フィラリア症は、最悪の場合には愛犬の命に関わることもある病気です。とはいえ、普段の診察ではじっくり聞けないことも多いはず。「意外と聞けないフィラリア予防のQ & A」では、フィラリア予防の疑問・質問に、大相模動物クリニック院長の村上彬祥先生にお答えいただきました。
村上 彬祥 先生
目次
教えて!村上先生「こんなときどうすればいい?」
「うちは高層マンションだから大丈夫」。蚊は入って来ないと思いますが?
Answer
マンションの高層階に住んでいても蚊に刺されるリスクはあります。蚊は「ビルの3~4階までしか行けない」そうですが、エレベーターなどを経由して高層階まで移動できてしまうんです。中には、フィラリア感染を恐れて「散歩に行かない」と言う飼い主さんもいますが、高層階でも蚊がくる可能性はありますし、健康の面から「散歩には行った方がいい」と伝えています。
フィラリア症の薬にはどのような種類がありますか?
Answer
薬は大きくわけて4種類。錠剤タイプ・チュアブルタイプ・スポットタイプ注射タイプです。
錠剤タイプ
風味付けのタンパク源を使用していないものなら、食物アレルギーの犬にも安心して使えます。また、チュアブルタイプより小さい錠剤もあるので、ティーカッププードルなどの超小型犬にも使いやすいですね。
チュアブルタイプ
投薬のしやすさが特徴で、おやつのような味や形で投薬しやすく、大型犬にも使いやすいですね。ただ、ごはんに入れてあげる場合は、残してしまうと投薬効果が薄れてしまうので、決まった量をすべて食べたか確認が必要。犬種の特性やアレルギーによって使用できない場合もあります。
スポットタイプ
背中に滴下するタイプの薬で、薬を飲まない子にも使えます。ノミの予防も同時にできますが、価格は少し高め。アルコールを含むタイプは、その刺激で皮膚が過敏反応を起こす場合もあります。
注射タイプ
アメリカでよく推奨されています。特徴は予防効果が1年続くので、1年に1度投薬すればいいということ。錠剤・チュアブル・スポットは1ヶ月に1度投薬する必要があるので、注射タイプなら投薬忘れは防ぎやすいですね。
フィラリア予防の薬と併用してはいけない薬はありますか?
Answer
はい。薬の種類によりますが、体内のP糖蛋白というタンパク質を阻害してしまう薬との併用には気をつけてください。たとえば、皮膚真菌症の薬・イトラコナゾールがそうですね。また、ノミ・マダニ用の薬成分であるスピノサドなどと併用すると組み合わせによっては中毒になる報告もあるので、注意が必要です。病気で服薬中の子はかかりつけの先生に相談をして、安全性が高いものを処方してもらうことをお勧めします。
「病気ではないけど、愛犬の体調が悪そう」という場合も、通常時と同じように予防するべきでしょうか?
Answer
まずは体調を治しましょう。フィラリアの検査で病院に来られた方で「ワンちゃんの調子が悪い」という飼い主さんには、フィラリアの検査と一緒に健康診断などもお勧めしています。フィラリアの検査と健康診断の結果が出てから、対策を一緒に考えます。
慢性的な病気から消化不良や下痢などの症状が出ている場合には、薬が上手く吸収されず、投薬の意味がなくなってしまうこともあります。
投薬を忘れてしまった場合、どのように対応すればいいですか?
Answer
1週間程度のズレであれば服用しても基本問題ありません。ただ、夏以降の場合は、フィラリアの成長速度が速くなることがあるので、少し怖いですね。投薬自体は続けて、来年の検査で感染してないかを抗原検査も含めて確認してください。毎月投与タイプの薬を5~6ヶ月忘れてしまったら、すでに成虫が寄生している可能性があり、知らないで予防薬を飲んでしまうと副反応がでることがあるので、投薬を再開する前に必ず検査をしましょう。
去年の薬が残っているから、足りない分だけ処方してもらいたいです。
Answer
投薬し忘れてしまった分の薬は、使用期限が残っているなら翌年の投薬に使っても大丈夫です。ただし、去年の薬があるということは、投薬が抜けているということなので、検査は必須ですね。
村上先生からのメッセージ
「フィラリア予防は必要なんですか?」と飼い主様から聞かれたとき、よくお話しすることがあります。「予防をするかしないかは任意ですが、フィラリア症は心臓病を引き起こして、最悪のケースでは命を奪ってしまう怖い病気。でもしっかりと1ヶ月に1回薬を投与すれば、ほぼ防げる病気」ということ。
さまざまな怖い病気の中でも、フィラリア症は数少ない予防できる病気です。ワンちゃんが元気に過ごせるように、定期的にホームドクターとコミュニケーションをとりながらぜひ予防を続けていってください。