「大切な愛猫の体調不良にはすぐに気づいてあげたい!」 そんなオーナーの思いとは裏腹に、猫は不調を隠してしまいがちです。そこで本企画「にゃ・ジャッジ」では、見逃してほしくない愛猫の不調のサイン、受診のタイミングについて獣医師から直接アドバイス! 今回のテーマは元気消失。ここからPART①とPART②の2回にわたって、オーナーの皆さんが「どうしよう!」と迷うケースについて、猫裁判長と、有識者の太刀川獣医師に「こう動くべし!」とジャッジしていただきます。
【注意】本企画のアドバイス(「◎様子を見てOK」、「×早めに病院へ」)は、あくまでも一般的な目安とお考えください。少しでもおかしいと感じたら、かかりつけの獣医師へ相談されることをおすすめします。
目次
太刀川 史郎 先生
CASE1「あれ、いつもと違う?」
いつもと様子が違っても
元気で食欲があれば、大丈夫!
解説
「いつもトイレは1日1回か2回しか行かないのに、今日はもっと行っている」、「うんちの回数が多いし、ちょっとゆるいかも」、「水を飲む量が多い?」、「いつもより寝ていないような気がする……」など。普段の生活の中で、愛猫の「普通ではない状態」に気がつくことがあると思います。たとえば、気持ちが悪いとき。猫はじっとしているわけではなく、落ち着きなく、「にゃーにゃー」といつも以上に鳴いたりします。「いつもと様子が違う」ことは、猫の体調の変化を表していることが多いもの。大抵の場合は、まだ元気で食欲もあれば、1日程度は様子を見ても大丈夫です。ただ、できればこの段階で、かかりつけ師に電話相談して様子を伝えて様子を見ていいかどうかアドバイスをもらいましょう。持病がある子などは、すぐに受診をした方がいいこともあります。
いつもどおりに元気に遊んで食欲も変わらないようであれば、1日くらいは様子を見ても大丈夫。ただし、状況を早めに病院へ伝えてアドバイスをもらえるとより安心です。
「いつもと違う」状態が
1日以上続けば病院へ!
解説
「いつもと違う、普通じゃない」という状態は病気の始まりの場合もあります。1日様子を見ても元に戻らないようであれば、あらゆる病気の可能性を排除できません。たとえば、おしっこやうんちなどのトイレの問題でも、頻尿であれば膀胱炎の初期の場合もありますし、症状が進行していると腎臓病の疑いも出てきます。「いつもと違う」と気づいて、様子を見ていても改善する様子がないようであれば、病院で診察してもらった方がいいでしょう。
あらゆる病気の初期症状の可能性があるので、1日様子を見て元に戻らなければ早めに病院へ!
先生からのアドバイス
猫は、朝に起きて、フードを食べて、トイレに行って、お昼寝をしてというルーティンが決まっている動物です。そのルーティンが崩れたら「何かおかしい」と思ってください。どんな病気でも、急に悪化するわけではありません。必ず病気の一歩手前の段階があります。常に猫と接して観察していれば、病気のグレーゾーンである「未病」の段階で気づくことができるもの。だからこそオーナーが感じる「普通じゃない」「いつもと違う」という感覚は、病気の兆候であることが多いのです。愛猫を守るためには、この段階で獣医師に相談することが重要。「変だな」と思ったら、すぐに相談できるように、気軽に電話ができる動物病院やかかりつけの獣医師を予め見つけておくようにしてください。
先生からのちょっとためににゃる話
トイレ周りでチェックしてほしいこと
おしっこやうんちは、健康状態のバロメーターです。1匹だけと暮らしているオーナーであればその変化にもちろん気づくことができますが、多頭生活をしていると難しいことも。しかし、できれば普段から多頭飼いのオーナーも、このうんちはあの子のもの、この場所でおしっこをするのはあの子と、誰の排泄物か見分けられるようにしておきましょう。排泄物や排泄の仕方には個性が出ますから、愛猫のおしっこやうんちの普段の状態をなるべく把握しておくと、異変にも気がつきやすいと思います。
CASE2「フードが残ってる!」「お水もあまり飲んでない」
フードを替えたら食べたり
1日の総量に変化がない場合は
様子を見ても大丈夫
解説
食欲がない場合に最初に考えられるのは、フードに飽きているケースです。猫は嗜好性が強い動物なので、突然食べなくなる子もいます。その場合は、別のフードに替えてみて食べるようであれば大丈夫。フードは同じものを好むタイプの子で食欲が落ちた場合は、おやつでバリエーションをつけてあげるといいでしょう。それでも、食べないというときには、1日に食べる総量をチェックしてください。朝に残しても夕方には全部食べていることもあります。
新しいフードに替えてみたり、おやつを食べさせてみたり工夫を。基本的には、1日の総量が変わらなければ、様子を見ていて大丈夫。
「まったく食べない+
お水も飲まない」ときは
すぐに病院へ
解説
1日様子を見ても食べる量が戻らなければ、まずは胃腸系の病気が疑われます。胃腸炎、胃炎などです。その他にも、歯が痛い、頭が痛い、心臓が苦しいなど、食欲減退はあらゆる病気の可能性があります。たとえば、初期には痛みなどの自覚症状がほとんどない癌もそのひとつ。若い猫の場合でも「食欲が落ちてしまって何かおかしいな」と検査すると癌が見つかったというようなこともあるのです。もしも、まったく食べない、それどころか水さえ飲まない場合は、重大な病気も疑われますので、できるだけ早めに病院へ連れてきてください。
食べないし、水も飲まないときはすぐに病院へ。
先生からのアドバイス
食欲減退は、天候不順で気温が急に下がってストレスを感じている、もしくは、換毛期に毛玉がお腹の中に貯まり過ぎて気持ちが悪くなっているなどの原因も考えられます。また、フードを突然吐いたりするのはアレルギーの疑いも。食物不耐症という病気で、たまたま食べているフードが体に合わないというケースです。その場合は他のフードに替えれば大丈夫。病気というよりは体質に合わないというだけです。繊細な猫だからこそ、花火や祭囃子などの大きな音や、苦手な人に触られたことでストレスを感じることもあります。生活環境で、何かいつもと違ってストレスを感じるようなことがなかったかもチェックしてみましょう。
先生からのちょっとためににゃる話
飲んだお水の量、フードの量もチェック
水を飲んでいるかどうかは、減った分を測ればわかりますし、フードは計量して1日の摂取量を把握しておけば、いつもどおりに食べているかがわかります。毎日のことなので、面倒に思うかもしれませんが、愛猫に元気でいてもらうためにも、フードや飲水の量は把握しておくようにしましょう。
次回は「元気消失」編のPART②をお送りします。「物かげに隠れてじっとしている」「ぐったりしている」など、いろいろなトラブルをジャッジしてもらいます。ぜひお楽しみに!