コロナ禍で在宅ワークが広がり、かわいい相棒である猫と「ずっと一緒にいられてうれしい!」と思っていたみなさん。理想の生活を送ることができていますか?新しいライフスタイルの中で、「楽しいけれど、悩ましいことも増えてきた……」という方も、実は多いのではないでしょうか。そこで今回は、動物行動学の先生が、在宅ワーク中のペットライフならではのお悩みに回答。気ままな猫と一緒に、おうち時間を楽しく過ごすためのアドバイスをご紹介します。
入交 眞巳先生
猫が膝の上に乗ってきて、重くて仕事に集中できません。回避する方法は?
おもちゃを渡すなどして、部屋に入れないこと。 猫に「仕事してるから今ダメだよ。待っててね」と言い聞かせて、ひとりで遊べるおもちゃを与えて、それでやめてくれればいいのですが、そうはいかないことも多いですよね。そういうときは部屋から出て行ってもらうしかありません。私も猫を飼っているのですが、仕事に集中したいときは部屋に入れないようにしています。最初は鳴いて騒いだり、物を落としたりして注意を引こうとしますが、だんだんと「この部屋のドアが閉まっているときは、遊んでくれないんだ」と猫が学習してくれます。
仕事中、構ってアピールや遊びの催促に、どう対処したらいい?
「仕事中は何をしてもダメなんだ」と猫が学習するまで、無視を。 猫としては家に飼い主がいれば、遊んでほしいもの。どんなに言葉で説明しても猫には飼い主が仕事中であることは伝わりません。だからこそ、心を鬼にして無視をするしかないんです。どんなに鳴いても物を落としても反応しない。「ダメだよ」「まだだよ」という言葉がけもNGです。とにかく反応しないことで、猫も「パソコンに向かっているときは、どうやら遊んでくれないらしい」と気づき、1~2日で騒がなくなります。かわいそうでも返事をしない、飼い主の我慢強さが大切です。
もっと愛猫と仲良くなりたい。良い方法はありますか?
猫も遊びや学びが大好き。トレーニングで素敵な関係性を築いて。 猫も犬同様色々なトレーニングができますし、猫にとってはそれが遊びでもあり、人との素敵な関係を結ぶツールになります。猫にいろいろな技を教えるのもフードやおやつを報酬として使います。また、一人で遊べるように「知育トイ」におやつを入れて与えてもOK。 報酬としておやつをあげる場合は全カロリーの2割までと覚えておきましょう。あげすぎには要注意。食べたおやつの分だけフードのカロリーを減らしましょう。バランスの良い栄養を取るためにも、あげすぎはNG。おやつをおもちゃに入れたり、報酬としてあげる際は1回分を小さく切って与えてください。おやつばかりにならないように、いつもの総合栄養食のフードをおやつ代わりにあげるのもOK。栄養バランスを考えた食事が大切なので、カロリーの計算をして調整してあげてくださいね。
イヤホンやPCのコードなど噛むのをやめさせたい……。
やめさせることよりも、隠す方法を考えてみて。 猫は細いものが大好きなので、コードなどを噛んでしまうことは多いですよね。でも、これはとても危険なこと。しかし、猫にとって細長いものが、そこにあればかんだり遊んだりしたくなります。この気持ちを止めることはできません。だからこそ、コード類は徹底して隠すしかありません。ハードプラスチックで囲ったり、絶対に入り込めない家具の裏側に隠したり、猫が届かないような工夫をしましょう。お留守のときやお休みのときなど、猫の行動を見ていられないときも安心できるように、しっかり隠すのが一番ですね。
マウスを動かすと捕まえにくるので、仕事に集中できません。
「やめて!」と騒ぐと逆効果。別室に行ってもらおう。 猫は遊び事が大好きです。大好きな飼い主が動かすマウスは魅力的なおもちゃ。マウスを猫が狙ってしまう、これはどうしようもないことです。「やめて!」と飼い主が反応すれば、猫は余計にうれしくなるもの。仕事に集中したいときは別室に行ってもらうのが一番。別室に頭を使っておやつをゲットする「知育トイ」など、時間つぶしのできるおもちゃを用意。また、おやつをあちこちに隠しておいて探させる「宝探しゲーム」などで遊ばせてもいいでしょう。ひとしきり一人遊びをすると、そのうち疲れて寝てくれるかもしれません。
コロナ禍に迎えた猫。出勤するようになったらケージに入れないとダメですか?
心配なら、ケージに入れるか、快適な留守番スペースの用意を。 在宅時には部屋でフリーにしているので、留守にするときどうすればいいか迷っているんですね。心配なら外出時はケージに入れても大丈夫。ケージ内にはトイレとベッドと水飲み場があればOK。また、中で一人遊びができるようにおやつを入れた知育トイを置いておきます。ケージの中に長い時間入れるのがかわいそうに感じるのであれば、猫が快適に過ごせる留守番スペースを部屋単位で作ったり、パーテーションや柵で囲ってあげるのもいいですね。 ポイントは、猫がストレスなく過ごせることと安全に危険なく過ごせること。飼い主目線で気を付けたいことは、人が触ってほしくないものは、その場所に置かないこと。留守中は、そのスペースで過ごすのがルールだと教えてあげ、猫にやさしい環境を用意してあげれば、決してかわいそうではありません。また、帰りがとても遅くなる日は食事や水のこと、トイレの汚れも心配になりますので、ペットシッターさんにお願いするという手もあります。
猫に仕事用のイスを占領され、床で仕事をしています。何とか取り戻せないでしょうか?
仕事イスを、猫にとって快適でない場所にしてしまおう。 猫様あるあるですね(笑)。スヤスヤと眠っているのを起こすのはかわいそうですし、無理やり退いてもらおうとすると抵抗されたりします。どうしても仕事用のイスに寝てほしくない場合は、人がイスに座っていないときはイスの上に人工芝などトゲトゲとした猫が嫌がるものを置いてみましょう。猫は自分が気持ちいいところにしか寄りつかないもの。人工芝などを置いたイスとは別の場所に、ふわふわの猫用座布団などを用意してあげれば自然とそっちに行くはずです。「この場所は絶対猫に取られたくない」と思ったら、人工芝を試してみましょう。
ごはん・遊び・おやつの時間を決めたところ、催促するようになって困っています。
「話しかけて分かってもらう」ことにチャレンジしてみては。 猫は自分の名前が理解できるので、ある程度の言葉は覚えられるはずです。「ごはんだよ」「遊ぼう」などの声がけを合図にしたり、簡単なルールを作ったりすれば、きっと理解してくれるはずです。理解できたら、ほめて、おやつをあげる。これを繰り返せば、子どもが物事を覚えるように次第に猫もルールを理解してくれますよ。例えば、ごはんの前に必ず「ごはんよ」と言ってからごはんの準備をするようにすると、「ごはんよ」の言葉とこちらの行動をみて学習していきます。
入交眞巳先生おすすめのおもちゃ
ひとり遊びおもちゃ おもちゃの中に猫の好物を隠しておくことで、おもちゃで楽しく遊びながらおやつを与えられます。頭を使う運動なので、ごはんの早食い軽減や運動不足の解消にもなります。
手作りおもちゃお菓子の空箱やペットボトルに穴をあけるだけで簡単に作れる手作りおもちゃ。中におやつやフードを入れておくと、食べ物欲しさに脚を突っ込んだり、転がしたりして遊んでくれます。
引越しや異動で住環境が変わった場合、猫のためにどんなことができますか?
入交 眞巳 先生
Answer
元々使っていたキャリーやトイレ、ベッドを新居に持っていき、設置してみて様子を見ましょう。どうしても落ち着かないようなら、猫フェロモンの製品などを使って「ここは僕のおうち」と分かってもらうのもいいですね。不安定な様子が見られるなら、ジルケーンという不安をとりのぞくサプリを使ってみる方法もあります。
爪とぎを使わず、壁やソファで爪をとぐのでボロボロです。もう12歳になる猫でも、やめさせることはできますか?
入交 眞巳 先生
Answer
やめさせようとして叱ると、隠れるようになってしまうので注意が必要です。猫にとって爪とぎは爪の管理。人間と同じように猫にも好みがあります。普段の爪とぎの様子を観察し、素材や硬さ、場所の好みを把握したうえで、気に入りそうな爪とぎを与えてみてはいかがでしょう。
猫も認知症になったりするのでしょうか?
入交 眞巳 先生
Answer
猫も人間と同じように認知症を発症することがあります。予防法は抗酸化成分が多く含まれるシニアフードやサプリメントを与えること。異変に気づいたら獣医さんに相談し、食事と運動療法で改善をめざしましょう。ストレスのない環境を整えてあげることや、頭と身体を使って遊ぶなどの努力でも猫は若返りますよ。
トイレの粗相やいたずらを叱っても意味がないというのは、本当ですか?
入交 眞巳 先生
Answer
トイレの粗相は、叱る前にまずトイレ環境の見直しを。トイレが気に入らないのかもしれません。猫は動き回ってから排せつするので、トイレは広くて清潔なものが一番。排せつの失敗を叱ってしまうと、人の前で排せつすることが怖くなったり、トイレに関連して叱られたことで、余計にトイレに対して不安な気持ちが強くになり、益々トイレで排せつしなくなります。 また猫が困った行動をしたら、まずは理由を考えてみましょう。何か理由があるはずです。そして、猫にフレンドリーな環境を作ることが大切で、猫が物を落としたりするのであれば、物は置かないように。食事中に食卓に猫が上るのであれば、食事中はケージに入れておくか、他の部屋に入れておくなど管理していきましょう。