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ペットと家族を笑顔に。獣医師が見た、動物専用の義足&コルセットがもたらすペットライフへの可能性 ②

ペットと家族を笑顔に。獣医師が見た、動物専用の義足&コルセットがもたらすペットライフへの可能性 ②

 
  • 島田 旭緒
  • 上野 弘道
      

目次

義肢装具が支える、人とペットの幸せな生活

義肢装具を付けることで、動物だけでなく、オーナーの生活も変わりますか?

上野先生

もちろんです。例えば、島田さんが動物の義肢装具を作るようになるまでは、固定が必要な場合は、獣医師が症例ごとに専門知識をもってテーピングを巻いていたんです。それが外れてしまった時は、オーナーさんに来院してもらって獣医師が巻き直すか、適切な固定はできないながらも自分で巻くしかありませんでした。でも、島田さんの義肢装具ができたおかげで、適切な固定がオーナー自身の手でできるようになった。それだけでも、まず大きな生活の変化だと思いますよ。

島田さん

そうですね。私たちも製作時には、その子の性格や生活、オーナーさんがどんな希望を持っているか、どんな生活を望んでいるかなどを必ず伺うようにしています。装着を担うのはオーナーさんなので、オーナーさんの負担になる装具だとダメなんですよね。

上野先生

ペットとオーナーさんを両方幸せにする装具でないと、ということですね。

ペットとオーナーにとって、義肢装具の役割とは?

島田さん

JIS(日本産業規格)でも定められている通り、装具は、「機能障害の軽減を目的として使用する補助器具」です。治療やリハビリテーションに用いられることももちろんありますが、「装着するだけで治療ができる道具」ではないので、そこは誤解しないでほしいと思っています。

上野先生

そうそう。義肢装具の主な役割は動物たちの生活の質、QOLを向上させることであり、それがオーナーさんの幸せや生活の質の向上につながる、ということなんです。

島田さん

義肢装具を付けることで、立ち上がることができなかった子が立ち上がって歩けるようになることはありますが、「装具があれば大丈夫なんだ!」とオーナーさんが考えてしまうのは危険。まず第一に考えるのは病院での治療です。何らかの要因で、それが難しい時の選択肢として、義肢装具があると私は考えています。

上野先生

そうですね。その子のためにも、病院で治療ができるならば治療をしてあげるのがベストです。まず獣医師がきちんと診断して治療の可能性を探り、麻酔のリスクや治療をしない場合のリスクなどをふまえて、義肢装具という選択肢を考え始めるべき。治療の余地があるのに、オーナーさんが「うちの子には義肢装具を付けたいです」と安易に選択することは、避けていただきたいと思います。

義肢装具を作るためには、獣医師の診断が必要不可欠

島田さんは、獣医師からの依頼以外は受け付けていないということですが、それはなぜですか?

島田さん

先ほどもお伝えしたように、義肢装具は獣医師の正しい診断の上で選択されるべきものだと考えているからです。
最近ではネットショップでもペット用コルセットが扱われていますが、価格や手軽さからそういったものが選ばれることに危機感を覚えています。義肢装具は洋服などのペットグッズではないんです。体に合ったものでないと意味がありませんし、余計にペットに負担をかけてしまうことにもなりかねません。

上野先生

その通りですね。まずは獣医師が診断して、義肢装具が適応するかどうかを判断する。その上でその子に適したものを島田さんに作ってもらったり、既存の商品から選んだりして初めて意味があるのだと私も思います。

島田さん

動物の義肢装具は、個々の症状やオーナーさんの要望、獣医師の先生の判断をもとに製作するので、ある意味とても面倒で手間がかかります。でも、その過程こそが一番大事なんです。

義肢装具は、獣医師と義肢装具士との信頼関係のもとに製作されているのですね。

島田さん

そうですね。獣医の先生との連携は不可欠です。信頼関係がなければ、適切な装具を製作することはできません。

上野先生

獣医師だけでは十分に手が届かない領域を、島田さんがサポートしてくれているという感覚です。僕たちの診断やリクエストなど獣医学的な見地を、島田さんが装具にしっかり込めてくれているんですよね。オーナーさんにとっても、選択肢が増えることで、どうしても悲観的になってしまう病気やケガなどの場面でも、望みを持てるようになるのではないでしょうか。
現在、オーナーさんがペットのために、こういった義肢装具を選択することができるのは、島田さんの登場のおかげです。時代を追うごとに人と動物の絆は強くなり、「何としてもこの子を助けたい」「この子に4本脚で生活させてあげたい」と強く願うオーナーさんも増えてきました。この思いに応えることができるのが、島田さんの仕事なんです。

島田さん

なんだかもったいない言葉をいただいていますね(笑)。でも確かに、上野先生のおっしゃる通り、義肢装具のニーズが高まっている背景には、家族の一員として、ペットにより深い愛情をかけるオーナーさんの存在があります。その思いには応えていきたいですね。

知ってほしい!ペットのための義肢装具のPoint

  • ●義肢装具はペットの快適な暮らしを実現するための選択肢のひとつ
  • ●義肢装具製作は、獣医師の診断に基づくことが大前提
  • ●それぞれのペットの症状・状態に合わせた装具選択やオーダーメイドが、義肢装具の基本
  • ●義肢装具は、四肢が不自由なペットとオーナーの生活の質を上げる手段になる

ありがとうございました!最後に、ペットオーナーさんへメッセージをお願いします。

上野先生

すべての治療において、主人公は動物とご家族様です。獣医師の診断がベースとなることは間違いないのですが、義肢装具の存在、そして島田さんの存在を知っていただくことは、ペットのQOLを考える上で大きな意味があると思います。

島田さん

装具を付けることで動物たちが快適に過ごせるようになり、オーナーさんが喜んでくれること。さらに、装具を処方した獣医の先生も喜んでくれること。それが私たちの喜びです。
今後も義肢装具製作の技術や経験をさらに積み重ね、そのグッドスパイラルを回すお手伝いを続けたいと思います。

上野先生

島田さんは、チャレンジ精神を常に持ち、義肢装具をより良くしていこうという思いを持ち続けている人。職人としての情熱と高い技術力で、まだまだ薄暗い動物のための義肢装具の世界を照らしていってほしいですね。

動物専用の義肢装具づくりに力を注ぐことで、ペットとオーナーの生活をより明るく楽しいものにしようとしている島田さん。その活動を応援し、ペットとオーナーによりよい生活、ベストな選択を提示したいと考えている上野先生。今回は、動物専用の義肢装具について深く知るとともに、二人の熱い思いに触れることのできる対談となりました。
今後はどんな動物たちの、どんな義肢装具が誕生していくのか。動物専用義肢装具の世界はまだまだ広がっていきそうです。

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