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獣医師が教える!今さら聞けないフィラリア予防の「基本の“き”」

獣医師が教える!今さら聞けないフィラリア予防の「基本の“き”」

 
石森 斉子
モフ動物病院
242HugQ
      

愛猫と共に過ごす上で、気になることの一つが病気の予防や治療。特に「フィラリア症」という名前は、聞いたことのあるオーナーさんも多いのではないでしょうか。このフィラリア症、よく知られているのは犬への感染ですが、実は猫も感染リスクがあり、重症化の恐れもあるんです。今回はフィラリア症の基礎的な知識や予防方法などについて、モフ動物病院の石森斉子先生に伺いました。

プロフィール
石森 斉子 先生

石森 斉子 先生

2003年に日本獣医畜産大学(現:日本獣医生命科学大学)卒業後、東京都・神奈川県・千葉県の動物病院で経験を重ねる。専門学校の講師を経て、東西線「南砂町駅」近くにモフ動物病院を開業。「犬猫に優しい動物病院」をモットーに、犬猫の診療や健康管理、予防治療はもとより、飼い主への飼育アドバイスや勉強会・里親会など各種イベントにも力を入れている。また、人とペットと野生動物が共に暮らせる島を目指す、小笠原ネコプロジェクト(https://www.ogasawaraneko.jp/)を代表する保護猫活動にも積極的に取り組む。
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目次

意外と知られていない猫のフィラリア症、感染すると突然死の危険性も……

先生に抱っこされる黒猫

はじめに、フィラリア症とはどんな病気かを教えてください。

フィラリア症は別名「犬糸状虫症」とも呼ばれていて、蚊によって運ばれた糸状の寄生虫(フィラリア)が動物の体内に入り込んで感染する病気です。フィラリアの幼虫を取り込んだ蚊が、動物の血液を吸うタイミングに体内に入り込むことで感染します。動物の体内に入り込んだフィラリアは、幼虫から成虫へと成長。その後、肺や心臓などの血管に寄生することで、血液の流れが悪くなり心不全のような疾患を引き起こします。

猫のフィラリア症の流れ引用:ノミダニフィラリア.com「猫のフィラリア症について」https://n-d-f.com/filaria_cat/index.html(2022年4月26日)

「犬糸状虫症」と呼ぶように、フィラリア症は犬の感染症というイメージがあります。猫にも感染するリスクがあるのでしょうか?

犬よりも稀なケースですが「感染しない」とは言い切れないのが現状です。基本的に、猫は自身の免疫力で体内に侵入したフィラリアを退治する力があります。犬の病気と思われているのは、猫の体内にはフィラリアが寄生しにくく、発症頭数も少ないためです。
ところが、猫の免疫力が何かしらの原因で落ちている場合、体内で退治できなかったフィラリアが成長して猫の心臓や肺などに寄生し、突然死を引き起こす恐れがあります。

石森 斉子 先生

一般に、猫は犬より身体の小さな動物です。もし成虫が寄生してしまうと、犬より、さらに細い血管を遮断することにつながります。軽度の症状でも、だるさ・咳・食欲不振・喘息などの症状が見られ、最悪の場合は、心不全による突然死を引き起こすこともあります。
猫の場合、フィラリア症を発症すると、症状の重さを問わず病気が進行していることが大半です。そのため症状が出てからでは、治療が困難なケースも少なくなく…。猫と暮らす方にフィラリア予防をお願いしているのは、「発症してからでは、すでに手遅れだから」なんです。

Point猫のフィラリア症、知っておきたい3つのポイント

  • 1. 犬だけでなく、猫も感染するケースがある
  • 2. 心臓や肺に寄生し、心不全などの疾患を引き起こす
  • 3. 最悪の場合は、突然死を引き起こすことも

One Pointアドバイス

犬より身体の小さな猫は、フィラリア症を発症すると治療が困難というケースも少なくありません。だからこそ、予防が大切なんです!

フィラリア予防の開始は、生後6週間頃を目安に

犬よりは稀でも、猫のフィラリア症は発症すると特に怖い病気ですね。では、フィラリア予防には、どんな方法があるのでしょうか?

猫は室内飼いが多いので蚊に刺される確率が低いですが、蚊に100%刺されないというのは人間でも難しいですよね?そこで動物病院では、体内に入り込んだフィラリアの幼虫を駆除する予防薬を月に1度投与することをおすすめしています。予防薬は滴下剤で、猫の首のあたりに垂らすことで体内に入り込んだフィラリアの幼虫を駆除できます。
フィラリア症の予防薬には「合剤」と呼ばれる、フィラリアの幼虫以外にノミやマダニを駆除する効果も持ち合わせた製品があります。定期的に投薬することで寄生虫による病気を未然に防ぐことができるのです。

石森 斉子 先生と黒猫

フィラリア症の予防は何歳からはじめるのが良いのでしょうか?また子猫でも予防薬の服用は可能ですか?

予防薬によって差はありますが、6~8週齢頃から投与が可能です。基本的には蚊が発生しはじめた1ヶ月後から、蚊が見られなくなってから1ヶ月後まで投薬します。例えば、都内なら夏前の5月頃から予防をはじめて、11月~12月頃まで継続するイメージですね。地域や飼育環境によって予防期間が変わってくるので、具体的な時期についてはかかりつけの獣医師に相談するのが良いと思います。

引用:ノミダニフィラリア.com「猫のフィラリア症について」
https://n-d-f.com/filaria_cat/index.html
(2022年4月26日)

猫フィラリア症の投薬期間

継続的に続けるにあたって、費用はどのくらいかかるのでしょうか?

当病院では、合剤の予防薬の価格は月2,000円程度。半年間継続すると、12,000円ほどの費用になります。猫のフィラリアの抗体陽性率(検査で陽性と判定される割合)は、約10%と高い数字ではありませんが、感染すると重症化する危険性があることも事実です。愛猫を万一から守るためにも、フィラリア予防の正しい知識を持った上で、ぜひご検討いただけたらと思っています。

Point予防薬使用の3つのポイント

  • 1. 予防薬は、月に1度の投与がおすすめ
  • 2. 合剤タイプを投薬すると、ノミやマダニの対策も可能
  • 3. 投薬期間は、蚊が発生しはじめた1ヶ月後から、蚊が見られなくなって1ヶ月後まで

One Pointアドバイス

愛猫をフィラリアの危険から守るためにも、合剤タイプの予防薬をぜひご検討ください!

教えて先生!意外と聞けないフィラリア予防の「Q & A」

モフ動物病院 モフ動物病院 東京都江東区南砂3-13-5

東京都 江東区
石森 斉子
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