
平均寿命が15歳くらいと考えたら、すごく長生きですね!わが家も手作り食にしたほうがいいのか迷います。
フードメーカーが総合栄養食の基準にしているAAFCO(全米飼料検査官協会)をもとに作っている飼い主さんもいますよね。僕はドッグフードでも手作り食でもどっちでもよいかなと思っています。
大切なのはその子が必要とする食事の王道に入っているかどうか。もし食事内容が合っていなければ、皮膚や毛づや、便やおしっこの状態に如実に現れます。うにくんとおからちゃんの健康状態を見て、今のごはんが間違っているとは思えません。
先生にそう言っていただいて安心しました。手作り食に興味はあるけど、必要な栄養素が入っている食事を作れるかどうかしっかり考えないといけませんね。
・食事は健康状態に合わせて「必要な栄養素が入っている」ことが何よりも重要!
・手作り食は動物栄養学の知識がなければ栄養バランスが偏り不調の要因になることもあるので注意!
散歩のペースがばらばら。
うにはにおいを嗅ぎながらまったりゆっくり歩きたいタイプで、おからはいろんなところをどんどん歩きたいタイプ。普段は2頭が自分のペースで楽しめるようにできるだけ別々に行って、主人がいるときは一緒に出かけたりしていました。
飼い主さんが犬に合わせて歩くことも大切ですが、逆に犬が飼い主さんに合わせて歩くトレーニングをしてみてはどうでしょうか? 僕は家族全員で散歩に行くことで新しい関係性ができて、多頭飼育ならではの散歩の方法が生まれてくるんじゃないかと思います。
力の強い大型犬をコントロールするためにしつけ方教室で学ぶことも必要かもしれません。僕は愛犬にしつけも何もしていなかったので偉そうなことは言えないけど(笑)。ただ一つ言えることは、歩くことは犬も人間も大事! 適切な運動で筋肉をつけて代謝を回すことが健康維持の基本です。
今年の夏は暑かったので散歩は早朝か深夜でした。ドッグランに行かれなくて思い切り走らせられなかったんですよね。
猛暑といわれるような夏は熱中症が怖いので、ご家族の判断は大正解です。熱中症は体温が上がりきってぐったりしたら死亡率50%! 散歩から帰って元気も食欲もなければ脱水のサインなので、体を冷やして水を飲ませてあげてください。僕が監修している「DOGOH INDOOR DOG PARK TOKYO」は、真夏でも快適に遊べるのでぜひ来てくださいね(笑)。
じつは寒い時期にも注意が必要です。ゴールデン・レトリーバーは膝と股関節、柴犬は首を痛めやすい印象があるので、寒い季節はウォーミングアップの代わりに家で少し遊んで体を温めてから出かけましょう。
・犬が飼い主さんに合わせて歩く散歩で、多頭飼育ならではの関係性を築ける。
・季節に応じた暑さと寒さ対策で犬を守ろう!
お悩み相談室 前編は、体格差のある多頭飼育のポイントや食事の疑問、楽しく安全な散歩の方法ついて中村先生にアドバイスをいただきました。後編ではうにくんとおからちゃんのバズり投稿を獣医師の視点からチェック!
【後編】はこちらからチェック
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