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行き場のない犬猫たちに新しい家族を。動物たちの命をつなぐ保護活動のいま ②

行き場のない犬猫たちに新しい家族を。動物たちの命をつなぐ保護活動のいま ②

 
山本 りつこ
      

目次

保護活動に不可欠な動物医療。
広がる、獣医師たちの協力ネットワーク

診察を受ける保護犬

先ほど、「保護活動には獣医師でなくてはできない医療行為がたくさんある」というお話がありましたが、まさにそれが動物病院を開業された理由なのでしょうか?

ええ、その通りです。長い間、愛情や手をかけられず不衛生な環境で栄養も十分に与えられなかった犬や猫は体調も万全ではありません。レスキューした瞬間から、病気やケガの緊急処置が必要な場合も多く、ほぼすべての子になんらかの治療が必要なんです。

私が保護活動を始めた26年前は、保護動物に対する一般社会の認知理解は今とは大きく異なり、捕獲した野良猫の手術や治療に協力してくれる病院を見つけることも困難でした。そこで、医療と保護を自分たちの手で行うために開業することを決意しました。

スタッフに抱っこされる白い犬

現在では、殺処分ゼロをめざす取り組みも全国に広がり、行政とボランティア、獣医師会が連携して譲渡へつなぐ取り組みを進める自治体も出てきましたね。

そうですね。少しずつではありますが社会も変化をしてきていると感じています。
医療と保護活動は切り離せないものです。獣医師の存在なくして保護活動はできません。そして、どちらも動物たちの命を救いたいという、思いはひとつであるはず。人間も動物も、どんな境遇や環境であっても等しく最善の医療ケアが受けられる社会であるべきです。だからこそAHRでは、必要な子にはトップスキルを持つ認定医の獣医師たちによる医療ケアも行っていますし、大学病院での手術や検査も行います。今後も、すべての動物たちがきちんと最善の医療ケアを受け、幸せを掴んでいけるように活動を続けていきたいと考えています。

すべての動物が幸せに生きられるために、
ひとり一人ができること

譲渡会で保護犬についての説明を受ける参加者たち譲渡会で保護犬についての説明を受ける参加者たち

コロナ禍によるペットブームの影で飼育放棄の問題も報道されています。行き場のない犬や猫を増やさないために何が大切だと考えますか。

何よりも、自分が出会った大切な家族である動物を最後まで手放さず、そばにいてあげてほしいです。それだけで、殺処分される動物を減らせることは間違いありません。

私たちは、ようやく里親が見つかって幸せになれた動物たちが二度と悲しい思いをしないように、譲渡希望者のご家族には、面会時から様々なお願い事項をお話しさせていただき、時間をかけながら保護犬・猫の家族になるための心構えや飼い主の責任についての理解を深めています。

保護犬保護猫は飼うことが難しいと躊躇される方もいらっしゃるかも知れませんが、大変な部分も、個性として、また“愛おしい” と思えるものです。保護犬や保護猫たちは決して特別ではありません。ここにいる子たちは本当に素直で愛らしく、一生懸命生きていることを、多くの方に知ってもらいたいですね。

ケージからこっちを見るトイプードル

今後、取り組んでいきたいことはありますか。

私たちが今、積極的に取り組んでいるのが「人と動物のマッチング」 です。これまで譲渡ファミリーとしては難しいかもと譲渡をお断りされていたことの多い単身者の方でも、人慣れしていない多頭飼育崩壊出身の犬猫にとっては相性がいい場合も多く、また、シニアの方は、転勤や引越しなど生活環境の変化が少なく、家で過ごす時間が多くあるので、余生をのんびり静かに過ごしたい高齢犬にとってはメリットが大きいこともあるんです。
人間同士と同じく、保護動物と里親さんもお互い相性が合うことが何より大切で幸せなことだと思います。

黒柴

Message for Pet Owners
山本りつこさんからのメッセージ

人間社会と同様に、最近は保護動物たちも高齢化しています。動物愛護センターに持ち込まれる犬猫も、年老いたから、病気になったからという理由が多いのですが、やはり高齢の犬猫の譲渡は難しく、終生シェルターで過ごす子もいます。けれど、シニア期こそ、その動物たちの一番かわいい時期であることも今後お伝えしていきたいと思っています。アニマルハートレスキューでは隔週日曜日にオープン譲渡会(Instagramにて情報発信中)を開催していますので、ぜひ一度、譲渡会に足を運んで、実際に彼らに会っていただきたいですね。
どの子にも、ステキなチャンスを、と願っています。

(左)卒業した保護犬猫の写真(右)じゃれあう子犬

Column

ボランティアスタッフ 鈴木さんの声

小さい頃から動物が好きで、大学時代は馬術部に所属していたので、動物の世話は得意でした。うちで飼っていた柴犬「まめ」も保護犬だったので、飼い主も家もない「まめ」のような動物たちのために何かしたいと思い、保護犬セミナーに参加したのが、アニマルハートレスキューを知るきっかけです。仕事のない毎週日曜日にボランティアとして、シェルターにいる子たちのお世話をしています。レスキューした時は、ダニやノミだらけ、毛もボロボロに抜け落ちていて、見るからにかわいそうだった子たちが、愛情いっぱいに大切にお世話することで、見違えるように元気にかわいくなっていく姿を見ると、もっともっと何かしてあげたい気持ちになります。

保護犬猫の説明を参加者にするスタッフ

センター南動物病院

センター南動物病院/アニマルハートレスキュー

横浜市都筑区にあるアニマルハートレスキューのシェルター内では、隔週日曜日にオープン譲渡会を開催。併設の「センター南動物病院 アニマルセラピーハウス」は、専門獣医師による診療が受けられるほか、トリミングサロン、ドッグホテルやショップなど、動物の健やかで快適な暮らしをサポートする複合施設になっている。

<アニマルハートレスキュー支援の窓口>

みずほ銀行
港北ニュータウン支店
普通預金 1356222
特定非営利活動法人アニマルハートレスキュー

<保護活動全般への支援窓口>

アニマルドネーション
https://www.animaldonation.org/

<参考>

環境省統計資料(20年度殺処分数など)
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html

「殺処分ゼロ」をめざした行政と保護団体の取り組み
https://www.saga-s.co.jp/articles/-/680807

福岡市:愛護センター、獣医師会、ボランティアによる善意のリレー
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/607012/

神奈川:獣医師も協力し、8年連続殺処分ゼロ
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/v7d/prs/r0763536.html

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