「ペットのお悩み相談室」は、オーナーさんの質問に獣医師が直接お答えするコーナー。第5回のゲストは、ぬいぐるみのようなモフモフ感と垂れ目の愛くるしい表情で、SNSでも話題のチャウチャウ・くり蔵くん。今回も動物の救急医療の最前線で活動し続けてきた獣医師・中村先生が、チャウチャウならではの健康の注意点や気をつけたい病気など、オーナーさんのお悩みにお答えします!
くり蔵くん
Twitter:https://twitter.com/kurizo_chow
Instagram:https://www.instagram.com/kurizo_chow/
中村 篤史 先生
目次
独立心が強くマイペースなチャウチャウのくり蔵くん。
知らない人に対しては、臆病な一面も。
今日はよろしくお願いします!早速ですが、くり蔵くんは見ているだけで癒やされますね。これまで11年間、救命救急の診療にあたってきましたが、チャウチャウはとてもめずらしく、数頭しか診ていないかな。
動物病院に連れて行くと、チャウチャウを診るのは初めてという先生が多く、「この舌の色は、普段から?」と聞かれたりします(笑)
青黒い舌の色はチャウチャウの特徴ですが、初めて見るとビックリするかもしれないですね。家族で犬を飼うのは初めてだったそうですが、犬初心者で大型犬、しかも希少犬種のチャウチャウという選択もめずらしいですね(笑)
茨城県の犬と触れ合える施設に行ったときに、初めてチャウチャウに触れる機会があって、このモフモフ感とドッシリとした存在感に一目惚れして、1ヶ月後にはブリーダー探しをはじめました。
ブリーダーさんも限られてくるんじゃないですか?
はい、長野県まで行って出会ったのが、この子でした。ブリーダーさんに「あなたには、この子がピッタリよ」と小さなくり蔵を抱かせてもらった瞬間、何とも言えないうれしさがこみ上げてきて、くり蔵もすごくうれしそうに感じたんです。一方的に私が選んだというより、お互い選び合ったという方が正しいですね!
とてもハッピーなエピソードですね。チャウチャウは飼い主にはとても忠実な犬種です。ただ、独立心が強く頑固でマイペースな一面があるためしつけが難しいといわれますが、実際に飼ってみてどうでしたか?
まさに、独立心が強くマイペースです。飼い主に従順というより、言うことを聞くかどうかは自分で判断しているような気がします。また人を怖がって吠えることがあるので、そこは注意していますね。家に来る人は平気ですが、暗い時間に散歩しているとすれ違う人に吠えたり、体の大きい男性や声の大きい人にビックリして飛びつこうとすることもあるので。
大きなチャウチャウが吠えたり飛びついたりすると、相手がビックリして転倒する事故につながることがあるので、今後も注意したいですね。
豊富な運動量に、アレルギー症状。ホクロも気になる。
チャウチャウのくり蔵くんのお悩みとは?
長距離のお散歩、活発な運動量について
平日のお散歩は、朝2~30分、夕方1時間くらい。仕事が休みの週末は、1日3時間くらい代々木公園や駒沢公園などに遠征して10kmくらいお散歩しています。くり蔵は無限に歩きたがるのですが、歩かせ過ぎですか?
10km!? それは結構な運動量ですね(笑)。チャウチャウは運動量が少ないと言われていますが、くり蔵くんのように活動的でスタミナのある子もいます。くり蔵くんの体もチェックしましたけど、すごくいい筋肉していますね!
思った以上にアクティブで、ガシガシ引っ張って走るおかげで、私がムキムキに鍛えられました(苦笑)
チャウチャウは筋肉質な犬なので、筋肉量を低下させないためにもしっかり運動させてあげることは大切です。その上で、気をつけたいのは、股関節の病気。股関節が悪くなる犬は、骨盤と後ろ足の骨の接合が生まれつき浅く、ズレやすいため、高齢になったときに関節炎を発症するケースが多いです。
くり蔵くんは4歳で元気そのものですが、チャウチャウに限らずレトリーバーなどの大型犬種は股関節を痛めやすいので、定期的にレントゲン検査を受けることをおすすめします。チャウチャウは神経質で気性の激しい子もいるので、なかなかレントゲン検査が難しい子もいますが、くり蔵くんはとても穏やかでおとなしいので、きっと大丈夫ですよ。
- ・大型犬は筋肉量を低下させないための運動が大切!
- ・定期的なレントゲン検査で股関節のチェックを!
過去に発症したアレルギー反応
一時期はアレルギーがあったとお聞きしました。
はい。2歳くらいまでは、頻繁に下痢をする子でお腹が弱いのだと思っていました。気になって病院でアレルギー検査を受けてみると、それまで与えていたフードに含まれている牛肉・ラム・穀物類がことごとくアレルギー源でした。その後、アレルギーの療法食を続けて、今ではすっかり改善されました。
食物アレルギーの顕著な症状は、耳・目・口の周りにかゆみや赤み・発疹があらわれるのですが、くり蔵くんも?
ひどかったですね……。出血するくらいかきむしっていました。あと涙がすごかったです。
それはつらかったでしょうね。人も風邪を引くと涙や鼻水が出やすくなるのと同じように、アレルギーや感染症になると、免疫が戦っている症状として涙や目ヤニが出やすくなるんです。今も、食事は療法食だけですか?
療法食だけだとかわいそうなので、アレルギー対応のドッグフードに、野菜・お肉・牛乳などをトッピングしています。今のところアレルギー症状はないので大丈夫かなと。やっぱり療法食だけにした方がいいですか?
くり蔵くんの毛並みや皮膚の状態を触って見た限り、まったく問題ないと思いますよ。ただ、かかりつけの先生からも説明があったと思いますが、アレルギー検査は血液中の成分にどれだけアレルギー反応を示すものがあるかを調べる検査で、食事として摂取した場合の反応と必ずしも一致しないんですね。
よくあるケースが、血液検査であらゆる食物にアレルギー反応が出たワンちゃんは、食べるものがないということになる。でも、実際には食べてもアレルギー症状があらわれない場合もあるので、少しずつ与えて様子を見るのも1つの方法です。もちろん、血液検査でアレルギー反応が出た食べ物は要注意ですから、明らかに症状が出るときは食べさせるのをストップするのが正解です。
なるほど、そうだったんですね。あまり神経質になりすぎずに、療法食プラス、くり蔵の好きなものを与えつつ、様子を見ていきたいと思います。
チャウチャウは胃捻転を発症しやすい?
チャウチャウが発症しやすいという「捻転」。かかりつけの獣医師さんからも、胃捻転になるとよだれが出ると言われたのですが、普段から水を飲んだ後などはよだれがすごいので、どうやって見極めたらいいのかと。
胃捻転が起こると、まず胃が気持ち悪いので落ち着きがなくなりウロウロしたりします。よだれも大量に出るので、普段の様子とは明らかに違ってきます。さらに胃の靱帯がねじれて血管が遮断される「胃拡張捻転症候群」になると、胃のあたりがパンパンに腫れてきます。そうなると、苦しくて吐こうとしても、血管がねじれているので吐けない状態なので、緊急手術が必要になります。胃捻転が起こりやすいのは、夕食後の夜。胃の中に滞留物があるときにお散歩させるのは、避けた方がいいですね。
ご飯は夕方のお散歩の後ですが、そうなったら大変なので、食事の後の運動は絶対にしないようにします。
10歳以上の大型犬の場合、食後に散歩や運動をさせなくても、立ったり座ったりの動作ひとつで胃捻転が起こる可能性もあります。症状の現れ方は個体差がありますが、見極めるポイントは舌の色が紫になり、耳の末端が冷たくなって、ふらついて立てなくなる。あと、あまり知られていませんが、鼻の色が白くなります。そういう様子が見られたら、すぐに病院に連れて行ってあげてください。
鼻の色が白くなることは知りませんでした。気にかけて見ていきたいと思います。
- ・食後すぐのお散歩や運動は避けるべし!
- ・10歳以上の大型犬は特に要注意!
ホクロができやすい問題
病院に連れて行くほどのことではないのですが、ホクロができやすいのが心配で……。この2年くらい、年々増えているので、何か悪い病気じゃないかと。
くり蔵くんの皮膚を見ましたが、ホクロ自体は隆起しているものではないので、心配ないですよ。ホクロの表面が膨らんでいたりすると、体内に腫瘍がある可能性もあるので生体検査が必要ですが、今、見た限りでは心配ないでしょう。
ただし、痒みがある場合は、そこで炎症が起きている可能性があるため注意が必要です。
よかったです、安心しました!あと留守番のときは、退屈しないようにテレビなど刺激を与えてあげた方がいいですか?ひとりのときは、ずっと寝ているみたいなので。
音に敏感な繊細なワンちゃんの場合、テレビを点けていると、車や子どもの声など周辺の音がテレビの音に紛れるので、落ち着くことがあります。日常的にテレビを観る環境に慣れているのなら、点けてあげていた方がお留守番タイムも普段通り過ごせるかもしれないですね。
くり蔵くんのお悩み相談室、前編は希少犬種チャウチャウならではの病気や気になるお悩みについて、獣医師の中村先生にアドバイスをいただきました。特にチャウチャウが発症しやすい胃捻転のお話は、大型犬オーナーさんにとって役立つものだったのではないでしょうか?後編では、SNSで反響の大きかったくり蔵くんのバズり投稿を見ながら、獣医師の視点から色々とご意見をいただきます。次回もお楽しみに!