「大切な愛猫の体調不良にはすぐに気づいてあげたい!」 そんなオーナーの思いとは裏腹に、猫は不調を隠してしまいがちです。そこで本企画「にゃ・ジャッジ」では、見逃してほしくない愛猫の不調のサイン、受診のタイミングについて獣医師から直接アドバイス! 今回のテーマは元気消失。前回のPART①に引き続き、PART②でも、オーナーの皆さんが「どうしよう!」と迷うケースについて、猫裁判長と、有識者の太刀川獣医師に「こう動くべし!」とジャッジしていただきます。
【注意】本企画のアドバイス(「◎様子を見てOK」、「×早めに病院へ」)は、あくまでも一般的な目安とお考えください。少しでもおかしいと感じたら、かかりつけの獣医師へ相談されることをおすすめします。
目次
太刀川 史郎 先生
CASE3「猫ハウスから出てこない」「物かげに隠れてじっとしてる」
雨の日だったら
様子を見ていても大丈夫
解説
雨が降っているような日は、様子を見ていても大丈夫です。天気が悪いと猫は活動量が減るので、食欲が落ちたり、じっとしていたりする子も珍しくありません。窓際から動かないようであれば、鳥が来るから見ていたい、他の猫が通るから見たいなど、そこにいる理由がある場合もあります。ですから、猫目線になって観察してみてください。もしも、夕方になっても猫ハウスや物かげから出てこないようであれば、夕方は活動量が増す時間帯なので、ちょっと心配です。そんなときにはかかりつけの獣医師に電話で様子を伝えて相談してみましょう。
天気が悪い日、何かを観察して夢中になっている場合などは、1日様子を見ていても大丈夫。
発熱、脚をひきずっているなどの
症状があればすぐに病院へ
解説
じっとしている場合は、発熱していることもあります。猫の体温は38度程度ですが、1度上がるだけでダメージが大きく、すぐに動けなくなってしまいます。発熱で一番多い原因は感染症、いわゆる猫風邪です。くしゃみや鼻水が出たり、目が赤くなったりしていないかを確認しましょう。症状が出ていない場合でも重病の可能性があるので、すぐに病院へ連れて行ってください。発熱以外でじっとしている場合は、体のどこかが痛い可能性もあります。家の中でも、高い所から落ちて骨が折れていることも。脚を引きずったりしていないか、歩き方がおかしくなったりしていないかも確認しましょう。
体温が高い場合や、見た目で症状がわかる場合は、すぐに病院へ!
先生からのアドバイス
猫がじっとしている場合は、いろいろな病気が疑われます。たとえば、猫風邪以外でも、腸の中のばい菌が血液内に入り込む菌血症や敗血症、腹膜炎でも発熱します。とにかく、体のどこかが炎症を起こすと発熱するので、猫風邪の症状がなくても、抱っこしてみて「あれ体が熱いかな?」と感じたら、すぐに病院で検査をしてもらうようにしてください。
先生からのちょっとためににゃる話
ベランダに出る子は、ゴキブリに要注意
家猫でも、ベランダには出すというオーナーも多いようです。その場合にぜひ気をつけてほしいのが「虫」です。特に、殺虫剤などで弱った虫を食べて具合が悪くなることがあります。たとえば、ゴキブリなどはベランダに来ることもありますし、網戸を開けた瞬間に家の中にも入り込みます。猫はちょいちょいと遊んで、遊び飽きたら食べてしまい中毒を起こすこともたまにあります。虫の出やすい季節には少し気をつけてみてくださいね。
CASE4「寝てばかりいる」「ぐったりしている」
寝てばかりいても
寝場所が変わっていれば大丈夫
解説
眠るのには体力が必要です。人間と同じで、健康でないと眠れません。「今日はずっと寝ているな」と思っても、寝場所を移動していれば大丈夫。体に痛みがあるわけではなく、雨の日の場合のようになんとなく活動量が落ちて睡眠時間がたまたま長い日である可能性が高いです。1日程度ならば様子を見てもいいでしょう。
睡眠時間が長くても、他の場所へ移動していれば様子を見ていても大丈夫。
ぐったりしている場合は
様子を見てはいけません
すぐに病院へ!
解説
寝ているようで寝ていない、ぐったりしている、反応がない、というのは生命の危険がある場合があります。たとえば、膀胱炎の場合は、初期症状としてトイレが近い、おしっこが少ないという兆候がありますが、放置してしまうと痛みで食欲も落ちて、おしっこも出なくなります。それがさらに悪化しているのが、ぐったりしている状態。こうなると急性腎不全も考えられますし心配です。この状態には1日でなってしまうこともあります。特に、男の子は、緊急性が高い傾向にあるので、すぐに病院へ連れて行ってください。
ぐったりしている、動かない、は危険なサイン。すぐに病院へ!
先生からのアドバイス
内部の痛みでも、猫は動かなくなります。たとえば不整脈は診察すればすぐにわかりますが、見た目ではわかりません。苦しさから興奮してしまい症状を悪化させることもあります。また、体温が下がって動かないケースもあります。たとえば、猫風邪以外の感染症の場合に、ばい菌が体の中に入ってショック状態になり低体温を引き起こすこともあるのです。発熱は体が頑張っているからこそ起こる状態ですが、体温が下がり始めるのは危険なサインです。すぐに病院へ連れて行ってください。
先生からのちょっとためににゃる話
猫日記をつけてみよう!
1年をかけて、この季節にはこんな症状が出る、という猫専用の日記をつけておくと、いろいろなことが分かります。換毛期であれば、お腹に毛が貯まり過ぎて吐く回数が増えたり、台風シーズンになると、低気圧や気温の変化でストレスを感じて吐いてしまったり、花火大会、お祭りなどの大きな音が鳴ったときに、調子が悪くなったりします。その時の天気や出来事と、どんな症状が出たのかを記録しておくと、その子がどういうことにストレスを感じやすいかなどの個性や傾向がつかめます。もしも、今回ご紹介したようなCASEに当てはまるような場合には、より注意して観察し、なるべく獣医師に相談するようにしてください。
PART①、PART②の2回にわたってお届けした「にゃ・ジャッジ 元気消失編」はいかがだったでしょうか。猫はルーティンを大事に生活する生き物です。少しでもルーティンが崩れれば、オーナーは敏感に「いつもと違う」と感じることもあるでしょう。その感覚を大切に、症状が悪化しないかを注意深く観察しながら、なるべく早めに獣医師と相談するようにしましょう。
では、「にゃ・ジャッジ」次回もぜひお楽しみに!