“うちの子のお医者さん”として身近に頼れる獣医師であり、犬や猫の心臓病の専門医として様々な病院で治療にあたる木﨑皓太先生。心臓の病気は無症状の期間が長いため診断されたときには手遅れというケースも。だからこそ早期発見、早期治療のために重要なことは、ご家族の話を深く聞くこと。そこから病気発見の糸口が見つかるという。コミュニケーションを大切に、その家族の思いに応える最良の治療を導き出す木﨑先生の思い、目指すべき動物病院のあり方について語っていただきました。
木﨑 皓太 先生
一般社団法人LIVES理事。
目次
祖母の猫の通院をきっかけに病院でアルバイト。
動物を診る難しさとやりがいを知り、獣医師を目指す。
獣医師、そして循環器の専門医となったきっかけをお聞かせください。
中・高時代はイギリスで学んでおり、文系の教科、例えば、国語にあたる「英語」や「歴史」は語学力にハンディがあったため、学校では言語の壁が少ない理系を専攻していました。祖母が猫を飼っていたこともあり、幼い頃から動物は好きでしたが、当時は遺伝子研究か医学の道に進もうと。そんな折に、日本に一時帰国したのですが、そこで祖母が飼っていた猫が糖尿病で動物病院に通っていることを知って、獣医師という仕事に興味を持ちました。
その動物病院で1ヶ月間、アルバイトをさせてもらったのですが、そこで様々な病気やケガに苦しむ動物たちを診る獣医師の存在の大きさを実感し、小動物の臨床医になるために北海道大学獣医学部に進みました。卒業後は、一般診療の動物病院に勤めながら、休日には循環器の専門病院で研修を続けました。X線検査や超音波検査など機器を使った診断技術を磨くことも重要でしたが、特に、聴診で心音を評価し、触診で心臓の動きや脈を感じ取り、心臓の状態と体全体の状態を結びつけて把握することの大切さを学ばせてもらったことは、循環器医として何より大きな経験になっています。
一般診療の獣医師でありながら、さらに循環器の専門医になる必要性を感じられたのはなぜですか?
どこが悪くてこんな症状が現れているのか?どうすれば治るのか?ご家族が切実に知りたいことに100%答えられないときほどつらいことはありません。だからこそ、この分野だけは自信を持って「任せてください」と言える専門分野を持ちたいと研修医時代から思っていました。
また専門医であれば、他の専門分野の先生と連携しやすい。僕自身も学会や獣医師のネットワークで知り合った獣医師の方々から、うちの病院で心臓病の専門診療を行ってほしいと頼まれることも多く、現在もいろいろな病院で出張診療を行っています。特に心臓病のペットは、専門病院へ連れて行くだけでも負担になることもあり、できるだけ自宅近くの病院で診察できるように、これからも出張診療は積極的に行っていくつもりです。
もちろん、僕の病院でも様々な分野の専門医に来ていただいています。高度な検査が必要な場合でも、いつもの動物病院で専門的な治療を受けることができれば、それはペットのご家族にとって何より安心なことだと思っています。
飼い主ひとり一人の思いに応えるために。何でも話せる居心地のいい病院だからできる「オーダーメイドの治療」。
先生の病院の特徴、日々の診療で心がけていることなどをお聞かせください。
一般診療と心臓病の専門的治療をひとつの病院で受けられることは病院の大きな特徴ですが、いずれの診療でも、常に心がけているのはご家族の話をじっくり聞くこと。問診票に書かれていること以外にも、気になることをざっくばらんに質問していくことで、ペットの性格や好み、家族構成やライフスタイルがわかります。例えば「1日3回決まった時間に薬をあげてください」といっても、仕事や生活パターンによっては無理な場合もある。だからこそ、ご家族の生活環境を知った上で最良の「オーダーメイド治療」を提供すること。それが、僕の病院のモットーです。
ご家族とのコミュニケーションは、診断や治療にどうつながりますか?
診察には直接関係ないような雑談も、病気の早期発見につながるヒントになることがあります。獣医師に伝える必要がないと思われている些細なこと、単なるクセだと見過ごしていることに、病気の原因が隠れていることも。
特に、心臓病は症状が現れるまでの期間が長いので、一緒に暮らしているだけでは気がつかない間に進行してしまっていることもある。だからこそ、普段から動物病院に通っていただきやすいようにご家族の話を聞くこと、何でも遠慮なく話しやすい病院であることは、早期発見・早期治療のために絶対必要なことだと思います。