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猫の気持ちと体調 ~表情・しぐさ・行動で理解する~

猫の気持ちと体調 ~表情・しぐさ・行動で理解する~

 
木村 奈美
      

本企画「猫の気持ちと体調 ~表情・しぐさ・行動で理解する~」では、猫ともっと幸せに暮らすためのアドバイスを「むさし小金井キャットクリニック」の福本(木村)奈美先生にお伺いしました。困った行動への対策やうれしいしぐさの理由をもとに、仲良くなるためだけでなく健康管理にも役立てましょう。

プロフィール

福本(木村) 奈美 先生

むさし小金井キャットクリニック院長。日本獣医皮膚科学会、日本小動物歯科研究会、獣医動物行動学研究会所属。猫に配慮した接し方や空間づくりを行い、診察にも予約制を導入した猫専門病院。国際的な猫のチャリティ団体(International Cat Care)の獣医療部門であるISFM(International Society of Feline Medicine)が定めるキャットフレンドリークリニック(CFC)ゴールドレベルに認定されている。
むさし小金井キャットクリニック
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目次

猫の表情としぐさが気持ちを読み解くヒントになる

猫は飼い主さんにしか見せない表情やしぐさが多いので、何気ない日常生活の中に気持ちを読み取るヒントがたくさんあります。まずはパーツごとの感情表現を知っておきましょう。

Point顔と体のパーツに現れる気持ち

  • 平常心 : 自然にまっすぐ立っている
  • 恐怖 : 横に伏せる(イカ耳の状態)
  • 攻撃 : 後ろに反らせる

  • リラックス : 瞳孔が小さくなる
  • 興奮(恐怖、攻撃、好奇心) : 瞳孔が大きくなる

ひげ

  • リラックス : 自然に垂れている
  • 恐怖 : 後ろへ引く
  • 攻撃 : 前へ向ける
    ※ひげ袋(口周り)が平らに近づくほど恐怖や苦痛を感じている

しっぽ

  • うれしい : ピンと立ててゆらゆら振る
  • 恐怖 : 下げる、足の間に入れる

猫の困る行動は治療が必要な病気のサインと考えて

困る行動はストレスや病気のサインであることが多いので、まずは動物病院の受診をおすすめします。心配なことがあれば、猫の行動診療を行なっている獣医師に相談してくださいね。

パターン①:猫も人も困る行動

 

ウールサッキング

原因:布製品、毛糸やニットをしゃぶったり飲み込んだりする行動で、腸閉塞の原因になります。社会化不足などの要因があるほか脳神経の病気の可能性もあります。

対策:気を逸らしたりストレスを解消したりするために、一緒に遊ぶ時間を増やす、ひとり遊びのグッズを使う対策が有効です。フェロモン製剤や内服薬でのコントロールが必要になることもあります。

トイレの失敗

原因:若齢と高齢で理由が分かれます。若齢であれば尿石症や特発性膀胱炎などの泌尿器疾患のサインと考えます。高齢であれば慢性腎臓病による尿量の増加、関節炎によりトイレまで歩くのが億劫、トイレの縁をまたげない可能性を考えたほうがいいでしょう。

対策:動物病院で体調を確認し、トイレの形・場所・砂を変える、トイレを増やすことを試してみましょう。

過剰なグルーミング

原因:アトピー皮膚症候群などの皮膚病による痒みやお腹の中の痛み(膀胱炎や膵炎など)により過剰グルーミングが生じ、まれに飲み込んだ毛により腸閉塞を起こすことも。毛を飲み込んで腸閉塞を起こすことも少なくありません。

対策:動物病院の受診が第一です。まずは原因となる疾患を治療することが大切です。長毛猫ちゃんは毛球症の予防として全身の毛刈りをする場合もあります。

攻撃行動

原因:迎えたばかりであれば、持って生まれた気質と社会化不足が主な原因の場合が多いです。大人になってから突然であれば環境的・身体的・精神的な要因があるかもしれません。

対策:「人間は怖くない」と安心させることからスタートします。猫が好きなおやつをあげながら触ったり歯ブラシ(猫の舌に感触が似ている)でなでたりし、少しずつ距離を縮めてください。原因があればそれを除去・治療します。難しい場合は行動治療の専門家に相談することをお勧めします。

過剰発声

原因:「アオオオオー!」と大声で鳴く場合、若齢なら泌尿器疾患が多いです。高齢では認知機能不全、甲状腺機能亢進症、慢性腎臓病、高血圧症などのほか、関節炎の痛みによる不安も原因となります。飼い主さんの気を引くために鳴くこともあります。

対策:病気のサインのことが非常に多いので動物病院を受診してください。

多頭飼育のケンカ

原因:子猫同士の取っ組み合いは遊びの一環でケンカではありません。声を上げて毛をむしり合う、出血を伴うケガがみられるなどの場合は止める必要があります。

対策:猫同士が慣れるところからスタートです。難しい場合は、獣医師にご相談ください。

猫はポジティブな感情ほど行動で明確に表現する

猫が楽しそうな様子を見て「困ったなあ」と言いながらも、内心うれしいと思っている飼い主さんもいますよね。とはいえどうしてもやめてほしい行動には対処しましょう。

パターン②:猫は嬉しいが、人が困る行動

 

爪とぎ

理由:マーキング、爪のお手入れ、身体のストレッチ、転位行動(不安や葛藤を抱えたときに自分を落ち着かせる行動)など。猫ちゃんにとって、大切で自然な行動です。

対策:猫が好む素材の爪とぎ器を何個も置いてください。麻、布、段ボールなど複数の素材を用意して比べてみるのも一案です。どうして爪とぎをしてほしくない場所には、ドアを閉めて行かせない、爪とぎ防止フィルムを貼る、といった対策を。隠せない柱であれば麻のロープを巻いたり爪とぎ器を貼り付けたりする方法もあります。

物を落とす

理由:高いところから物を落とすことが楽しいのではないかと思います。私も猫になったつもりで試してみたところ、物がボーンと落ちてその場からなくなると達成感があり、ゴロンゴロンと転がる動きが新鮮で楽しい気持ちになりました。梱包材をプチッとつぶすようなやみつき感があります。飼い主さんもぜひ猫の気持ちに共感してほしいですね。

対策:落としてほしくない物は片付ける。それだけです。猫の楽しみを優先させるのであれば、落とされても困らない物を置き、思う存分落としてもらいましょう。

無理に距離を縮めるのではなく、猫任せにする方がベター

飼い主さんが無理やりスキンシップを求めるケースがありますよね。気持ちは非常に分かります。それでも、距離を縮めるためには猫に任せたほうがよい関係を築きやすくなります。

パターン③:猫は困るが、人が喜ぶ行動

 

ギューッと抱きしめられる

理由:飼い主さんにとっては愛情表現でも、猫にとっては拘束された状態。無理強いを繰り返すと関係が悪化してしまいます。

無理やりひざに乗せられる

抱っこと同じで猫は自由な動きを制限されることは好みません。気長に構え、少しずつ膝へと誘導し学習させることで、いつか猫様が乗ってくださるかもしれません。

飼い主も嬉しい行動は、素直に受け止めて

パターン④:猫も人も喜ぶ行動

 

すりすり

理由:自分と相手のにおいを交換するのがフレンドリーな猫同士のあいさつです。自分と大好きな飼い主さんのにおいを混ぜて幸せなにおいに包まれたいのでしょう。「大好き!」という気持ちですね。鼻をくっつける「鼻つん」もあいさつの一種です。

へそ天

理由:おなかを出して寝ているのは、安心・安全・リラックスの表現です。

ふみふみ

理由:子猫が母猫に母乳分泌をうながす行動の名残で、うれしいときの感情表現やマーキングの目的があります。飼い主さんをふみふみするときは「大好き!」というアピールです。

まばたき

理由:目が合ったときにパチンとまばたきする行動は、「まあ悪くないよ」くらいの気持ち、と認識されています。私も落ち着いている患者さんの猫にまばたきされることがあります。

ごろごろ音

理由:しあわせなときに無意識に出るようです。辛い時にも同じ音を出すことも知られていますが、どこからどのように発しているのかはいまだ不明です。

猫ともっと仲良く幸せに!飼い主の愛情を伝える

飼い主さんのほうから猫に気持ちを伝える方法はありますか?

猫と同じ行動をしても通じるかわかりませんが、あいさつの「鼻つん」を真似して、指を猫の鼻にくっつけると喜ぶ猫が多い気がしますね。でも同じように猫をふみふみしても嫌がられるので、必ずしも真似がいいわけではないかもしれません。

私は、猫と目を合わせてお互いに「にっこり」した時に、“愛情が伝わっている”と信じています。 「新聞やパソコンに乗る」行動に対しては、「ダメだよ」と言って下ろしていたら乗らなくなったという話も聞きます。私はむしろ乗ってほしい側です。

猫と飼い主さんがよりハッピーになるためのアドバイスをお願いします。

猫ちゃんのきもちを理解しその生態を知ることで、猫との親密度が増し、それにより体調の変化を早期にキャッチしやすくなるでしょう。

それが、お互いに“よりハッピーに過ごせる”ということだと思っています。
心も身体も健康で長生きなのが一番です。
ぜひ自らも猫ちゃんとなって、一緒にたくさん遊んでください。

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