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【獣医師×ペットケアマネージャー対談③】シニア犬の介護「こんなときどうする?」

【獣医師×ペットケアマネージャー対談③】シニア犬の介護「こんなときどうする?」

 
  • 向後 亜希
  • 平端 弘美
      

人間と同じようにワンちゃんたちにも「高齢化」の波が押し寄せ、いかに「健康寿命」を延ばせるかが大きな関心事になっています。そこで、高齢犬の診療も多く行っている獣医師の先生と、実際の介護や老化予防を実践・アドバイスしているペットケアマネージャーによる対談企画を実施。第3回は、シニア犬と長く元気に暮らすためのケア・介護について、「大型犬・小型犬ごとのケア・注意点」「犬の認知症」「シニア犬との一人暮らし」をテーマに実演レクチャーも交えながらご紹介します。

前回記事をチェックしていない方はこちら!【獣医師×ペットケアマネージャー対談②】プロに教わる「シニア犬の介護ハウツー」

プロフィール

向後 亜希 先生

こうご動物病院院長、獣医師。聖心女子大学心理学科を卒業後、獣医師を目指し酪農学園大学獣医学科に編入学し、卒業。埼玉県や東京都内の動物病院で勤務医や院長を経験し、2009年に東京都多摩市に「こうご動物病院」を開業。西洋医学をベースに鍼灸治療や自然療法なども取り入れた総合医療を実践している。著書「かけがえのない家族を守る 動物病院との最高の付き合い方
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プロフィール

平端 弘美 先生

Japanペットケアマネージャー協会認定ペットケアマネージャー。犬好き主婦からドッグトレーナーを目指し、研鑽を積んで2014年にしつけ教室を開業。その後ペットケアの資格を取得し、多摩地域を中心にシニア犬の訪問介護・整体・リハビリなどを行う。元々こうご動物病院の患者さんでもあり、現在は同院でセミナー開催や老犬ケアを担当している。ホームページ:https://hellodoggie.info/
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目次

シニア犬のケア・介護(1)
「大型犬・小型犬ごとのケア・注意点」

犬種や体のサイズによって老化の症状や注意点は異なるのでしょうか?注意すべき点や陥りやすい症状などがあれば教えてください。

向後先生

大型犬と小型犬でだいぶ違うかなと思います。大型犬は小型犬に比べて老いのスピードが早く、飼い主さんは気づいていないというケースがよくあります。症状としては、大型犬は体が大きいぶん、「腰」や「股関節」を悪くする子が少なくないですね。
小型犬の場合は、口の問題が圧倒的に多い。特に「歯周病」は若いうちからケアすれば予防できるので、シニア犬に限らず、普段から注意してほしいポイントです。歯が悪くなって、ご飯が食べられないのはかわいそうですし。そうなると麻酔をかけて治療しなければならないので。

説明する女性獣医師

平端先生

大型犬は8歳ぐらいから高年期、12歳ぐらいから老年期と言われ、寝たきりになるのも早いので、若いうちから筋力トレーニングを行うことが大切です。
また大型犬は温厚な子が多く、ケア自体はしやすいのですが、体が大きいため介護する人の負担が大きいという側面もあります。日中、愛犬の世話はお母様がみられているご家庭も多いと思いますが、体位交換など、女性には大変な場面がある、ということは知っておいてほしいですね。
小型犬のお世話は比較的にラクですが、性格的に気が強かったり、触られるのを嫌がる子が多かったりします。温厚そうに見える柴犬や甲斐犬などの中型犬も、ワンちゃんによっては急に噛んできたりする子もいますから、子犬の頃からマッサージをするなど、体に触れることに慣れさせておくと良いですね。

向後先生

年齢を問わず犬種によって罹りやすい病気もあります。そうした病気はシニアになると症状が出やすくなるので、かかりつけの先生に事前に聞いておいた方が良いかもしれません。

シニア犬のケア・介護(2)「犬の認知症」

飼い主さんにとって「認知症」は大きな心配事の一つだと思うのですが、予防の面で、若いうちからできるトレーニングやおすすめのケアはありますか?

向後先生

ワンちゃんが歳をとって一緒に出かけることが減ったという方もいますが、やっぱり暇だと認知症になりやすい。刺激は必要だと思いますね。歳だからといって、外出する機会を減らすのではなく、たまには日常ではないところに出かけて、刺激を与えることも必要です。

ぬいぐるみをもって説明するペットケアマネジャー

平端先生

例えば、「ジョギング」「脳トレ」「気になる異性と接する」。これらは人間の認知症予防に良いと言われているものです。犬に置き換えてみると、ジョギングは適度な運動。脳トレは、知育トイなどのおもちゃで代用できます。気になる異性と接するというのは、他の犬に会わせたり、目標を達成できたら特別なおやつをあげたり、異性に限らずドキドキすることがあると脳の刺激になります。今はサプリもあるので、食事面のケアも含めて、日々予防してあげると良いと思います。

CHECK POINT認知症の現れ方

  • 1. 無気力になる・呼びかけに反応しない・好きな遊びに興味を示さない
  • 2. 前に突進して、バックできない
  • 3. 右旋回・左旋回のみを繰り返す
  • 4. 意味もなく、単調な声で鳴く
  • 5. 食欲が旺盛過ぎる
  • 6. 昼夜が逆転してしまう

*単調な声で鳴くのは体に痛みがあることが原因の場合や、昼夜逆転は体内時計が狂っていることが原因の場合もあるため、認知症を疑う前にまずはかかりつけ医に相談しましょう

Lecture平端先生の実演レクチャー<認知症予防編>

犬の認知症予防に、脳トレをはじめよう!

じゃんけんしている柴犬

じゃんけんゲーム
じゃんけんゲームとは、「お手」「おかわり」「待て」をグーチョキパーで行う犬の脳トレ。「お手」のときはパー、「おかわり」はチョキ、「待て」はグーで指示を出し、ワンちゃんが覚えたら、徐々にスピードアップします。難しく感じるかもしれませんが、できる・できないではなく、犬と飼い主さんが一緒に楽しみながらやるのがポイント。

布とプラスチックの知育トイ

おすすめの知育トイ
自分の鼻や手を使ってフードを探す知育トイやノーズワークマットも認知症予防に効果的。犬の好物を隠しておくことで、楽しく遊びながら脳トレができます。

知育トイで遊んでいる柴犬

飼い主さんとのスキンシップも、立派な認知症予防!

マッサージをうけている柴犬

口の端に指を引っ掛けて広角を上げる「広角マッサージ」。マッサージやスキンシップは体をほぐすとともに、犬を安心させてリラックスさせる効果があります。優しい声で話しかけながら笑顔で行うと、一層効果的です。

シニア犬のケア・介護(3)「シニア犬との一人暮らし」

一人暮らしの方や日中は家を空けることが多く、シニア犬に留守番させるのは心配という方もいると思います。そういった方にアドバイスできることはありますか?

説明する女性獣医師とペットケアマネジャー

向後先生

こうご動物病院では、日中の預かりを受け付けています。動物病院であれば、その子の性格やお世話の仕方をある程度は理解していますから、シニア犬に留守番させるのは心配という方は、かかりつけの先生に相談してみてください。高齢犬も増えているので、そうした対応をしてくれる動物病院も増えていると思いますよ。

平端先生

預かりのある動物病院はもちろん、犬の介護施設を利用してみるのも良いかもしれません。そうした施設では脳トレゲームをしたり、整体をしたり、さまざまなケアをしてくれます。また、私たちペットケアマネージャーを頼っていただいても結構ですし、シニア犬に強いドッグシッターのご紹介もできます。介護と上手に付き合っていくという意味でも、ぜひ飼い主さんが息抜きできる日を作ってください。

向後先生

留守番自体は仕方がない部分もあるので、一人で抱え込まないことが重要です。全てを抱え込んでしまうと飼い主さんが疲れてしまうので。たまには息抜きしていいんだよということをお伝えしたいですね。

ありがとうございました。最後に、わが子の老いや、シニア犬のケア・介護に向き合う飼い主さんへのメッセージをお願いします。

笑顔でうつる女性獣医師とペットケアマネジャー

向後先生

飼い主さんが愛犬の老いについて考えたくないという気持ちはよくわかります。ただ犬は、人より確実に時が進むのは早いということは頭の片隅に置いておいてください。歳をとることを念頭に、若いうちからケアやお散歩をしっかりやれば、健康に長生きできると思いますし、そういうことを知らずに後悔される方も多いので。
また今は早期発見・早期治療を行うことで、治る病気も増えています。シニアになったら、健康診断など年2回くらいは獣医師に診てもらってください。上手に動物病院と付き合いながら、シニア犬になっても健康に、長生きしてもらいましょう。

平端先生

いつかは愛犬も飼い主さんの歳を追い越して、排泄を失敗するとか、足が立たなくなるとか、できないことが増えていきます。できないことを数えるのではなく、今できていることを一つでも多く見つけて、たくさん褒めてあげてほしいです。今までたくさんの癒しと笑顔をくれた愛犬に、心を込めてお世話してください。
ただ飼い主さんが疲れていたり、悲しい気持ちでいると、それは愛犬にも伝わりますから、わからないことや不安なことがあったら、一人で抱え込まず、ぜひペットケアマネージャーという存在を頼ってください。話をするだけでも気持ちがラクになりますし、色んな介護に関する知識もお伝えできると思うので。

こうご動物病院 こうご動物病院 東京都多摩市落合3丁目14-1

【獣医師×ペットケアマネージャー対談①】早めに備えたい「シニア犬のケアと介護」

【獣医師×ペットケアマネージャー対談②】プロに教わる「シニア犬の介護ハウツー」

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