オーナーさんのお悩みに獣医師がお答えする企画「ペットのお悩み相談室」。第4回のゲストは、SNSで人気のコッカプー(コッカースパニエルとトイプードルのミックス)・ビールくんとイラストレーターの大河紀さん。質問にお答えいただくのは、「お悩み相談室」おなじみの獣医師、中村篤史先生です。日本の救急医療の現場で多くの動物の命を救い、現在は海外を拠点に活躍される中村先生が、ビールくんに関するお悩みに色々お答えします。
ビールくん
SNSアカウント: https://twitter.com/inu_beer
大河 紀 さん
SNSアカウント: https://twitter.com/nori_okawa
中村 篤史 先生
目次
犬を飼うのは初めての私でも幸せにしてあげられる子を探して。たどりついたのが、コッカプーのビールでした。
こんにちは、今日はよろしくお願いします。コッカプー、ほんとかわいいですよね。ちっちゃい頃がまたむちゃくちゃかわいい。
うちに来たときは3ヶ月くらいで、本当に小さくてかわいくてどうしようかと(笑)。そこから日に日に大きくなり、すくすくと育ちました。
特に、コッカプーに愛着やこだわりが?
いえ、犬種のこだわりはなくて。ただ、犬と一緒に暮らしたいと思っていたので、いろんな犬種の特徴を調べながら「初心者の私でも幸せにしてあげられる子は、どの子だろう」と悩みました。そんなときに、色々と探して見つけたブリーダーさんのところでビールと出会って、もうこの子しかいない!と思いましたね。
アメリカン・コッカー・スパニエルのフレンドリーな気質を受け継いでいるコッカプーはとても人懐っこく、犬を飼うのが初めての方にもおすすめの犬種ですね。色々調べておられるのでご存じかもしれませんが、目と耳の病気に気をつけてあげてください。
ビールくんは涙やけもなく目もきれいだし、耳も今のところ大丈夫ですが、垂れ耳のコッカーは耳垢が溜まりやすく、特に湿度と気温が高くなる夏場は、マラセチア菌が増殖して炎症を起こしやすいので要注意です。
時々、耳を持ち上げて蒸れないように乾かしたり、トリミングのときに耳のお手入れをしてもらっているのですが…。自宅でチェックするときのポイントはありますか?
そうですね。「耳を掻く回数」と「耳の粘膜の色」、「耳垢の匂い」がポイントです。酸っぱい匂いがしたら炎症のサイン。今、ビールくんの耳の粘膜は薄いピンク色で大丈夫ですが、白っぽくなると要注意です。目は痛がったり、かゆがったりする仕草がないか、角膜の表面が凸凹していないか、しっかり見てあげてくださいね。
食事の量、与えてよいもの・ダメなもの。ネット情報ではわからない「うちの子」の適正が知りたい!
食べる量について
フードは基本1日2回なのですが、1日1食しか食べない日もあって、生まれつき食が細いのが気になります。与えている量はフードの適正量より少なめなので、大丈夫なのか…。
なるほど。普段、食事はどんなフードを与えていますか?
ドライフードをふやかして、おやつをトッピングして食いつきをよくしています。
ビールくんの体格・骨格を触って見たところ、痩せすぎでも太りすぎでもなく、ベストな体型です。フードの適正量は必ずしもその量を与えなければいけないわけではなく、あくまでも目安。基準より少なくてもビールくんの体重と体格、健康が保てていれば心配することはありませんよ。きっとビールくんは、自分で考えて、ちょうどよい量を食べているんですね。もし、栄養とカロリーが不足していたら、背骨・あばら骨を触った感じでわかりますから。
そうなんですね!ちゃんと自分でコントロールしていたなんて驚きです。そうすると、これ以上食べさせると太ってしまうかもしれないですね。フード以外には、サツマイモとヨーグルトなどを日常的に与えていますが、それは大丈夫ですか?
与える量に気をつけて適量であれば、食物繊維が豊富なので腸内環境によいですね。ただ食べ過ぎると食物繊維が胃で膨らんで、お腹にガスが溜まりやすくなります。ヨーグルトは、牛乳に含まれる乳糖がダメな犬、下痢になる犬も多いので、食べさせてお腹がゆるくならないようなら、腸内フローラを整える乳酸菌が摂取できるのでOKです。
- ・食べる量は個体差あり。体重、体調に問題がなければ、それがその子の適正量。
- ・どんなによい食べ物でも、与えすぎは禁物です。
よい食べ物・ダメな食べ物について
下痢といえば、一度「ナマズ」のフードにすごく興味津々で、食べさせたらお腹を下したことがあります。「ナマズ」がダメな犬もいるんですね?
基本的には、どんなによい食べ物も、食べ過ぎると具合が悪くなるのは人間と同じです。ナマズや鹿肉・馬肉というのは、豚・鶏・牛肉に比べて比較的にアレルギーが少ないので療法食に使用されるほど、よい食べ物ではあります。ただ食べる量が問題になる場合もあるので、見極めは難しいですね。おそらくビールくんの場合は、今まで食べたことのないたんぱく質に体がびっくりして、下痢になったのかもしれません。
なるほど、そうかもしれません。
「犬によい食べ物・ダメな食べ物」はよく聞かれますが、よいか・ダメかは、“答え合わせ”なんですね。その子に合っているかは、与えた後の体調を見て判断するしかない。それを見極めるポイントの1つが「便」です。
今まで与えたことがない食材をあげたときは、次の日の「便の色」「硬さ・柔らかさ」「匂い」をチェックして、どんなによい食べ物でも、異変があれば与えるのをやめるのが正解。ビールくんは元々食が細いので、高齢になったときに食欲が落ちても「これなら食べられる!」という好物探しはしておいた方がよいですね。
好物探しですね!ビールは野菜や果物にはほとんど興味のない、完全肉食系です。一番の好物は砂肝のジャーキー。それも食べ応えのあるソフトタイプがお気に入りで。
犬は好きですよね、ジャーキー(笑)。ソフト系のおやつは、奥歯に歯垢が溜まりやすかったりするので、頻繁に与えるようなら、歯のお手入れもしっかりしてあげてくださいね。
与えた食べ物がその子に合っているかは、翌日の「便の色」「硬さ・柔らかさ」「匂い」を見て、見極めるべし!
お散歩の運動量について
毎日2回、80~100分くらいお散歩しますが、ひたすら探偵のごとくクンクン嗅ぎ回っている時間が長いだけで、1km程度しか歩いてない。この子は、こんな運動量で大丈夫ですか?
犬にとって外の匂いを嗅ぎ分ける行動は、いわば情報収集。例えば、犬が鼻を使って食べ物やにおいを探し当てるノーズワークは、歩くことと同じくらい頭を使うので、かなりのエネルギーを消費していることになるんです。
歩いてなくても、ちゃんと頭の運動していたんだ!?
犬の知育に関する研究では、犬を思いっきり走らせるより、頭を使うトレーニングをさせた方が疲れてぐっすりと眠る。睡眠時間も長くなるという実験データもあります。歩いている距離は短くても、ビールくんは頭を使うことで十分エネルギー消費できているはずですよ。その他に、お散歩中の様子はどうですか?他の犬に吠えたりはしないですか?
吠えて威嚇することはあまりないですけど、仲良くするかと言えばそうでもない。程よい距離でスルーみたいな(苦笑)。人には飛びついて寄っていくほど大好きなのに、他の犬にはさほど興味がないみたいで、とにかく人間が大好きです。
お悩み相談室 前編は、ビールくんと大河さんが気をつけたいポイントや気がかりだった食べる量や運動量について、中村先生にアドバイスをいただきました。「適正量より少なくても自分にちょうどよい量を食べている」「歩いてなくてもノーズワークでエネルギーを消費している」など、目からウロコの中村先生のお話に驚きつつも、ひと安心の大河さんでした。
後編では、ビールくんのやんちゃキャラ炸裂のバズり投稿を見ながら、獣医師の視点からいろんなアドバイスをいただきます。次回もお楽しみに!