「猫と車でお出かけ①準備編」と「②移動編」に続いて最終回は「③到着編」です。目的地に着いたあとや帰宅後の注意点を獣医師の門屋美知代先生が説明します。猫とのお出かけは到着した後も重要です。体調管理や安全確認を徹底することで、愛猫にストレスをかけないことにもつながるので是非チェックしてみてくださいね。飼い主さんが愛猫と無理なくステップアップするために、本企画は①準備編、②移動編、③帰宅編の3回にわけてお送りします。

門屋 美知代 先生
かどやアニマルホスピタル
目次
目的地に到着したあと、
猫をキャリーから出す際の注意点
目的地到着後、猫をキャリーから出すとき、何に気を付けたらいいですか?

猫はキャリーに入れたまま目的地に運び、まずは室内の安全確認してください。慣れない環境に不安を感じて逃走してしまう恐れがあるので、ドアや窓は閉めておきましょう。問題ない場合は、キャリーのふたと洗濯ネットのファスナーを開き、猫が自由に出られるようにして待つのがポイント。飼い主さんが無理に抱き上げて出すよりも、猫の判断に任せたほうが不安感はやわらぎます。
加えて、キャリーの近くに猫が気に入りそうな隠れる場所をつくりましょう。段ボールを置いたりカーテンの後ろに行かれるようにしたりしてみてくださいね。
いつまで経ってもキャリーから出てこないので心配になります……

慣れない場所でなかなか落ち着けないタイプやパニックを起こしやすいタイプの猫も少なからずいます。動物病院に相談して、酔い止め薬とは別に精神安定剤を処方してもらいましょう。服薬から30分~1時間後に作用するので、移動時間に合わせて出発前に飲ませます。いざというときのお守り代わりにもっておくと安心できると思いますよ。
また、動物病院では猫に安心感を与えるにおいのスプレーも処方できるので、目的地についたら猫が好む段ボールなどに吹きかけておいてもいいでしょう。出発前にキャリーやタオルなどに吹きかけておくと車酔い対策にもなります。
猫とのお出かけ時に起こる
エマージェンシーの対応
移動中に車内で粗相したときにはドアや窓を閉めて掃除を

猫はキャリーの中で吐いたり漏らしたりして汚れたときには、自分でなめてきれいにすることが多いのですが、衛生面を考えるといいことではありません。車内のドアや窓をしっかり閉めた状態で、体を拭いたり掃除をしてあげたほうがいいですね。洗濯ネットだけでも予備を持っていったほうが安心かしれません。
ただし、猫はきれい好きなので粗相したことにショックを受けて、お出かけがトラウマになってしまうケースも。出発の30分以上前に食事を済ませても嘔吐する場合は、次回のお出かけのときはごはんを少なめにしてみてください。移動のときはやや空腹くらいのほうが車酔いも防げます。
目的地に着いたときは、事故が起こりやすいタイミング

出発時や移動中には安全に気を配っていたとしても、目的地に到着すればほっとして気が緩みがちです。車内の窓が開いているのに猫をキャリーから出したり、目的地に猫を抱きかかえて向かったりしたときに逃走する事故が起きています。土地勘のない場所で行方不明になったら再会できないかもしれません。お出かけの練習が不十分な猫は、不安感で逃げ出したい気持ちでいっぱいなので、目的地の室内に入るまではキャリーから出さないようにしてください。
散歩中にハーネスが抜けて逃走する事故が多発している

日ごろから猫にハーネスとリードをつけて散歩を楽しむ飼い主さんもいらっしゃいますが、猫のしなやかな動きから、ハーネスが外れてしまう場合もあります。特に慣れない場所では不安を感じやすく、逃走のリスクが高まるため注意が必要です。愛猫の安全を守るため、外出時には安全対策をしっかりと行いましょう。
目的地での過ごし方は
猫に任せたほうが落ち着きやすい
目的地に到着後、緊張感で食事や排泄をしないこともあるが、嘔吐が続く場合は動物病院へ

到着して30分以上経ってから、猫が落ち着いている場所の近くに食事や水を置き、少し離れたところにトイレを置いておきます。最初は緊張しているので食事や排泄をしないかもしれません。猫が好み、なおかつ家族の声が聞こえる場所で翌日まで様子を見ましょう。
到着時から嘔吐が止まらない場合や翌日になっても食事や排泄をしない場合は、動物病院を受診してください。
帰宅後の体調チェックと
次回のお出かけへの備え
家に帰ったあとは猫の体調を忘れずに確認する

お出かけ先から帰るときには、「①準備編」と「②移動編」をもとに注意してください。自宅の室内に入るまでは猫をキャリーで運ぶのが鉄則です。帰宅したらまずは猫がお気に入りの場所へ自由に行かれるようにして様子を見ましょう。30分以上経って落ち着いたら体調を確認してくださいね。
[帰宅したら体調をチェックする]
- ・少量のごはんを与えて食欲の有無をチェック。時間を置いても食べず、翌日にも食欲がなければ動物病院を受診する
- ・口の中や爪の状態も含めて全身を見たり触ったりして、けがの有無を確認する
車酔いやすい子であれば、動物病院を受診したときは次回の酔い止め薬を受け取る

猫を連れて行くお出かけ先が動物病院であれば、次回の受診に備えてホームドクターに酔い止め薬や精神安定剤などの処方を頼みましょう。通院が必要な場合は、相談して3回分程度先に受け取っておいてもいいと思います。
最後に、門屋先生から
車でのお出かけに関するアドバイス
安全やストレス負荷をかけないこと第一優先にお出かけを楽しむ
動物病院へのお出かけに慣れているスタッフ猫のぽんちゃんは、①準備編、②移動編に続き、③到着・帰宅編でも落ち着いて撮影に協力してくれました。ホームドクターの門屋先生の体調チェックでも問題ありません。
今回の体験記事を通して、外出の練習の大切さが実感できるのではないでしょうか。安全に考慮した上で外出の練習をしつつ、病気や外出のストレスを強く感じてしまう猫の場合は無理せず、ペットシッターを検討などもしてみてください。楽しいお出かけはもちろん、災害時の避難にも備えておきましょう!
取材にご協力いただいた病院
東京都府中市府中町1丁目40-12
日本獣医皮膚科認定医。同学会理事。小学生3年生のときに出会った「動物のお医者さん」がきっかけで獣医師を目指す。北里大学獣医学部卒業後、動物病院で勤務を始めてから皮膚疾患の多さに気づき、皮膚科の診療をより深く学ぶために東京農工大学・大学院へ。2005年にかどやアニマルホスピタルを開院し、動物に合わせた皮膚診療に力を入れる。「飼い主さんが気軽に相談できる動物のお医者さんでありたい」と、親しみやすい雰囲気づくりも心がけている。