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【獣医師監修】犬の関節炎とは?原因や症状、治療法・予防法を解説

【獣医師監修】犬の関節炎とは?原因や症状、治療法・予防法を解説

 
古田 健介
横浜青葉どうぶつ病院
302HugQ
      

犬が関節炎を患うと「歩きたがらない」「足を引きずる」といった症状が見られるようになります。犬の関節炎は症状が進行すると完治は難しいので、早期に発見することが重要です。今回は犬の関節炎をテーマに、症状や原因、治療法、予防法などを詳しく解説します。

目次

犬の関節炎とはどんな病気?

犬の前肢の関節

まずは犬の関節炎の状態や症状について解説します。犬の関節炎がどのような病気かを知り、早期発見につなげましょう。

関節組織に炎症が起きている状態

関節炎とは、骨と骨の接合面にある関節組織(軟骨など)に炎症が起きている状態を言います。関節炎は体のどの関節でも発症する可能性があります。犬の場合は、前肢の肩・肘・手根関節や、後肢の膝根(膝関節もしくは膝)・足根・股関節などが発症しやすい部位です。

犬の関節炎でよく見られる症状

犬が関節炎を発症すると、次のような症状がよく見られます。

・足を引きずる
・なかなか立ち上がれなくなる
・歩きたがらない
・遊びたがらない
・階段の上り下りをしたがらない
・散歩で歩くのが遅れる・座り込む
・足を触ると痛がる
・関節の音が鳴る
・ふさぎこむ・攻撃的になる

関節症を発症しやすい犬種

横たわるチワワとゴールデン・レトリバー

関節炎は大型犬に多い傾向ですが、小型犬でも発症することがあります。

<関節炎になりやすい犬種>

 大型犬

 ゴールデン・レトリバー
 ラブラドール・レトリバー
 ロットワイラー
 バーニーズ・マウンテン・ドッグ
 ドーベルマン
 ジャーマン・シェパード・ドッグ
 セント・バーナード
 ニューファンドランド など

 小型犬  トイ・プードル
 チワワ
 ポメラニアン
 キング・チャールズ・スパニエル など
 
 

犬の関節炎の原因

階段を降りてくる犬

犬の関節炎の主な原因として、加齢や肥満などによる関節への負荷、疾患や外傷による関節の炎症などが挙げられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

①関節への負荷

加齢に伴って関節組織に負担が積み重なり、関節炎を発症するケースが多く見られます。また過度な運動も原因のひとつです。運動は犬にとって不可欠なものですが、運動量が多すぎると関節に大きな負担がかかります。ただし、運動不足による肥満も関節炎を引き起こす原因になりえます。

その他、生活環境も関節に影響します。床が滑りやすい、段差が多いといった環境で飼育すると、関節に過度な負荷がかかり関節炎を発症しやすくなります。

②疾患によるもの

床に伏せるトイ・プードル

以下の疾患をもっていると、関節炎の症状が出ることがあります。

膝蓋骨脱臼

後肢の膝蓋骨の関節が横方向にズレて外れる疾患。小型犬に多く、先天性の場合もある。英語で膝蓋骨をパテラ(pattela)ということから、膝蓋骨脱臼をパテラと呼ぶこともある(正しくはpattela luxation)。

前十字靭帯断裂

膝関節を構成する靭帯の1つで過度の力が加わることにより断裂してしまう。膝蓋骨脱臼のように膝関節が不安定になる要因があると断裂リスクが高まる。

股関節形成不全

股関節の発育不良などにより、成長とともに炎症が進行する。股関節の形態的な異常により関節の不安定が生じることで関節炎が生じる。遺伝的な要因も指摘されており、大型犬に多い傾向がある。

免疫異常

自ら関節組織を攻撃し、炎症が起きる場合がある。

③外傷後の感染症

まれではあるものの、打撲や刺傷などの外傷がきっかけとなり、関節に細菌が入り込んで炎症を起こすこともあるので注意が必要です。

犬の関節炎の治療法

ゴールドの瞳を持つマンチカン

犬の関節炎は、完治が難しい病気です。そのため、多くの場合治療は症状の緩和や進行を抑えることを目標に行われます。

①病院治療

処方される薬は、痛みを和らげる鎮痛剤などです。早期発見の場合、根治的な治療として外科的な原因治療が行われることもあります。関節組織が摩耗している状態を補うため、サプリメントの使用や薬剤の注射をすることも。重症の場合は、外科手術により人工関節に置き換えることもあります。

②自宅療養

軽度の状態であれば、家で安静に過ごすことが治療につながります。症状を悪化させないために、体重管理や運動量の調整、生活環境の改善が必要です。関節炎を患う犬向けに調製された療法食もあります。関節炎の治療としてこれらの有用性のエビデンスはありません。特殊なケースでサポーターを使用することはありますが、関節炎全般に有効とは言えません。

犬の関節炎を予防する方法4つ

おいしそうに食事をするゴールデン・レトリバー

最後に、犬の関節炎を予防するため、日常で行えることを紹介します。関節炎を引き起こしやすい要因を遠ざけながら生活すれば、発症の可能性を低くできるでしょう。

①体重管理

体格に合った体重を維持できるよう、犬が欲しがるままに食べ物を与えるのは控えます。体重が増加傾向にある場合は、減量用フードに切り替えましょう。去勢・避妊手術をした犬は、体重が増えやすい傾向があるので気を付けてください。

②運動

過度な運動や肥満による関節への負荷を避けるため、犬種や体格、年齢などを考慮し適度な運動を取り入れることが大切です。かかりつけの獣医師に相談しながら、愛犬に合った運動量を把握しましょう。

③環境整備

滑りやすい床や段差、温度管理に注意して、関節に負荷がかからない生活環境を整えましょう。フローリングには、フロアマットやカーペットを敷くなどの工夫が必要です。また爪や肉球周りの毛をしっかりお手入れすると、滑りにくくなります。段差の上り下りによる関節への負担を避けるために、ソファのスロープや階段用の柵を設置しておくと安心です。

④健康診断

定期的に健康診断を受けていれば、関節炎の早期発見につながります。犬の関節炎は完治が難しいため、なるべく早く適切な治療とケアをして進行を防ぐことが重要です。また気になる症状があったら様子見をせず、速やかに動物病院を受診しましょう。

犬の関節炎は早期発見が大切!適切なケアで愛犬の生活を守ろう

ロットワイラーが走る様子

愛犬の関節炎を予防するには、生活環境を整え体重や運動量の管理をすることは不可欠。ただし、関節炎は高齢により発症する場合もあり、完全に予防するのは難しい病気です。もし発症したら、できる限り早めに治療を始めることが大切です。犬の関節炎に関する知識を深め、愛犬の健康を守りましょう。

監修者プロフィール

古田 健介 先生

神奈川県の動物病院に5年勤務し、身近なホームドクターとしての経験を積んだ後、母校の大学病院へ戻る。そこで4年間、専門的な二次診療などの臨床経験と地域医療の実践を重ね、2015年4月、神奈川県センター北に横浜青葉どうぶつ病院を開く。
神奈川県 横浜市都筑区
古田 健介
横浜青葉どうぶつ病院
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