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ペルシャ│歴史・かかりやすい病気・生活で気を付けたい点【獣医師監修】

ペルシャ│歴史・かかりやすい病気・生活で気を付けたい点【獣医師監修】

 
服部 幸
      

「猫の王様」とも呼ばれ昔から貴族たちにも愛されてきた「ペルシャ」。おっとりした性格で美しい被毛を持ち、愛嬌のある顔が特徴ですが、短い鼻を持つ猫特有の病気には注意が必要です。今回はペルシャの歴史からかかりやすい病気、一緒に生活する際に気を付けたいことを紹介します。ペルシャを飼う際の参考にしてみてください。

目次

ペルシャの歴史

被毛の長いペルシャ

平らな顔立ちや豊かな被毛が魅力のペルシャ。まずはその起源や歴史を見ていきましょう。

最も古い猫種の1つ

ペルシャは紀元前の遺跡に記録が残っているほど、最も古いとされる猫種の1つです。ペルシャの起源については、現在のイラン(旧ペルシャ)やアフガニスタンの辺りに住んでいたという説や、トルコからヨーロッパに渡ったという説があります。

ラクダのキャラバンでヨーロッパへと渡ったペルシャは、当時の権力者や高貴な人々の愛玩動物として大切にされてきました。そして18世紀になると、ヨーロッパ各地の上流階級層の間で人気の猫種に。1871年には、英国のロンドンで開催された世界初のキャットショーに初めて出陳されました。

ペルシャのかかりやすい病気

診察を受けるペルシャ

ペルシャがかかりやすい病気は以下の通りです。なかには報告数が少ないものもありますが、どんな病気のリスクがあるのかをチェックしておきましょう。

短頭種気道症候群

ペルシャが短頭種気道症候群を患うのは、外鼻孔の狭窄が主な原因です。ペルシャの他、エキゾチックやスコティッシュフォールドなどの短頭種の猫に多く認められます。症状は、鼻汁排泄、呼吸困難、くしゃみ、運動不耐性など。重症になると呼吸困難を引き起こすこともあります。

■診断

外鼻孔狭窄の外貌、X線検査などで診断します。

■治療

外科手術で外鼻孔を拡大させます。
 

多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)

腎臓に複数の嚢胞が形成される遺伝性疾患です。この嚢胞は年齢とともに大きくなったり数が増えたりして正常な腎臓組織を圧迫します。最終的には腎機能不全に陥る病気です。

■診断

主に超音波検査で診断します。

■治療

遺伝性疾患のため根治は望めず、投薬でのコントロールもできません。基本的に残された腎臓の機能を保護するための治療や対症療法が主体です。

尿石症

結石の成分や発生場所によって病態はさまざまです。ペルシャではシュウ酸カルシウム結石の発生が多く見られます。

■診断

尿検査、超音波検査、X線検査などで診断します。

■治療

シュウ酸カルシウム結石は食事や投薬で溶解しないため、膀胱結石や尿道結石、尿管結石では外科手術による摘出が必要です。

眼瞼内反症

下まぶたが眼球の方へ反り返り、被毛が角膜をこすることで炎症や潰瘍などを引き起こす病気です。犬と比較して猫で発症するのはまれですが、他の品種に比べるとペルシャやエキゾチックに多く認められます。

■診断

眼球表面の診察やまぶたの内反を視認します。

■治療

下まぶたの位置をずらす内反矯正手術を行います。

角膜黒色壊死症

角膜実質に褐色の色素沈着を呈し、潰瘍化した角膜壊死病変を伴う黒色のプラークが形成される疾患です。猫に多く認められ、中でも短頭種に多く発生するとされています。5ヵ月~17歳までの年齢で認められますが、特に発症率が高いのが2~7歳の年齢層です。

■診断

特殊な角膜の病変を細隙灯顕微鏡(スリットランプ)検査で確認し、原疾患となる角膜への慢性刺激要因を精査します。

■治療

原疾患を取り除くことが何より重要で、外科的切除が必要な場合もあります。

流涙症

涙が過剰にこぼれ落ちる疾患で、常に涙目の状態が続きます。流涙症になると眼頭が茶色や黒に変色しがちです。眼の周囲が持続的に濡れることで皮膚に炎症を引き起こし、脱毛などの皮膚疾患の原因にもなります。

■診断

フルオレセイン試験紙で涙の動態を確認し原因を精査。加えて、鼻涙管閉塞の有無をカニューレの挿入や造影検査などで確認することもあります。

■治療

鼻涙管洗浄や再建手術などの治療をしたり、睫毛や眼瞼内反などの刺激原因があれば取り除いたりします。

鼻涙管閉塞

なんらかの原因により鼻涙管の通過障害が起きている状態で、猫ではまれに生じる疾患です。結膜炎により眼球癒着が生じ、涙点が閉塞されることも。治療が困難なケースもあります。

■診断

フルオレセイン滴下試験の他に、鼻涙管へ造影剤を流し込みX線検査やCT検査などを実施して開通性を確認します。

■治療

鼻涙管閉塞の原因を除去します。分泌による詰まりがあれば、生理食塩水を流すことで分泌物排出を試みます。

皮膚糸状菌症

真菌の一種である皮膚糸状菌が感染することで発症する病気で、ペルシャを中心とする長毛猫に多く認められます。脱毛斑や裂毛、軽度の鱗屑などがよく見られる症状です。人獣共通感染症で人に感染することもあり、「皮膚真菌症」や「白癬」とも呼ばれます。

■診断

皮膚糸状菌の検出、毛検査、皮膚掻爬検査、ウッド灯検査、真菌培養検査、PCR検査などで診断します。

■治療

局所であれば抗真菌薬の入ったローションや軟膏などを塗布で治ることもありますが、全身性の場合は内服薬での治療が必要です。猫の治療と同時に、人への感染や再発の予防のために、室内に残る感染毛を除去・消毒など生活環境の清浄化が必要です。

 

ペルシャとの生活で気を付ける点

目を拭かれるペルシャ

ペルシャを飼育するにあたり、日常生活でいくつか注意したい点があります。愛猫の健康を保つために確認しておきましょう。

こまめなグルーミングは必須

ペルシャは、飼い主による定期的なグルーミングが欠かせない品種です。口吻部が短く、被毛を自分でグルーミングできないからです。被毛が長くてボリュームもあり毛玉ができやすいため、1日1回のブラッシングとコーミングをするのが理想です。

目の周りを清潔に

<主な毛色>
口吻部が短く目の周りの毛に「涙やけ」が出やすいので、定期的にお手入れをしましょう。涙をスムーズに排水できないと流涙症になりやすいため、コットンなどで目の周りを拭き、常に清潔に保つことが大切です。

熱中症には要注意

鼻が短い上にダブルコートの長い被毛を持つペルシャは、暑さがとても苦手です。暑さ対策を怠ると、体調を崩してしまうこともあります。特に夏場は熱中症対策に注意しましょう。

ペルシャを飼うのに向いている人

    

ブラッシングをされるペルシャ

自分でグルーミングができないペルシャには、被毛の美しさと健康を保つためにこまめなケアが欠かせません。毎日グルーミングをする時間が取れる人が望ましいでしょう。涙やけのケアもこまめに行う必要があります。

ペルシャの特徴を知って家族の一員に迎え入れよう

    

気持ちよさそうにブラッシングされるペルシャ

鼻ぺちゃで愛らしい顔と美しい被毛を持ち、穏やかな性格のペルシャ。鼻が短いことが要因で特定の病気にかかりやすい面もあります。ペルシャの日常のケアやかかりやすい病気についての知識を深めた上で、家族の一員として迎え入れましょう。

監修者プロフィール

服部 幸 先生

東京猫医療センター(東京都江東区)院長。JSFM(ねこ医学会)CFC理事。 北里大獣医学部卒。 猫ちゃんと飼い主様がともに幸せになることを目標に、病気の治療だけでなく日頃のケア、飼い方のアドバイスなど、 幅広く猫ちゃんと飼い主様のよりよい関係作りの活動を行っている。
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