動物病院やペットの情報サイトなどで見かける「ノミ・マダニ対策」。「うちの子は室内飼いだから大丈夫」と思っている人も、油断は禁物!ノミやマダニは思いもかけない経路から侵入して、ペットの体や生活環境に潜んでいることもあるのです。そこでノミ・マダニの生態や、それらによって引き起こされる病気、そして対策法について、オシャペットクリニック院長の高木俊輔先生にお聞きしました。今回は【ノミ対策】について詳しく解説します。
高木 俊輔 先生
目次
ちゃんと知っていますか?ノミのこと
まずはノミの見た目や生態について、改めて教えてください。
ノミは光沢のある褐色で扁平な体を持つ、体長1~2mmの小さな昆虫です。成虫は高いジャンプ力を持っているため、近くにいる哺乳類や鳥類に飛び移り、寄生することがあります。
一般的に気温が13度を超えると活動をはじめるとされています。地域差はありますが、関東圏だと4月頃から活発になり、7~9月が最盛期と考えられています。室外では直射日光の当たらない草むらなどに、室内では床やじゅうたんなど暗く湿ったところを好んで生息し、卵から幼虫、サナギ、成虫へのライフサイクルを経て、繁殖していくことがわかっています。
ノミの成虫は視認することができますが、ペットの毛の中に隠れてしまうと、見つけることが難しいうえに、実は目に見えているノミは全体の5%程度と言われています。そのため一度ノミが室内で繁殖し始めると、駆除するのはなかなか大変になってしまうんですね。
実際に、ノミに寄生されたときのペットの様子はどうなりますか?
ノミは生物の体に寄生して血を吸いながら成長・繁殖しますが、一度刺された程度ではそれほど痒みはありません。ただ大量のノミに長期にわたって吸血されると、ノミの唾液にアレルギー反応を起こして、少し刺されただけでも痒みが増幅します。頻繁に体をかいたり、地面に体をこすりつけたり、いつもと違うしぐさを見せるようになったら要注意。かきむしった箇所から細菌が入り、化膿や脱毛に至ることも。黒い砂粒のようなノミの糞が毛の間などに見られることもあるので、ブラッシングの際などにチェックしましょう。
ノミについて知っておきたい3つのポイント
- 1. 体長1~2mm、光沢のある褐色で扁平な体を持つ昆虫である
- 2. 室内外に1年中生息するが、気温13度を超えると活発になる
- 3. 大量のノミに刺されることで、アレルギー症状を引き起こすこともある
冬でも暖房の効いている室内はノミの温床に。一度繁殖すると完全駆除には時間がかかるので、見つけたらいち早く対策したいですね。
皮膚炎だけじゃない!ノミが原因で起こるペットの不調とは
皮膚炎以外にも、ノミがペットの体に悪さをすることはありますか?
大量のノミに吸血されると、特に子犬や子猫は貧血を起こす恐れがあります。またノミには瓜実条虫(サナダムシ)が寄生していることがあり、グルーミングなどで体内に取り込まれると小腸に寄生します。それによって、下痢や嘔吐などの消化器症状を起こしたり、瓜実条虫のかけらが排せつの際に肛門周辺に付着すると、痒がってお尻を床にこすりつけたりします。
ノミだけでも大変なのに、寄生虫がいることもあるんですね。
そうなんですよ。ペットのノミを発見したときに手でつぶしたりすると、周囲に瓜実条虫の幼虫まで拡散させてしまうことになるので、絶対にやめてくださいね。室内用の殺虫剤か、スチームクリーナーで空間駆除することをおすすめします。
ペットにノミを寄生させないためには、どういう方法がありますか?
ノミの寄生を発見したときは、まずはシャンプーがおすすめです。ペット用シャンプーで複数回洗うことで、毛の中に潜んでいる卵など大部分は落とせます。そのうえでペット用のノミ駆虫薬を使用してください。駆虫薬には、飲ませるタイプの経口剤と、滴下タイプのスポット剤があり、価格は薬の種類や病院によって変わりますが、スポット剤の方が安価な場合が多いですね。それぞれにメリット・デメリットがあるため、愛犬・愛猫に合ったものを選んであげましょう。
経口剤
- ・メリット :食べて駆除が確実にできる。シャンプーのタイミングに関係なく使用できる。
・デメリット:アレルギーがあると使えない場合がある。食べないことがある。
スポット剤
- ・メリット :皮膚に垂らすだけなので投薬が簡単。比較的安価。
・デメリット:滴下部分がベタついたり、薬液が垂れたりすることがある。使用後数日はシャンプーができない。
スポット剤を使うときは、ワンちゃんも猫ちゃんも、グルーミング時に滴下部分を舐めてしまう恐れがあるので、届きにくい首すじから肩あたりにつけるのがポイント。また、ワクチンを打った場合、当日から数日間は、駆虫薬の投薬はお休みするようにお伝えしています。それは、万が一体調不良が起きたときに、どちらが影響したかわからなくなる事態を防ぐためです。