「大切な愛猫の体調不良にはすぐに気づいてあげたい!」 そんなオーナーの思いとは裏腹に、猫は不調を隠してしまいがちです。そこで本企画「にゃ・ジャッジ」では、見逃してほしくない愛猫の不調のサイン、受診のタイミングについて獣医師から直接アドバイス!
今回のテーマは「ケガ」!いよいよラストのPART③です。今回もオーナーの皆さんが「どうしよう!」と迷うケースについて、猫裁判長と、有識者の東山哲獣医師に「こう動くべし!」とジャッジしていただきます。
【注意】本企画のアドバイス(「◎様子を見てOK」、「×早めに病院へ」)は、あくまでも一般的な目安とお考えください。少しでもおかしいと感じたら、かかりつけの獣医師へ相談されることをおすすめします。
目次
東山 哲(ひがしやミャ さとし)先生
※Cat Friendly Clinicの略。猫にやさしい診療を心がける、一定の国際基準をクリアした動物病院
CASE5「家出した猫が、帰ってきた!」
この場合は、様子を見てはいけません!!
見た目に変化がなくても
検査のために病院へ!
解説
誤って屋外に出て行方不明になったり、家出した猫が戻ってきた場合。ケガもないし、様子に変化もなければ大丈夫だと思うかもしれませんが、病院で感染症やウイルスのチェックを受けてください。せっかく戻って来た猫に、その後元気で暮らしてもらうためにも検査は必要です。
ケガがないと思っても、いろいろなチェックを病院で受けて、健康状態をきちんと把握しましょう。
先生からのアドバイス
家出から猫が戻ってきたら、まずは病院へ連れてきてください。ケガがないかどうかを獣医師の目で調べて、寄生虫を駆除し、その後ウイルスのチェックをするという手順を踏むことをおすすめします。まずは、ケガのチェックと同時に、ノミやダニなどの外部寄生虫と、体内に入り込む回虫などの内部寄生虫を調べて駆除します。時間をおいて、ウイルスもチェックします。猫エイズや猫白血病のウイルスなどは、飛沫感染はしませんが、噛んだり噛まれたりした場合や、交尾などの濃厚接触をすると移る可能性があります。数日で陽性反応が出ることはないので、帰ってきてから数週間後に検査をすることになります。
CASE6「交通事故に遭ってしまった!」
この場合は、様子を見てはいけません!!
ケガなどがなくても必ず病院へ!
解説
交通事故に遭った場合は、重症になる可能性が極めて高いので、必ず病院へ連れてきてください。事故直後にはいつも通りにしていて症状が軽そうに見えても、時間が経つと重症度が増すこともあります。ケガがなくても内臓に損傷があることも考えられます。痛みがある場合は、抱っこしようとするとパニックになることもあるので、大きめの毛布にくるんでキャリーケースに入れて連れて行くといいでしょう。
交通事故に遭ったら、ケガがなくても、時間経過とともに重症になる可能性もあるので、すぐに病院へ。救急対応が可能かどうか必ず電話で確認してください!
先生からのアドバイス
猫は非常に柔軟性の高い動物なので、交通事故に遭ったとしても、骨折などのケガをしていないケースもありますが、見た目ではわからないダメージを負っていることもあります。たとえば、背骨が事故直後にズレて、その後もとに戻るケース。レントゲンを撮ると異常がないように見えるのですが、後ろ脚が麻痺していて、実は脊髄損傷だったという猫もいました。とりあえず、交通事故などの緊急性が高い場合は、救急の受け入れが可能かどうかを確認するためにも「交通事故に遭った猫を連れて行きたい」と病院へ電話をしてください。休診時間だったり、すでに重症の猫を救急処置していたりすると、すぐに対応できません。そんなときは他の病院を紹介してもらえるはずです。常に救命救急の態勢が整えられているわけではないので、先に確認しておくとタイムラグなく獣医師が受診できるはずです。
先生からのちょっとためににゃる話
猫のケガ予防のためにできること
ガラス製品は猫が手を出せない場所へ片づけておきましょう。壊す気がなくても、倒してしまい破片でケガをする危険性もあります。その他のものも、壊しそうなものは引き出しの中など、簡単には開けられない所へしまう方が安全です。それから、ケガには直接つながりませんが、ダウンジャケットをボロボロにひっかく猫もいるので、きちんとクローゼットにしまった方が無難です。フローリングなどの滑りやすい床材は、遊んでいる最中にブレーキがきかなくて壁にぶつかることもあります。心配であれば、滑り止め機能のあるコーティング剤などを使ってみてください。
PART①・②・③の3回にわたってお届けした「にゃ・ジャッジ ケガ編」はいかがだったでしょうか。猫はケガをしやすい動物ではありませんが、思わぬところで出血や骨折などをする場合もあります。また、外傷がなくても、何らかの衝撃が加わることで、体内が損傷する場合もあります。いずれにせよ、少しでも「あれ?」と思う場合には、決して慌てずに、猫の不安に寄り添うようにして病院へ連れて行ってあげましょう。
では、次回の「にゃ・ジャッジ」もぜひお楽しみに!