ブリティッシュショートヘアは触り心地の良い被毛と活発な狩猟本能が特徴的で、太古から人間と一緒に暮らしてきた歴史ある猫です。穏やかで愛情深い性格をしているため、飼いやすいのも魅力のひとつ。ブリティッシュショートヘアの歴史や特徴、かかりやすい病気などを詳しく解説するとともに、飼い方のポイントも紹介します。
目次
ブリティッシュショートヘアの歴史
ブリティッシュショートヘアは、イギリスで最も古い品種のひとつです。2世紀にローマがグレートブリテンを侵攻した際に持ち込まれた猫がルーツとされています。ローマではブリティッシュショートヘアの祖先が、農作物を食い荒らすネズミ退治のために飼育されてきました。それ以降イギリスの人々の生活に欠かせない、害獣駆除の役割を果たしてくれる猫として生活を送っていきます。
19世紀には優秀なハンターの素質を持つブリティッシュショートヘア同士の繁殖が始まり、品種として公認されます。そして長毛種のペルシャなどとも交配が始まり、ロングヘアのタイプが誕生しました。
ブリティッシュショートヘアの特徴
ブリティッシュショートヘアは愛らしい顔と、思わず抱っこしたくなるキュートな体が魅力で、世界的に人気の高い品種です。ここではブリティッシュショートヘアの体格や被毛、瞳・毛の色、血液型について解説します。
【体格】丸みのあるしっかりとしたボディ
丸顔で頬がぽっちゃりとした、親近感の湧く顔のブリティッシュショートヘア。鼻は短く幅が広いのが特徴で、通称ひげ袋と呼ばれるウィスカーパッドは丸く、笑っているように見えます。体格は骨太かつ筋肉質で重量感があり、四肢ともにがっしりとした体つきで引き締まっています。四肢や首が短めで、全体的にギュッと詰まったような印象です。
【被毛】ビロードのような手触りの短く固い毛
ブリティッシュショートヘアの被毛は、短く量も多いので弾力があります。厚みがあり、毛も体に対して立って生えているのでなめらかで艶が美しく、まるでビロードやベルベットのような触り心地です。また長毛(ブリティッシュロングヘア)の場合は、被毛はセミロングです。
【毛・瞳の色】バリエーション豊富なカラー
<目の色>
オレンジ、ゴールド、イエロー、ヘーゼル、グリーン、カッパー、オッドアイ、サファイヤブルー、ブルーなどがあります。両目の間隔は広く、大きな丸い形が特徴です。
<毛の色>
ブラック、チョコレート、シナモン、クリーム、レッド、ライラック、フォーン、フォーン、ブルー、ホワイトといった豊富なカラーとパターンがあります。代表的なのはブルーのソリッド。ブルーの毛は「ブリティッシュブルー」と呼ばれ、昔から人気が高い種類です。
【血液型】B型が多い珍しい品種
猫の血液型は基本的にA型とB型で、純血種や雑種に関係なくA型が多く、B型は少ないとされています。しかしブリティッシュショートヘアは猫の中でも珍しく、B型の方が多い猫種です。血液型がB型でも困ることはありませんが、万が一ケガや病気で輸血が必要になった時にドナーがすぐに探せるよう、事前に血液型の検査をしておくと良いでしょう。
また猫は異なる血液型に対する抗体を持っているため、自宅で繁殖させる際にも父母の血液型は同じでなければなりません。母猫と子猫の血液型が異なる場合、新生児溶血現象によって子猫が死んでしまいます。
ブリティッシュショートヘアの性格
ブリティッシュショートヘアは穏やかで愛情深い猫です。子猫の時は甘えん坊ですが、自立心が高いため成長していくにつれ触れ合いが減る傾向にあります。
しかし、そんな気難しい性格も愛される理由のひとつ。イギリスの偉人であり気難し屋としても知られているチャーチル元首相になぞらえて、「猫界のウィンストン・チャーチル」とも呼ばれています。
ブリティッシュショートヘアのかかりやすい病気
続いてブリティッシュショートヘアの気を付けたい病気について紹介します。早期発見できるように各病気の特徴を知っておきましょう。
かかりやすい病気①肥大型心筋症
ブリティッシュショートヘアは、肥大型心筋症になるリスクがあります。遺伝性も疑われていますが、まだ原因となる遺伝子変異は確定していません。比較的若い年齢で発覚する傾向にあります。初期症状はほとんどなく、重度に進行すると呼吸や食欲に症状が現れます。また突然死を招く怖い病気でもあります。現在完治させる治療法はありませんが、早期発見ができれば悪化を防ぐことが可能です。
かかりやすい病気②血友病B
血友病Bは、血液が固まらずに出血が止まりにくくなる病気です。血液凝固因子に異常がある遺伝病で、人間も患うことがあります。
オスに多いという特徴を持つ珍しい病気で、早期発見をしても心筋の肥厚を止めることが難しい病気です。あくまでも血栓症や肺水腫などを食い止めるくらいしかできないのが現状です。この病気にかかると外傷を負った時に血が止まらないため、できるだけ外傷のリスクを避けるために室内飼育が推奨されます。
かかりやすい病気③トリコモナス感染症
1歳未満の猫は特にリスクが高く、もしも子猫が下痢を繰り返す場合は検査が必要です。
かかりやすい病気④猫伝染性腹膜炎
2012年のシドニー大学の調査では、この病気を発症した猫のうちでブリティッシュショートヘアの発病率が高いとされました。純血種、2歳未満、オスが罹患しやすいことも分かっています。
かかりやすい病気⑥尿石症
過去の研究でシュウ酸カルシウム結石を解析したところ、ブリティッシュショートヘアが尿石症に発症しやすいと判明しました。原因は日々の食事や水分量、体質といった多くの要因が考えられています。
シュウ酸カルシウム結石は食事療法では溶かすことができないので、治療には手術が必要になります。猫の体に負担を掛けないためにも、毎日きちんとお水を摂取させるための工夫が必要です。
かかりやすい病気⑦難産
他の品種に比べて難産のリスクが2.5倍高いとされています。関連性は明らかになっていませんが、ブリティッシュショートヘアの新生児は他の品種に比べて大きい傾向にあります。
ブリティッシュショートヘアを飼う上で気を付けたいポイント
最後に、ブリティッシュショートヘアを飼う上で気を付けたいポイントを紹介します。食事やブラッシングをする際のポイントを押さえてお世話することで、より長い期間健康的に過ごすことができます。
性格や体質、本能にストレスを与えない工夫を
狩猟能力に長けた性格のため、十分に動き回れるスペースを準備します。外の様子が見やすいよう、窓辺にスペースを設けたり、キャットタワーを設置したりするのもおすすめです。小鳥や野良猫を観察できるだけでも狩猟本能を刺激し、ストレス発散につなげられます。
またキャットタワーなどの遊具は、がっしりとした体を支えられる丈夫なものを設置します。基本的に子どもや他の動物とも仲良くできますが、人見知りをするので来客時用に身を隠せて安心できる静かな場所を作ってあげるのがおすすめです。
適切な運動と食事量で体重管理を
高タンパク質で高カロリーの食事を与えましょう。体重や生活スタイル、年齢などを考慮し、適切な量を与えます。ただしブリティッシュショートヘアは、他の品種と比べると肥満になりやすい傾向があるので与えすぎてはいけません。
また適度な運動を心がけるのも大切です。家のあちこちにご飯を置いて、探しながら食べさせると運動量が確保できるのでおすすめです。
毎日のこまめなケアを大切に
ブリティッシュショートヘアは皮膚が見えないほど被毛が密集しているので、こまめなブラッシングが必要です。1日に1度のブラッシングを欠かさないようにしましょう。長毛種のブリティッシュロングヘアは、1日2度のブラッシングとコーミングを行います。なお、お風呂の頻度は2週間に1度程度が理想です。
親しみやすい表情のブリティッシュショートヘアと楽しい日々を
ブリティッシュショートヘアは活発的な性格で、愛嬌のある顔立ちが特徴の猫です。バラエティーに富んだ被毛や目の色、ずっしりとした体型も魅力的。しかしかかりやすい病気もあるので定期的な健康診断を受けながら、食べ物やケアに気を付ける必要があります。ブリティッシュショートヘアの知識を身に付けて、一緒に楽しい生活を送りましょう。
服部 幸 先生