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猫の〝宿命の病〟と言われる「腎臓病」。
6歳を過ぎると急激にリスク上昇。
猫の死亡原因として上位の「泌尿器疾患」の中で、特に多いのが「腎臓病」。腎臓機能に何かしらの障害があり、腎臓機能が低下する病気です。特に、6歳以降では、腎臓病の罹患率が急激に上昇する傾向にあります。
疾患統計データ協力:アニコム ホールディングス アニコム家庭どうぶつ白書
2011.08 Vol.01 「数字で見ると一目瞭然。意外と知らない猫統計」より
あらためて腎臓の役割、特徴って?
腎臓は尿をつくるだけでなく、血液の産生を助けたり血圧を調整したりする働きを持っています。「沈黙の臓器」と形容されるように自覚症状がなかなか表れず、知らず知らずのうちに腎臓の機能低下が進んでしまい、結果としてさまざまな弊害が生じてしまうことが特徴です。
さらに困ったことに、猫は弱みを見せない傾向があります。「沈黙の臓器」と「弱みを見せない猫」の合わせ技ではさすがの飼い主でも気づいてあげることができず、獣医師に診てもらった時には病気が進行してしまっていることがあるのです。
「急性腎臓病」と「慢性腎臓病」、
それぞれの症状の違いとは?
腎臓病には「急性」と「慢性」があり、症状が異なります。下のチェック項目を参考にしながら、普段の様子が少しでも違ったらかかりつけの獣医師に早め相談してください。
◆急性腎臓病
感染症や誤食などによって、急激に腎臓機能が低下した状態です。救急治療によって回復する余地はありますが、急激なダメージを受けたことで慢性腎臓病に至るケースも少なくありません。
▼症状・サイン
◆慢性腎臓病
何かしらの基礎疾患によって腎臓へのダメージが蓄積し、腎臓機能の低下が3ヶ月以上続いている状態です。シニア期は特に、発症リスクが高まります。慢性腎臓病が進行し、生命維持に必要な腎機能5%未満の状態になると腎不全に至ります。
▼症状・サイン
慢性腎臓病の延長線上で
死因に直結する「腎性貧血」とは?
「腎性貧血」は慢性腎臓病の合併症のひとつで、死因に直結する病気です。腎臓機能の低下により、赤血球をつくるホルモン「エリスロポエチン」の分泌量が減少し、赤血球がつくられにくくなるために貧血が起こります。
慢性腎臓病の猫で、腎性貧血を発症する割合は32~65%(参考値)※ と、高い発症リスクがあります。これによって腎臓病のステージが急に進行してしまうケースもあります。腎臓機能が低下し始めるシニア期の猫は注意が必要です。
※「日本獣医腎泌尿器学会誌」参照
▼こんな症状・サインがあればすぐ病院へ
慢性腎臓病と診断された時点では、検査で腎性貧血になるかどうかはわかりません。しかし、重度の貧血は生命の危険に直結するため、慢性腎臓病と診断されたときから、継続的に病院で血液検査を行い、健康状態をチェックしておくことが大切です。
定期的な健康診断にはほど遠い、
通院もしていない猫の現状。
猫のWell-beingが重要視されるようになり、猫が病院に行く理由の調査で「予防」を目的としたものは15.5%まで増えてきました。とはいえ、通院する猫の割合は犬と比べたら3分の1程度。動物病院に来院する動物の猫の割合は、2割というのが現状です。国内飼育数推計(ペットフード協会調べ)によると、猫の飼育頭数が犬の飼育頭数を上回る年もあります。しかしながら、、多くの猫が病気になっても病院に行っていなかったり、もしかしたら飼い主も気づかないまま過ごしてしまっている可能性があります。
疾患統計データ協力:アニコム ホールディングス アニコム家庭どうぶつ白書
2011.08 Vol.01 「数字で見ると一目瞭然。意外と知らない猫統計」より
猫は病気になっても飼い主ですら気付くのが難しい“ポーカーフェイス”の動物です。病気になる前に健康診断をするのがベストではありますが、少なくとも「行ける病院」を早めにリサーチしておくことが猫のWell-beingを考えるうえでの最初の一歩になるのではないでしょうか。
キャットフレンドリーな病院で、
最初の一歩を踏み出してみるのがおすすめ。
猫の飼い主の中には、病院に連れていくためには「洗濯ネットの中に猫を入れなければいけない」や「猫にとって病院はとてもストレスだ」と思われている方もいらっしゃいます。
確かに嫌がる猫を病院に連れていくのはかわいそうですし、飼い主にとってもストレスかもしれません。
そんな中、猫の病院デビューの強力な味方になってくれるのがキャットフレンドリークリニック(CFC)。キャットフレンドリークリニックとは、国際猫医学会が認める国際基準にのっとった猫にやさしい医療を心がけている病院のこと。日本においては、その国際パートナーである「ねこ医学会」(https://www.jsfm-catfriendly.com/)がキャットフレンドリークリニックを増やすための活動を日々続けています。猫を病院に連れていくのが苦手な飼い主は、キャットフレンドリークリニックで最初の一歩を踏み出してみるのがいいかもしれません。
もちろん、国際猫医学会の認定を得た病院でなくても、猫のことを親身に考えてくれる病院はたくさんありますので、まずは病院に電話をして「キャットフレンドリーに扱っていただけますか?」と尋ねてみるのがおすすめです。その時、こころよい反応をしてくれる病院はきっとキャットフレンドリーな病院でしょう。
国際猫医学会が認定するキャットフレンドリークリニックの目印
ねこ医学会についてはこちら→https://www.jsfm-catfriendly.com/index.html
●どんな猫でも病院に行ける!諦めないで!
猫のWell-Beingを高めるために進化する医療
日進月歩で進む医療の進歩は、動物医薬品業界も例外ではありません。これまで治療に人用に開発された医薬品を犬や猫に処方するケースもありましたが、今後は「猫専用」といった薬が登場することも期待されています。
とはいえ、一番は病気を予防し健康でいること。
猫が持つ腎臓病のリスクやそのサインを知っておくことは、愛猫と過ごす時間を長くし、より充実させるための基本です。猫が幸せでいることは、飼い主にとっても幸せなことです。猫のWell-beingに関心を持っていただけたら幸いです。
監修/日本全薬工業株式会社