猫に多い構造的てんかんは、根本原因を治療すればてんかんの発作も収まります。特発性てんかんを発症した場合でも、抗てんかん薬を投与して発作をコントロールできれば寿命を全うできます。ただし、抗てんかん薬を多剤併用しても発作をコントロールできない難治性てんかん（薬剤耐性てんかん）の場合は、発作重積や群発発作を起こしやすい可能性があります。

構造型てんかん（脳腫瘍、脳血管障害）は7、8歳以降の高齢になってから現れるケースが多いです。その他、猫では猫コロナウイルスや猫白血病ウイルスなどウイルス感染による感染性脳炎が犬より多くみられます。特発性てんかんは、生後6ヵ月以上7歳以下でみられます。

苦しそうな愛猫の姿を目の当たりにすると何かしてあげたくなりますが、体を触らずに発作が収まるのを待つのがベストです。初めて発作が起きた時はとても冷静でいられないと思いますが、発作は1～2分で収まります。落ち着いて、スマートフォンで動画撮影することをおすすめします。これを獣医師に見せれば、大きな診断の助けになります。

動画を撮影できない時は、猫の様子をメモに取ってください。また発作が起きた時の状況や発作前後の様子、持続時間なども伝えてもらえると助かります。

低血糖、尿毒症、肝性脳症、中毒、低カルシウム血症など内臓の異常により、てんかん発作が起きることがあります。他には心臓が影響して起こる心原性失神なども挙げられます。

てんかんの診断で一番大事なのは、てんかん型分類です。まずは年齢、そしてどんな経過をたどっているかを問診します。そして身体検査や神経学的検査によって病気のタイプを調べます。実はいろいろな検査機器を使わなくても、個人情報と問診である程度の見立てができるんです。
その上で血液検査で内蔵に異常がないかを確認して、最終的には麻酔をかけてのMRI検査をします。

構造的てんかんの場合は、脳腫瘍などの根本原因を治療することで発作を抑えられます。特発性てんかんの場合は、抗てんかん薬を投与して発作をコントロールします。一部の大学病院では人間と同様に外科手術が導入されているものの、治療が確立しておらず、一般的ではありません。

投薬治療で大切なのは、発作が広がらないようにコントロールをすること。バーベキューの火起こしの場面を想像してみてください。炭の芯部がほんのり赤くなり、良い具合に火が熾っているのが正常な脳の状態です。一部から小さな炎が上がっているのが焦点性発作、炎が全体に広がった状態が全般発作です。そして炎が広がらないように投入する氷や水が、抗てんかん薬です。水を入れすぎて火が消えることは、脳の活動停止を意味します。脳の活動を維持できるよう、薬の量をコントロールすることが大切です。

特発性てんかんの治療開始目安は、3ヶ月に2回以上の発作とされていますが、最近では6ヶ月に2回以上の発作があってもスタートしたほうがいいという先生もおられます。発作の頻度は多くないものの発作重積がある場合、また脳に異常がある構造的てんかんは早期治療が望ましいですね。

猫のてんかんは予防ができない病気だからこそ、しっかりと発作をコントロールして病気と付き合っていくことが大切です。発作が起こったら冷静に動画やメモを取ることを心がけてください。