本企画「Vet’s Cats~獣医の猫の飼い方~」では、猫を飼っている獣医師に取材。実際に自宅でどのように飼われているのか、また動物のプロとしての視点で注意しているのかを伺います。
今回取材したのは、4匹の猫と暮らすおおたかの森動物病院院長の黒木慎介先生。記事の中では飼い方だけでなく、日常で簡単に実践できる観察ポイントもご紹介しています!
黒木 慎介先生
目次
ご縁で出会った4匹の猫たち
まずは、今一緒に暮らしている猫ちゃんたちを迎えることになった経緯について教えてください。
今いる猫で一番付き合いの長い猫が「はてな」。勤務医時代に看護師が保護していたのですが、もらい手がおらず私が引き取りました。性格は神経質な方ですね。
近所の人に「拾ったけど私では飼えなくて……。」と相談を受けて、引き取ったのが「なる」。抱っこが好きな甘えん坊ですが、半日私が家を空けると警戒してよそよそしくなることがあります(笑)
怪我をして病院に運ばれてきたのが「こなん」。腎臓破裂・脊髄損傷の手術をした後に、私の家で迎え入れました。今は元気になりましたが、怪我の後遺症で後ろ足が動かないのでお世話が大変。私にしてほしいことがあると、鳴いてアピールする賢い子です。
知り合いの花屋の店先に捨てられていたのが「波介」で、私が引き取ることになりました。おもちゃやレーザーポインターが大好きです。
どの子とも縁を感じますね。
そうですね、他で飼えなかった子がたまたまうちに来たという感じです。もともとは大学時代から飼っていた猫もいました。猫たちと一緒に14才の犬(ポメラニアン)も飼っています。
それぞれの猫に合わせた飼い方
爪とぎなど、ペットグッズはどういった基準で使用していますか?
実際試してみて猫たちが気に入ってくれたものを使用しています。例えば、このお椀型の爪とぎは大人気。爪とぎもしますし、中に入ってくつろいだりお昼寝したりしています。宅配で届いたダンボールの中でも遊ぶので、体が包まれる形が好きみたいです。以前は棒型の爪とぎも置いていましたが、今はこちらのお椀型ばっかりです。
また、首輪についても、本来であれば強い力がかかると外れるタイプのものを選んでいるのですが、「波介」だけはどうも嫌がってしまい、フワフワの首輪を付けています。
猫オーナーさんから「猫のケアは、どこまですればよいのか迷っています」という声が多くあるのですが、黒木先生は日常的にどのようなケアをしていますか?
猫が寄ってきたタイミングで、ブラッシングや耳掃除、爪切りをしています。耳垢のたまり具合には個体差があるので、耳掃除はほとんどやらない子もいますね。爪切りは月1回くらいのペース。嫌がったら放して、忘れた頃に少しずつカットを進めて、なるべく手短に終わらせるようにしています。
シャンプーはどのくらいの頻度でされていますか。
シャンプーは、汚れがひどい時にするくらいで、ほとんどしていないですね。 猫は自分達でグルーミングをするので、体があまり汚れることもありません。それに濡れることを極端に嫌がる子もいるので、無理強いはしないようにしています。
食事の回数や与える時間は決めていますか?
メインの食事は朝晩2回、5時と17時くらいに与えています。他に、いつでも食べられるように常時ドライフードを置いています。
食事は4匹それぞれ別のものを与えているのですか?
10才の「はてな」と、腎臓が片側しかない「こなん」に合わせて、食事はドライフードの腎臓食がメインで、たまに市販の缶詰を混ぜています。食事の中身は4匹みんな一緒ですが、「なる」は1回に多く食べると吐くことがあるので量を調整しています。
市販の缶詰はどのようなものを選んでいますか?
一般的な缶詰を買っています。療法食の缶詰も試しましたが食べませんでした。「はてな」と「こなん」も今のところ腎臓の数値に問題はないので、そこまで食事制限はしていません。食事も楽しんでもらいたいですからね。
ただ、年1回くらい病院で検査をしており、今後の検査の結果によって食事を変えていくかもしれません。肝臓の数値が悪くなったら肝臓をケアする食事にします。「はてな」は皮膚が弱いので皮膚ケアのために低アレルゲンの食事を検討しています。
黒木先生の飼い方のポイント
- 1. 耳掃除も爪切りも、猫が嫌がったら止める!
- 2. 目立つ汚れがなければシャンプーはせず、猫のグルーミングに任せる!
- 3. 年齢、健康状態に合わせたフードを選ぶ!
- 4. 食事も猫にとって楽しみ。たまには缶詰もプラス!
猫の体調変化に気づく方法
猫オーナーさんができる体調のチェック方法はありますか?
リラックスしているときに全身をしっかり触ることで「ちょっと丸くなったな」「元気だけど骨張ってきたな」など体つきの変化がわかります。健康な状態が指標になるので、たまに自宅でも体重を測っておくと猫の異変に早く気づくこともできます。
例えば、乳腺腫瘍では皮膚表面のしこりを小さいうちに発見できると、その後の治療の見通しが変わります。腫瘍が大きくなると転移している可能性があるため、早めに見つけてあげたい病気です。また、甲状腺の病気では、元気でも痩せてくる特徴があります。筋肉や脂肪のつき方をみておくと、ちょっとした変化にも気づきやすくなりますよ。
他に見ておくポイントはありますか?
飲水量、おしっこの量の変化も大切なポイント。正確な量は測れなくても、水を飲む頻度やトイレの砂の固まりのなどで判断できます。また、頻繁に目元を掻いたり頭を振ったりしていれば、猫がなにかしらの違和感を感じているサインです。
他にも、食べ方からもチェックができます。食事中に、片側だけ使って食べているなら口の中に異常があるかもしれません。また、口臭がきつくなる原因のひとつが歯周病です。舐められたときに唾液の臭いがきつくないかも定期的にチェックしておくといいと思います。
「いつもと違うな」と感じたタイミングで病院に連れていくのが良いのでしょうか?
そうですね。どの病気も早期発見・早期治療が何より大切です。具体的な変化や症状を飼い主さんに説明してもらえると、検査もしやすくなります。
自宅でできる健康チェックのポイント
- 1. 体にしこりはないか、スキンシップのように触ってみる!
- 2. 水を飲みに行く回数で飲水量を、猫砂の固まり具合で尿量をチェック!
- 3. 左右両側の口を使えているか観察!
- 4. 口臭がきつくなっていないか、あくびのタイミングで確認!
犬猫一緒に飼うときは相性を見極めて
ワンちゃんと猫ちゃんとの関係はどうですか?
うちの犬は、猫が小さい頃はお世話をしていて、一緒に寝たりしていました。猫が大きくなってからはお互い干渉せず、距離を保っている感じですかね。
一緒に飼う上で、なにか工夫をされていますか?
犬は目の前に食事があれば食べてしまうので、猫の置きエサは犬が届かないところに置いています。また、以前猫のトイレに入ってうんちを食べてしまったことがあったので、猫トイレには犬が入れないように柵を立てています。
犬と猫を一緒に飼う際に注意しておくポイントはありますか?
先住犬がいるところに後から猫を迎えたほうが良いと思います。猫は小さいうちに犬に慣れさせると馴染みやすいですから。ただ、相性が悪いとケンカをすることもあるので、できれば一度トライアルをして、お互いの相性を見た方がいいと思います。
犬と猫を一緒に飼う際のポイント
- 1. 猫の置きエサは犬が食べられない場所に配置!
- 2. 子猫のうちに犬に慣れさせることで、猫が犬と仲良くなりやすい!
- 3. 猫と犬の相性には個体差があるので、できれば事前にトライアル!