いつまでも愛犬たちにかわいくいてもらうために、ペットオーナーが知っておきたい犬との付き合い方やしつけのポイントや注意点はどこにあるのか?愛犬の“かわいいの作り方”を、DOGSHIP LLC. 代表・須﨑大先生にご解説いただきます。
須﨑 大 先生
目次
しつけは、オーナーさんが抱くビジョンを犬に“教え育む”こと。
まず初めにお伝えしたいのは、僕は犬を「しつける」というより、「教育する」と考える方がしっくりくると思っているということ。犬が吠えたりいたずらをすると、オーナーさんは犬に問題があると考えがちですが、彼らの行動にはすべて理由があります。それを無視しては、根本的な解決にはなりません。オーナーさんが犬本来の行動心理を理解することが、いわゆる問題行動を解決するカギになります。
また、犬にもそれぞれ性格があります。それを考慮しない最大公約数的な矯正では、訓練の枠を出ることはできません。愛犬と共に自信をもって暮らせるように「教え育む」という意識が必要なのではないでしょうか。
重要なのは、オーナーさんが「愛犬にどんなふうになってほしいか」「愛犬とどんなふうに暮らしたいか」というビジョンをもつこと。そして、それを犬にしっかりと伝え、オーナーさんが目指す行動を犬に選んでもらうことが大切。
愛犬の行動を観察して褒める。それが、教育の第一歩。
犬に行動を選び取らせるためには、ぜひ愛犬を観察することからはじめてください。日々、身近で観察していると、その子の「行動」を具体的に褒めるポイントが見えてきます。「ちゃんと座れてえらいね」「1日中、お留守番できたね!」など犬の行動を評価して適切に褒めることで、目指す行動を引き出せるようになります。
言うまでもなく犬はどの子もかわいいですが、見た目や素養のかわいさは犬が親からもらったもの。でも、「行動」は経験から形づくられるものです。その形成に関われるのは、オーナーさんにしかできないことなんです。
犬を教育したいと考えるとき、多くの人がしつけに関する本やサイトを見ますね。そして、そこに書かれていることができないと「うちの子はダメだ」「この本は間違っている」と考えがちです。でも、そこに載っているのは一般的な方法論でしかありません。まずは、目の前にいる愛犬のことをよく観察し、知ろうとすることが何より大切です。
問題に思える行動にも、犬としての理由がある。
愛犬を観察して褒めることに加えて、犬がなぜそんな行動をするのか。その意味を知れば、「犬に問題がある」という考え方は払拭されるでしょう。いくつかの行動に分けてお話しします。
【トイレ】
犬にとって排泄は仲間とのコミュニケーション手段で、排泄後に周囲を蹴るのは臭いを目立たせるためです。そのため家で粗相をしたとき、オーナーさんが「あーっ!」と大きく反応すると、“目立たせる”という犬の目的に加担することになります。そうすると、“飼い主が目指す行動”はなかなかとってくれなくなりますよね。
【食事】
ご飯をガツガツ食べる愛犬を見て「うちの子はマナーが悪い」と言うオーナーさんは少なくありません。でも、犬は元々狩猟動物。出されたときに貪るように食べることは、野生動物として当たり前の習性なんです。
逆にご飯が出しっぱなしのご家庭ほど、「うちの子、少食なんですよね…」とおっしゃる。これは、常にご飯を用意してくれる飼い主さんに甘えたい心情が垣間見えます。いつでも食べられるという状況は、かえって犬の代謝を下げ肥満を招きかねません。
【散歩】
犬の散歩で困っている方は、散歩の概念をもう一度整理してみてはどうでしょうか。飼い主さんが、散歩は「犬のため」だと考えていると、犬も「自分のため」だと思って、行きたいところへグングン引っ張っていくようになります。しかし、本来群れでの移動が大好きな犬にとって、リーダーであるオーナーさんが望むところへ着いて行くことが、この上ないよろこび。ご自身の散歩に愛犬を連れて行くイメージで歩くことで、いつもの散歩が変容することもあります。
飼い主さんにとっては問題に映る行動も、犬からすればどれも習性に基づいていて、言い分がある。だから、問題と思える行動があったときも、本当に犬が悪いのか?感情的に叱っていないか?一度自問してみてください。叱る場合もただ「ダメ」「いけない」だけでなく、何が正解なのかも教えてあげてください。きっと、反省して学習してくれるはずです。
飼う前に知ってほしい!歴史に裏付けられた犬種ごとの特性。
ここまでは犬全体のお話ししましたが、実は犬種によって特性や傾向が大きく異なります。できれば飼う前にそれらを知っておくと、お互いにとって良い関係を築きやすいでしょう。いくつかの人気犬種について紹介します。
【トイプードル】
プードルは猟の回収犬として用いられていたため、活発で洞察力も優れています。愛玩犬として交配されたトイプードルにもその血は受け継がれていて、見た目のかわいさだけに惹かれて飼いはじめると、その活発さや王様的な気質に驚くのではないでしょうか。
【チワワ】
自分より小さな犬を見たことがない犬種なので、必然的に気持ちが強くなりやすいのがチワワです(笑)。また、その小ささゆえに叱られても、抱きかかえられることで、その行動が強化されてしまい、勘違いをしやすいので注意してください。
【ダックスフンド】
アナグマやうさぎを追い詰める役割を担ってきた彼らは、あきらめない頑固さが特徴です。その良さを活かせば、飼い主さんに対してとても忠実な、いわゆる“忠犬”になる可能性を「持っている」と表現できます。
見た目のかわいさだけで犬種を選ぶと、特性とのギャップに悩むこともあります。例えば、留守が多い生活か、カフェに行くのが好きか、アウトドアが好きなのかなど、ご自身のライフスタイルと照らしあわせて選ぶと、飼いはじめてから「こんなはずじゃなかった…」ということも防げるのではないでしょうか。
おやつは“あるとうれしい”くらいが、犬もオーナーもハッピー。
ここまでお話ししてきたように、愛犬を教育して、“理想のわが子像”へ導くのはオーナーさんです。犬の魅力を引き上げるためには、オーナーさん自身も犬にとって魅力的であるべきでしょう。愛犬と接するなかで、「いい子だね」「よくできたね」という気持ちを伝えるときに、おやつをあげることもありますよね。でも、おやつを介さなくても言葉や笑顔で、その気持ちを伝えられればベターなのではないでしょうか。
愛犬にとってオーナーさんは、そばにいてくれるだけでうれしい存在。おやつをゼロにする必要はありませんが、頼らなくてもコミュニケーションが成立する関係が素敵ですね。とはいえ、犬もオーナーさんも、最初から完璧を目指さなくても大丈夫。お互いが未熟なところから徐々に成長していけばよいのではないでしょうか。
須﨑 大 先生からのメッセージ
オーナーさんが愛犬と積極的に関わり、観察し、理解を深めることで、「うちの子って超かわいい!」という気持ちが一層強まるのではないでしょうか。犬が元々もっているかわいさが種の魅力だとすると、それを愛情もって育てて花を咲かせるのはオーナーさんです。それぞれの犬の「個」を活かしつつ教え育むと、「なんとなくかわいい」の先にある具体的なかわいさが開花するはずです。そう考えると、愛犬との毎日がさらにワクワクしてきませんか。
以前は留守中に2匹が騒ぎ、近隣からのクレームに困り果てていました。当時は、私も留守番をさせるとき「ごめんね」と言っていたのですが、「留守番よろしく!」と伝えるようになって半年くらいで変化が見られました。今では、より強い愛と信頼で結ばれている!と感じます。