腫れや痛みを伴い、猫のQOL(生活の質)を低下させかねない関節炎。原因の多くは加齢によるものです。運動や食事である程度は予防できますが、関節炎だと思われる症状に気づいたら早めに対処することが大切です。本記事では関節炎の原因を押さえるとともに、見逃したくない症状、治療法や予防法についても解説します。
目次
猫の関節炎とはどんな病気?
まず、猫の関節炎とは何かについて解説します。愛猫の様子を観察して、当てはまる症状がないかチェックしてみましょう。
関節組織に炎症が起きている状態
関節炎とは、猫の関節内に炎症が生じている状態のことです。腫れ・痛みを伴い、歩行に困難をきたす場合も。四足歩行の猫は、後肢だけではなく前肢の肘や肩、手首(手根)にも関節炎が起きます。
猫の関節炎でよく見られる症状
以下の症状が現れている場合は、関節炎の可能性を考えましょう。
・毛繕いをしなくなり(または回数が減り)、毛がボサボサになっている
・爪とぎをしない
・体に触れるのを嫌がる
・興奮して怒りだす
・ジャンプや家具の上に飛び移るなどの行動をしない
・立ったり歩いたりといった動作がぎこちない
・動いた時にポキッと関節が鳴る
・トイレがスムーズにできない
・あまり動かず寝ていることが多い
上記の中には、加齢とともに出てくる症状もあります。また、猫は自らの痛みを飼い主に訴えずに隠す動物と言われているので、「構ってほしくない」という気持ちから飼い主と距離を取ろうとすることも。そのため飼い主が猫の異変に気づけず、病気の病状が進行してしまうケースも珍しくありません。猫の行動を意識的に観察して、症状にいち早く気づいてあげることが大切です。
猫の関節炎の原因
次に関節炎の原因について見ていきましょう。猫に関節炎が生じる原因は、加齢や肥満の他、病気によるもの、ケガなど多岐に渡ります。
①加齢
関節炎の原因の多くは加齢です。加齢によって関節に負担が蓄積し、自己修復が不可能に。そこにさらなる負担がかかって関節が摩耗・変形すると、痛みが生じます。若い猫が発症するケースもありますが、加齢によって軟骨がすり減っている高齢猫の方が、関節炎になりやすいでしょう。
②肥満
体重が重いほど関節や軟骨に大きな負担がかかり、症状が重く出るケースがあります。室内で飼っている猫や運動量が少ない猫は、特に肥満になりやすい傾向があるため注意が必要です。
③先天性・遺伝性の異常や病気
生まれつきの病気や、遺伝的な関節の形成異常なども関節炎の原因のひとつです。例えば関節の形成異常があると、成長段階で関節炎や脱臼を引き起こす場合があります。
その他、品種によって発症しやすい病気が関節炎の原因になることも考えられます。
猫の品種 |
発症しやすい病気 |
---|---|
スコティッシュ・フォールド / マンチカン | ・関節症 ・骨軟骨異形成症 |
シャム |
・股関節異形成 |
アビシニアン / デボン・レックス |
・膝蓋骨脱臼 |
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④感染・ケガ
病原菌への感染やケガをきっかけに、関節に細菌が入り込んで炎症が起きるケースもあります。
関節炎の原因 |
発症の経緯 |
---|---|
細菌やウイルス |
|
ケガ | ケガや外側からの圧迫により、関節に異常が発生 |
猫の関節炎の検査・診断
関節炎は医師の診察や検査の結果を踏まえて、総合的に診断されます。
・飼い主へ普段の様子を問診
・関節を触診し、可動域や痛み、腫れ・変形など関節の状態を確認
・レントゲン検査・エコー検査・CT検査:関節内部の状態を確認
猫の関節炎の治療法
次に猫が関節炎になった場合の治療法について解説します。治療法としては、投薬や注射による痛みの抑制が基本です。
①投薬
猫の関節炎においては、非ステロイド系抗炎症薬を用いて痛みを緩和させる治療が基本です。関節部分に大きな損傷があると外科手術をする場合がありますが、痛みのもとである関節の変形は手術での対応が困難とされているためです。近年では猫でも安心して使用できる薬が開発され、治療に用いられています。
投薬はかかりつけの獣医の指示を必ず守ってください。また投薬が体の機能に影響する場合があるので、治療中は定期的に検診へ行きましょう。
②サプリメント
薬や注射などの痛みを和らげる対症療法に加えて、軟骨成分を補うようなサプリメントを併用する場合があります。
猫の関節炎を予防する方法3つ
最後に、日々の生活の中で取り組める関節炎の予防方法を紹介します。関節炎になった際の対策にもなるので覚えておきましょう。
①運動
運動は関節炎にかかわらず健康維持に必要な要素なので、適度に取り入れましょう。低めのキャットタワーやステップを使った上下運動、中をくぐって遊べるトンネル、キャットホイールを使った遊びなどがおすすめです。
ただし激しい運動は関節に負担をかけてしまう可能性があるため、猫の様子を見ながら運動させてください。
②体重管理
小さな体の猫にとっては、数百グラムの増量であっても関節への大きな負担となってしまいます。健康的な体重をキープできるよう、決して食べさせすぎず、食事内容や量を見直してください。食事を見直せば、病気の進行を遅らせることも期待できます。その他、ダイエットフードを取り入れる方法もあるので、一度かかりつけの獣医に相談してみてはいかがでしょうか。
③環境整備
フローリングのような滑りやすい床は関節に負担をかけてしまいます。カーペットやコルクを敷く、フローリングに塗るタイプの滑り止めを使うなどの環境整備をしましょう。
カーペットを敷いた際、爪が引っかかってケガをするのを防ぐため、定期的に爪のケアをするのも忘れずに。また足を高く上げずに済むよう、ウォーターボウル・フードボウルを床などの低い場所に設置したり、入り口が低い設計のトイレを選んだりすることも大切です。
猫のSOSを見逃さないで!関節炎の適切なケアで健やかな生活を
猫の関節炎は高齢猫に多い症状です。猫は、自分から痛みを訴えることは少ないため、普段から愛猫と触れ合い、意識的に様子を観察して早期発見につなげましょう。日常生活における食事面・環境面に気をつければ、関節炎の予防にもつながります。万が一、愛猫が関節炎と診断された際には、獣医と相談しながら愛猫に適した治療を見つけてくださいね。
古田 健介 先生