犬の死因の上位に上がる腎臓病。加齢とともに徐々に腎臓機能が衰えていく慢性腎臓病は、7歳以上のシニア期の犬では決して珍しくない病気の1つです。今回はすべての犬オーナーさんが気がかりな犬の腎臓病について、その症状や治療法、気をつけるべき食事や療法食のお悩みまで、獣医師の布川先生に解説&アドバイスいただきます!
布川 智範 先生
・日本獣医がん学会 獣医腫瘍科認定医Ⅱ種
・一般社団法人犬・猫の呼吸器臨床研究会
犬の腎臓病ってどんな病気?
ずばり教えて、布川先生!
腎臓病は猫のイメージがありましたが、犬も多い病気なんですね。
腎臓病とは、どんな病気なんですか?
腎臓病は、腎臓機能に何らかの障害がある病気の総称で、大きく「急性腎臓病」と「慢性腎臓病」の2つに分けられます。
「急性腎臓病」は、感染症や誤食などによって数時間から数日のうちに急激に腎機能が低下する状態のこと。「慢性腎臓病」は何かしらの基礎疾患によって腎臓へのダメージが蓄積し、腎機能の低下が3ヶ月以上見られる状態を指します。
「急性腎臓病」は救急治療によって回復する余地はありますが、急激なダメージを受けたことで慢性腎臓病に至るケースも少なくありません。
とても怖い病気ですね……。
犬は腎臓が悪くなると、体にどんな影響がありますか?
腎臓病の症状
- ●急性腎臓病:尿が作れないため、おしっこの量が減少~出ない、嘔吐、脱水、下痢、痙攣など緊急性の症状
- ●慢性腎臓病:多飲多尿、食欲低下、嘔吐、体重減少、貧血による元気低下などの症状
腎臓病を早期発見するために、
私たちがチェックできる腎臓病のサインはありますか?
慢性腎臓病の症状には「嘔吐」や「食欲不振」があげられますが、特にチェックしてほしいのは「1日の飲水量」「おしっこの量・回数」「日々の体重」。腎機能が低下すると尿の濃縮力が低下し、水を飲む量とおしっこの量・回数が増加。どんどん水分が抜けていくので、そのぶん体重も減少します。
犬の場合、おしっこの量を把握するのは難しいと思いますので、まずは飲水量をチェック!可能なら、ベビースケールなどで体重を記録しておけると良いですね。体重は1ヶ月に5~10%が減少すると危険信号と覚えておいてください。
慢性腎臓病のサイン
- 1日の飲水量が増える
- おしっこの量・回数が増える
- 体重が減る
深掘れ!わんわんアドバイス その1
危険な飲水量の目安は、「体重kg×100cc」
犬の多飲症状の目安は「体重×100cc」。例えば、3kg程度の小型犬なら300ccが目安になります。飲水量をチェックする際は、決まったペットボトルや計量カップを利用するすると、愛犬が1日にどれくらいの量の水を飲んでいるか?ひと目でわかります。
もし愛犬が慢性腎臓病になってしまったら……。
どんな治療方法があるのでしょうか?
一度ダメージを受けた腎臓を再生することは難しいため、いかに腎臓の負担を減らし、腎機能を温存できるか?それが慢性腎臓病の治療になります。そのため慢性腎臓病の治療は、腎臓に負担をかける「たんぱく質」「リン」を制限する療法食が基本。療法食を続けた子は、続けなかった子に比べて、およそ2倍近く長生きできる研究データもあり、顕著な効果が期待できる治療方法です。
深掘れ!わんわんアドバイス その2
元気なうちからお薬に慣れる習慣を!
食欲がない場合、慢性腎臓病の食事療法は点滴などで体内のバランスを整え、療法食を食べられる状態まで引き上げることからはじまります。腎臓病に限らず、日頃からサプリメントなどでお薬を飲むトレーニングをしておくことは、とても大切です。その上で、腎臓を保護する薬も継続して服用できると、より進行を遅らせることができます。とはいえ、薬を飲むのを嫌がる子がいるのも事実。その際は飼い主さんもストレスなく、その子にとってベストな治療法を獣医師と一緒に考えていけるといいですね。
愛犬のために、少しでもリスクを下げたいです。
慢性腎臓病はどうすれば予防できますか?
まずは、日頃の食事について気にかけてあげることが大事だと思います。ライフステージに合わせたバランスの良い食事を選択することが大切で、製品に犬の栄養基準を満たしている表記があるものを選びましょう。特にシニア期は慢性腎臓病に罹患しやすいため、「たんぱく質」「リン」の過剰な摂取は気をつけたいです。高たんぱくな肉類やリンが含まれる乳製品を頻繁に与えないよう気をつけること。また、塩分が多く含まれている人間の食べ物は与えないことが大切です。
また、歯周病は腎臓病のリスクファクターとして深く関係しているので、動物病院での定期的な口腔ケアをオススメします。
今回は、すべての犬オーナーさんが知っておきたい犬の腎臓病の基礎知識を教えていただきました。次回の食事編では、慢性腎臓病の愛犬の療法食にまつわるオーナーさんのお悩み&質問に布川先生がお答えします!