猫の腎臓病は、ガンに次いで多い死因と言われています。特に高齢の猫の死因では最も多く、不安に思っている飼い主さんもいることでしょう。この記事では、獣医師監修のもと腎臓病の原因や症状、治療法、日常生活でできる予防法を解説します。猫の腎臓病の早期発見や予防の参考にしてみてください。
目次
猫の腎臓病とはどんな病気?
何らかのきっかけで腎臓が正常に機能しなくなると、腎臓病になります。数時間から数日のうちに急激に腎臓の機能が低下する急性腎臓病と、蓄積したダメージによって腎臓の機能が低下が慢性腎臓病の2種類があります。急性腎臓病は素早い処置によって回復が見込めますが、慢性腎臓病は完治することがありません。
猫が腎臓病になる原因
急性腎臓病は、腎臓へ送られる血液量の低下や感染症のダメージ、尿道・尿管の詰まりなどが主な原因です。ユリ科の花や花粉・花瓶の水、人間の薬を口にして発症するケースもあり、保冷剤に使用されるエチレングリコールという成分でも発症すると言われています。
慢性腎臓病の詳しい原因は、まだ不明な点が多いものの、腎臓の発育不良や飲水量の少なさ、またはウイルス感染等が関わっているとされています。特に高齢の猫がかかりやすい病気ですが、若くても持病などによりリスクを抱える場合があります。また急性腎臓病を患い腎臓に急激なダメージを受けたことで、慢性腎臓病に至るケースも少なくありません。
猫が腎臓病になったときの症状は?
急性腎臓病と慢性腎臓病は症状に違いが見られます。
急性腎臓病を発症すると尿が作れないためおしっこの量が減少したり、出なくなったりすることがあります。嘔吐や痙攣などの緊急性のある症状が現れた際には、少しでも早く病院で診察を受けましょう。慢性腎臓病になると、反対におしっこや水を飲む量が増えたり、食欲不振、体重減少などの症状が現れます。
猫の腎臓病はどんな治療をする?
急性腎臓病と慢性腎臓病は症状に違いが見られます。
猫の急性腎臓病は早急に治療をすれば回復が期待できる病気です。一般的には入院して点滴をしながら脱水症状を防ぎ、病状に応じた薬剤を投与します。慢性腎臓病は、病気の進行を遅らせるために、点滴、薬剤の投与、療法食などの治療がメインです。
猫の腎臓病について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
Vet’s Advice! 猫の腎臓病【基本編】
猫の慢性腎臓病の療法食と薬の与え方
慢性腎臓病の利用は、腎臓に負担をかけない療法食が基本です。薬や療法食を嫌がる猫には、ウェットフードをかけたり混ぜたりしてみましょう。療法食にウェットフードを混ぜて温めてあげれば、香りが増して食いつきが良くなる猫もいます。ウェットフードは水分も摂れるので、水をあまり飲まない猫にもおすすめです。
ただし、フードと混ぜると効能が変化する薬もあるので、かかりつけの獣医師に相談しながら与えてください。
猫の腎臓病を予防する方法
最悪の場合、命に関わる病気でもある腎臓病。健康診断を受けることに加えて、日々の食事に気を配り、些細な変化に気付いてあげることが大切です。また、長期にわたるダメージの蓄積も腎臓病の原因となるため、若いうちから予防を始めましょう。
食事や水に気を付ける
日頃から食事や水に気を配ることが大切です。たんぱく質を過剰に摂取すると、窒素老廃物の量が体内に増え、腎臓に負担がかかります。高たんぱくなフードは避け、良質なたんぱく質を適量与えるように心がけましょう。
血液がサラサラになるオメガ3脂肪酸(DHA・EPA)を含むイワシ、マグロなどの食材もおすすめです。こまめに水を変えたり、飲みやすい容器を使用したりして、いつでも新鮮な水が飲めるような環境を整えてください。
定期的に健康診断を受ける
定期的に尿検査や血液検査などを受けていれば、腎臓病の早期発見につながります。腎臓病の症状が出た時点で、かなり進行しているケースも少なくありません。尿路結石に加えて、歯周病も腎臓病のリスクがあるため、早期発見して治療すれば腎臓病の予防になります。
日頃から健康状態をチェックする
日常的に猫の健康状態をよくチェックしましょう。急性腎臓病の症状やサインのところで解説したように、1日に飲む水の量やおしっこの量・回数、体重の減少などを観察していると、いち早く異常に気付くことができます。
適度な運動でストレスを解消させる
猫にとって、ストレスのない快適な暮らしができるように心がけましょう。遊ぶ時間を取り入れて、ストレスを解消するのもおすすめです。適度に体を動かすことで肥満防止にもなり、他の病気の予防にもつながります。
猫の腎臓病について理解し予防や治療に役立てよう
腎臓は一度機能を失うと回復が難しいため、速やかに処置をすることが重要です。定期的に健康診断を受けていれば早期発見につながります。また猫の異常のサインを見逃さないよう、日頃からよく観察することも大切。もし、腎臓病と診断された場合は、獣医師と相談して猫の負担を減らすベストな治療を見つけましょう。
布川 智範 先生