「大切な愛猫の体調不良にはすぐに気づいてあげたい!」 そんなオーナーの思いとは裏腹に、猫は不調を隠してしまいがちです。そこで本企画「にゃ・ジャッジ」では、見逃してほしくない愛猫の不調のサインや受診のタイミングを獣医師から直接アドバイス!
今回のテーマはケガ!ここからPART①、PART②、PART③の3回にわたって、オーナーの皆さんが「どうしよう!」と迷うケースについて、猫裁判長と、有識者の東山哲獣医師に「こう動くべし!」とジャッジしていただきます。
【注意】本企画のアドバイス(「◎様子を見てOK」、「×早めに病院へ」)は、あくまでも一般的な目安とお考えください。少しでもおかしいと感じたら、かかりつけの獣医師へ相談されることをおすすめします。
目次
東山 哲(ひがしやミャ さとし)先生
※Cat Friendly Clinicの略。猫にやさしい診療を心がける、一定の国際基準をクリアした動物病院
CASE1「爪切りで、出血させてしまった!」
応急処置をして
血が止まれば大丈夫!
解説
血が出てしまうと気が動転して病院へ駆け込む人もいますが、爪切りの出血が命に関わることはほぼありませんのでまずは安心してください。応急処置も家にあるもので簡単にできます。使うのは、小麦粉もしくは片栗粉です。血が出ている部分に少し付けてあげてください。10秒程度で止まるはずです。これは、小麦粉や片栗粉が血液中の水分を奪うからです。ただし、綿棒などを押し当てると、せっかく固まった血の塊が取れてしまうので注意してください。血が止まれば、それ以上、特別な処置をする必要はありません。
小麦粉や片栗粉で応急処置をして血が止まれば大丈夫。その後、特別に何かをする必要はありません。
治療中の猫や
出血が止まらない場合はすぐ病院へ
解説
出血がもしも止まらない場合は、すぐに病院へ連れてきてください。また、癌を患っていて抗がん剤の治療をしている、皮膚炎などのアレルギー症状があって免疫抑制剤を飲んでいるなど、免疫力が低下している猫も要注意です。傷口から雑菌が入る可能性があるので、少量の出血であっても獣医師に相談するようにしてください。
出血が止まらない、免疫力が低下しているなどの場合は、すぐに病院へ連れて行きましょう。
先生からのアドバイス
室内飼いの猫のケガで一番多いのが爪切りです。猫の爪の構造は人間とは異なります。人間は肉の上に爪がありますが、猫は肉の周りに爪があります。爪だけを切れば問題ないのですが、血管のある組織まで切ってしまうと血が出ます。ですから、爪を切るときには、血管が透けて見えるように、必ず明るい場所で行ってください。暗い場所で切ると失敗しがちです。止血剤も売られていますが、高額ですし、それほど利用しませんから用意する必要はないと思います。それに、小麦粉や片栗粉は身体に影響もありません。血が止まったかどうかは、付けた部分を揺らして粉を飛ばせばわかります。慌てて、瞬間接着剤などを使用しないでくださいね。
先生からのちょっとためににゃる話
猫を病院へ連れて行くとき・病院での注意事項
キャリーケースに入れて病院へ連れて行く場合、猫は知らないものを見ると怖がりますから、キャリーケースそのものも外が見えないように毛布などでくるんでおくといいでしょう。移動の際は、なるべく振動を与えず静かに動きましょう。病院に着いたら、知り合いに会ったとしても挨拶程度にして、犬などの他の動物がいれば、そちらの方へキャリーケースを向けないようにしてください。診察室に入ってからも気遣いが必要です。よく、キャリーケースの出入り口をご自身の方へ向けて待っている飼い主さんがいますが、ご自分の背後にガラス窓があったら、そこを知らない人が通るだけでも猫は緊張します。景色の変わらない壁側へ向けておいた方が安心です。
CASE2「毛玉を切ろうとしたら、間違って皮膚まで切った!?」
傷口が数ミリで
止血できれば大丈夫
解説
たとえ出血したとしても、皮膚の下に大きな血管は通っていないので、血はあまり大量には出ないはずです。傷口を圧迫して止血できれば大丈夫です。数ミリの傷で止血できれば、縫合しなくても数日でくっついて大きくズレることもないと思いますから、特別な応急処置をする必要もありません。それに、猫は毛があるので、ばんそうこうもくっつかないですから。
止血できれば特別な応急処置は必要ありません。縫合しなくても数日で傷口はふさがります。
出血が止まらない
出血の量が多い場合は病院へ
解説
出血が止まらない、出血量が多い場合は緊急性があります。よほど運が悪くピンポイントで太い血管が通っている所を切ったのかもしれません。その場合は、すぐに病院へ連れてきてください。大きな傷は縫合した方が早くきれいに治ります。
傷は早く縫えば早く治るので、出血が治まらなければ病院へ。
先生からのアドバイス
猫は皮膚が伸びるので、毛玉ができたときにはさみで切ろうとして引っ張ると、皮膚まで一緒に切ってしまうことがあるかもしれません。止血できれば大丈夫ですが、もしも、血が止まらなければ病院へ連れてきてください。じっとするのが難しい子であれば、鎮静剤や軽い麻酔を使って縫うことになると思います。いずれにせよ、傷口が小さければ命に関わることはありませんから、落ち着いて行動してください。
先生からのちょっとためににゃる話
キャットフレンドリーな病院
猫の場合は、病院に連れて行くこと自体が大変なので、敬遠するオーナーの気持ちも理解できます。しかし、数はまだ多くありませんが、今ではキャットフレンドリークリニックと呼ばれる、猫に配慮した病院もあります。そういう病院を予め見学させてもらってから、納得して連れて行くこともできると思います。当院では猫だけの診察時間「キャットアワー」を設けたり、診察室内や入院室には猫が安心するフェロモン製剤やハーブを使用して緊張をほぐすようにしています。猫はストレスがかかると血圧や心拍数が上がるだけでなく血液検査や尿検査にも影響が出ます。猫が健康なうちに最寄りのキャットフレンドリーな動物病院を見つけておいてください。
次回は「ケガ」編のPART②をお送りします。「高い所から降りるときに着地に失敗した!」「お尻をケガした?」といったトラブルをジャッジしてもらいます。ぜひお楽しみに!